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公開日:
2019.10.16

法人英語研修の失敗事例|外資に経営権を譲渡したメーカーの英語改革

老舗メーカーB社における英語研修の失敗事例をご紹介する。2期に渡り、トータル約45クラス、受講者総数410名という大規模な英語研修だった。

The English Clubにとっては非常に規模の大きな案件であり、重要な案件であったが、残念ながらB社の望む結果を実現することができなかった。しかし、「失敗」といっても、B社に対しての失敗であり、受講者の皆さまに対してではない。大半の受講者の方々にはご満足頂けたと自負している。

何が悪かったのか。自戒の念を込めて、このコラムで詳細を検証したい。

1. B社の英語研修が失敗した理由

判決

B社の英語研修が失敗した理由は下記の2つだ。

  1. 英語研修の目的を十分に精査しなかった。
  2. 研修内容と効果測定方法がチグハグだった。

B社の各受講者の英語の必要度に応じて研修内容を細かく設定できなかったことが、失敗の最大の理由だ。それは、B社の英語研修の目的を詳細に精査しなかったことに起因する。加えて、研修効果の測定方法が、研修の目的とは整合していなかったため、B社のご担当者や受講者の皆さまを混乱させてしまった。

なぜ、このようなことが起こったのか。根底にある原因は、研修内容と講師を決定し、実際に研修を行ったThe English Clubが下請けだったことだ。決して元請けの会社を責めているわけではない。このような環境ではどうしても情報が円滑に流れにくくなる。

なお、これから英語研修を企画される法人の研修ご担当者に皆さまには、このような失敗を起こさないよう、「英語研修|法人担当者必読!成功に導く7つの秘訣と完全準備マニュアル」も是非参考にして頂きたい。

2. B社の英語研修の目的

目標

B社は、その経営権の大半を外資系企業に譲渡したばかりの企業だった。社長を含めた多くの経営陣が外国人になり、本社や工場でも多くの外国人が働くようになった。したがって、多くの社員が英語を必要とする状況になり、英語研修を大々的に行うことになったのだ。

多くの社員が英語を必要とする状況になったが、それぞれの英語力はもちろん、職種や役職などにより、英語の重要性や目標とする英語力、時間的制約などはそれぞれ異なる。通常は、これらを可能な限り詳細に検証した上で、詳細な目的ごとにクラスを分け、研修内容を決定することが求められる。しかし、それができなかった。

特に時間的制約は研修内容を決定する上で重要な指標となる。英語習得に時間的な余裕があるかないかの指標のことだ。The English Clubでは、時間的余裕がある場合は、基礎力強化から始めて英語脳を構築していくことを重視し、余裕がない場合は、仕事でよく使用される英語表現を覚えていくことをより重視する。

しかしB社の場合は、英語の必要性の高低と、英語学習レベルの高低の2つの軸のみでクラス分け、および研修内容を決定してしまった。そして、英語力が低めの方が多いという理由で、一律、基礎の強化を第一目標にしてしまったのだ。

受講生との会話などから、英語ができないことで、「今」仕事に支障が出ている方が少なくないことを研修開始後に気づかされる始末だった。結果、多くの受講者のニーズに応えることができず、B社の期待する効果を出せなかったのだ。

3. B社の英語研修の受講者

英語研修

B社の英語研修の受講者は、各部門の長が、英語が必要だと判断された方を推薦し、人事部が最終選考し決定された。本社、支社、工場全ての従業員が対象で、総受講者数約160名トータル約20クラスをThe English Clubが担当することになった。(第2期は総受講者数約200名トータル約25クラスを担当。)

受講者の構成は、ほぼ全て男性で年齢は20〜50代。新入社員〜部長クラス。約85%がエンジニアで、英語学習レベルはTOEIC(LR)換算で約85%が400点以下だった。そして、The English Clubは、英語の必要性が比較的高い方を担当することになった。

上記の2つの軸のみでクラス分けをした結果、同じクラスに次のような2人が机を並べるという状況だった。

  • 社長と直接コミュニケーションを取らなければならない部長で、すでに業務に支障が出ている時間的余裕のないTOEIC換算350点の方。
  • 現状はメールのやりとりや社内文書を読むためだけに英語が必要だが、将来的に有望な時間的余裕のある350点の新入社員。

これでは、それぞれの目的に合ったクラス運営などできるはずがなかったのだ。

4. B社の英語研修の内容

チェックリスト

大半の受講生がTOEIC換算400点未満だったので、単語・文法・発音の3つの基礎を強化すること(中学英語のおさらい)、及び音読を繰り返すことにより英語回路を構築することを最重要課題とし、補足として、仕事でよく使用される定型表現や言い回しを覚えるというThe English Clubの通常の研修を採用した。

もう一つの最重要課題は、英語学習を毎日継続して頂くことだった。毎日の宿題を出し、研修冒頭で単語テストと文法テスト、および音読テストを行った。少しでもモーティベーションを維持して頂く目的で、毎回点数を記録し、そのシートを配った。

繰り返しになるが、この研修内容は、ある程度時間がある方に適しているが、上記でご紹介した部長のような、英語ができなくて「今」業務に支障が出ている方向きの研修ではない。時間がない場合は、定型表現や言い回しを覚えることにより重きを置いた方が効率的なのだ。

実は、その部長から、担当した講師がお褒めの言葉を頂いたことがある。その部長には、より効率的な英語学習法があるにも関わらず、それを提供できていないにも関わらず・・・。英語を学習している人自身が、何をどのように学習すべきかを理解することは難しい。我々の責任を痛感したお褒めの言葉だった。

5. B社の英語研修の形態

ミーティング中の人達

講師がB社の各拠点に行き、週1回2時間の研修を全15回行なった。研修は業務時間内に行なわれ、費用は全て会社負担だった。

1クラス最大8名という指示だったので、頂戴した受講者リストからTOEICの点数のみでクラス分けを行なった。これが最大の過ちだった。本来であれば、現状の英語力と必要性の高低に加えて、主に下記の指標に基づき、各受講者の現状や目標をできるだけ細かく把握した上でクラス分けするのだが、それができなかった。

  • 必要な英語力
  • 緊急度
  • 新入社員・若手・中堅・ベテラン(役職)
  • 国際的指向性
  • モーティベーションの度合い

上記のうち、役職については、同じレベルの社員でクラスを構成する場合と、色々なレベルの社員で構成する場合がある。B社の場合は後者だったが、実は、受講者のモーティベーションの維持にプラスの効果があった。

役職が上の方にとってみれば、新入社員や若手社員の手前、自分がやらないわけにはいかないという意識が働く。一方で、新入社員や若手社員にとってみれば、役職が上の方が一生懸命に取り組んでいるのに、自分がやらないわけにはいかないという意識が働くからだ。

国際指向性の高い方、つまり、国際的なことに関して興味の度合いが高い方は、一般的に英語学習に対するモーティベーションが高い。そのような、英語学習に対するモーティベーションが高い方と低い方を同じクラスに混在させると、クラス全体のモーティベーションが上がりやすくなる。モーティベーションが低い方ばかりのクラスは上がりにくい。B社の場合は、図らずも前者だった。

6. B社の受講者に前向きになってもらうための施策

上昇するビジネスパーソン

B社の受講者はエンジニア(理系)の方が大半だった。一般的に理系の方は英語を苦手としている方が多い。B社の場合もそうだった。一方で、理系の方は物事を論理的考える方が多い。例えば、文法を学習するときは、理由(理屈)が重要になる。「こういうものなので、このまま覚えてください。」という説明では納得してもらえないことが多い。

6.1. 英語学習に前向きになってもらう仕掛け①|事前セミナー

セミナー

The English Clubでは、法人研修の場合は、実際に研修を始める前に英語の学習法についてのセミナーに参加してもらう。我々の研修内容と講師を信頼してもらうことが第一の目的だ。「この内容と講師であれば、この研修は効果があるかもしれない。」と思って頂かなければ、研修を通して英語学習に前向きになってもらうことは不可能だからだ。

上記の通り、B社は理系の方が多いということだったので、このセミナーの内容を若干修正し、理屈で攻めることにした。中学・高校6年間英語を勉強したのになぜ英語を話せないのか、英語を使えるようになるためにはどのような学習をしなければならないのか、などの学習方法について、第二言語習得研究と脳科学(神経科学)研究からの知見を織り交ぜながら、なるべく論理的に説明した。

6.2. 英語学習に前向きになってもらう仕掛け②|目標設定

目標に向かって進む人

脳科学者の澤口俊之氏によると、「明確な目標を持つと、人はそれだけ頑張れるもの。」「高すぎる目標を設定して「叶わない」と感じてしまうとモーティベーションは落ちてしまう。」という。

このような知見から、受講生の皆様には目標を設定して頂いたのだが、理系の方の多いB 社の場合は、目標を設定する理由についても、上記澤口氏の言葉を引用しながら説明し、納得してもらえるようにした。

英語研修開始前に、英語研修折返し地点と終了時、1年後、2年後の具体的な目標を設定してもらい、研修初日のクラス内で一人一人発表して頂いた。また、研修折返し地点と終了時に、目標達成度について自身で検証して頂いた。

6.3. 英語学習に前向きになってもらう仕掛け③|報酬を実感してもらう

喜ぶ男性

前出の澤口氏は、「人間はどんなときにやる気を出すのか。それは、報酬への期待を感じたときに尽きる。」「報酬を意識したとき、ドーパミンが分泌される。ドーパミンが分泌されると、モーティベーションも能力も最大限に発揮され、パフォーマンスをあげるには最適な状態となる」と指摘している。

報酬は色々な形がある。金銭や地位の他に、達成感や成功体験、人からの評価なども含まれる。この報酬の観点からは、B社では下記を実施した。

やさしめの教材:B社は理系の方が多く、英語が苦手な方が多いということだったので、やさしめの教材を選んだ。達成感・成功体験を少しづつ積み上げて頂くことが目的だ。B社の場合は、結果的に出席率も高く、講師や研修内容に関する受講生からのフィードバックもポジティブなものが多かったが、特に基礎から学べたことに対する評価が高かった。

毎回習熟度テストを実施:研修の最初に毎回テストを実施。テスト結果の推移を研修レポートとして毎回配布。達成感もしくは挫折感を学習の励みにしてもらう。B社の場合は、単語・文法・音読もしくはシャドーイングの3つのテストを実施した。また、B社の場合は、このテスト結果を気にしている方が多く、点数の記載間違いがあると鋭く指摘される方も少なくなかった。

講師からのフィードバック:本件の場合は、毎回実施するテスト結果や研修中のアクティビティに関するコメント、中間評価と最終評価のコメントなど、担当講師からのフィードバックの機会を多くするよう意識した。B社の場合は、講師の評価が非常に高かった。その一因として、グループ研修だったにも関わらず、このフィードバックの多さがあったと思われる。

7. B社の英語研修の効果

良い点

研修最終日に行なったアンケートを見ると、大部分の方がThe English Clubの研修を高く評価してくれ、好意的なコメントも数多くあった。「英語をこんなに継続して勉強したことがなかった。」などだ。そして、業務時間内の研修にも関わらず、出席率も非常に高かった。

悪い点

一方で、B社のThe English Clubの研修の評価はあまりよくはなかっただろう。実はB社の評価は直接聞いていない。しかし、下記の理由から、よくないことは容易に想像できる。

  1. 英語テスト(CASEC)の改善があまり見られない。
  2. 英語での業務に直接あまり役立っていない。

研修の効果測定にはCASECというテストが採用された。これはThe English Clubの意向ではない。研修開始前と開始後に、全ての受講者に受験して頂いた結果、目に見える効果は見られなかったのだ。中には飛躍的に点数が伸びた方もそれなりにいたが、変わらない方や、逆に下がった方もいたので、平均すると上昇率は微々たるものだった。

理由は簡単だ。中学英語からの基礎固めと英語回路の土台作り、そしてビジネスで使用する基礎的な定型表現を使えるようにすることを重視した研修だったからだ。これらの基礎的な英語力はCASECでは正確に測れない。

また、CASECは、インプット(読む・聞く)の能力のみを測るテストだ。その意味ではTOEIC(LR)に近い。このコラムをお読みの皆さまの会社には、TOEICの点数は高いが、話せないので仕事で全く使えていない方が多くいるだろう。CASECやTOEICの点数を上げるだけが目的の学習は、そのような方を増やすことになる。もしそのような研修を行なっていたなら、点数の上昇率を高めることは可能だったろう。しかし、それに何の意味があるのだろうか。たとえそのような研修を行なっていたとしても、B社が望む結果にはなっていなかっただろう。

この結果が受講者やB社を混乱させてしまった。研修の目的に合致しない効果測定方法を採用したため効果が出ないのは当たり前だ。しかし、B社は「かなりの費用をかけたにも関わらず、効果が出なかった。」と結論づける。受講者は「研修と講師を信じて頑張ったのに結果が出ない。」と感じ、モーティベーションが下がってしまう。

研修の目的と合致しない効果測定方法を採用することは、会社とその受講者、そして講師と研修担当企業の全てを混乱させてしまうのだ。

一方で、今業務に支障が出ている受講者の喫緊の課題に応えることができなかったのは我々の至らなかったところだ。各受講者の状況をより詳細に把握し、研修内容を決定していればこのようなことは起こらなかっただろう。

なお、The English Clubは失敗ばかりしているわけではない。むしろB社のような失敗は稀だ。企業研修の成功事例については、「法人英語研修の成功事例|グローバル上場企業の中枢部門は本質を重視!」を是非お読み頂きたい。

8. 英語研修の失敗事例|B社のまとめ

お辞儀する女性
  • B社の英語研修が失敗した理由は2つ。1つ目は、英語研修の目的を十分に精査しなかったこと。2つ目は、研修内容と効果測定方法がチグハグだったこと。
  • 英語の必要性の高低と、英語学習レベルの高低の2つの軸のみでクラス分け、および研修内容を決定してしまった。そして、英語力が低めの方が多いという理由で、一律、基礎の強化を第一目標にしてしまった。
  • この研修内容は、英語ができなくて「今」業務に支障が出ている方向きの研修ではない。時間がない受講生には、定型表現や言い回しを覚えることにより重きを置くべきだった。
  • 研修最終日に行なったアンケートでは、大部分の方がThe English Clubの研修を高く評価してくれた。英語を学習している人自身が、何をどのように学習すべきかを理解することは難しい。我々の責任を痛感した事例だった。
  • B社の評価はあまりよくはなかったことが予想された。今後はこのような失敗を2度と起こさないよう尽力したいと思う。
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執筆者プロフィール
小柳 恒一
  • 1999年ロンドン大学大学院ロンドン・ビジネス・スクールにてMBA取得。1997年TOEFL630点取得。2003年TOEIC990点取得。2004年米国公認会計士試験合格。2010年4月中小企業診断士登録。
  • 2000年よりリーマン・ブラザーズ等にて13年以上M&Aのアドバイザリー業務に携わる。
  • 2010年より中堅・中小企業を対象とした事業継承M&Aコンサルティング事業を開始。
  • 2013年よりThe English Clubの前身となるEnglish Tutors Network事業を開始。
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