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公開日:
2024.07.30
更新日:
2024.09.27

英語学習法の科学|インプット仮説と自動化モデルで英語習得!

第二言語(≒ 外国語:私たちにとっての英語)を効率的に習得する方法を研究している「第二言語習得研究」という研究分野があります。

この「第二言語習得研究」の世界では、「インプット仮説」と「自動化モデル」という2つの有名な理論があります。この2つの理論には、世界中の多くの言語学者や研究者が、何十年にも渡って研究してきた結果が凝縮されています。私たちが効率的に英語を話せるようになる方法もこの2つの理論で解明されています。

あなたは、この2つの理論と、巷(ちまた)に氾濫している自称 “英語のプロ” がブログで吹聴している “なんちゃらメソッド” のようなものと、どちらを信用しますか?

このコラムでは、英語初心者の方でも簡単に理解できるように、2つの理論のポイントをわかりやすく解説し、かつ、日々の英語学習に役立つ「最強」の理論と学習方法について説明します。

なお、このコラムは、白井恭弘著「外国語学習の科学」を参考にさせていただきました。

1. 英語学習法の科学|「インプット仮説」ってなに?

若葉マーク

「インプット仮説」とは、「インプット」(聞くこと・読むこと)だけで言語習得が可能だとする理論です。アメリカ南カリフォルニア大学の名誉教授であるスティーブン・クラシェンという言語学者が提唱しました。第二言語習得研究の世界で最も有名な理論の一つです。

1.1.「インプット仮説」の主張❶:「インプット」だけで言語習得は可能

「インプット仮説」は、母語(私たちにとっての日本語)であれ、第二言語(私たちにとっての英語)であれ、言語というのは、読んだり聞いたりする「インプット」だけで習得できるという理論です。つまり、「インプット」を理解することのみで言語は習得可能で、「アウトプット」(話すこと・書くこと)は必要ないと主張しています。

「アウトプットは必要ない」というところに疑問を持つ日本人は多いでしょう。このクラシェンの主張を裏付ける証拠の一つが、話し出すのが遅い子どもの事例です。

「アウトプット」が必要ない証拠となる「子ども」の事例

子供とことば

子ども通常、1歳過ぎくらいからことばを口から発するようになりますが、中にはことばを発するのが遅い子どももいます。そのような子どもの中で、ある時突然、単語も文法も完璧な長めの文章を話したという事例が少なくないそうです。

この事例は、話す練習を全くしていないにもかかわらず、話せるようになるということで、「インプット仮説」の「言語を習得するのにアウトプットは必要ない」という主張の証拠になると考えられます。

1.2.「インプット仮説」の主張❷:「i+1」のインプットが言語習得を促進

クラシェンは、「i+1」のレベルの英語のインプットを理解することにより、英語の能力が向上すると主張しています。「i」とは、英語学習者の現在の英語力であり、「+1」というのは、それよりも若干難易度が高いものという意味です。

別の研究者によると、「i+1」のレベルの英語とは、わからない単語が2〜3%程度含まれる英語としています。その程度の、比較的簡単に理解できる英語を多く読んだり聞いたりすることにより、効率的に言語習得がすすむということです。

1.3.「インプット仮説」の主張❸:「意識的な学習」は役に立たない

クラシェンは、学校の授業などで行なわれている意識的な「学習」は、言語習得にはあまり役に立たないと主張しています。そのような「学習」された知識は、発話の正しさをチェックするときに使えるだけだと言っています。言語は、あくまで自然な「インプット」を理解することにより「無意識的」に「習得」されるものであり、「意識的」に学習された知識は「習得」に変わることはないと主張しています。

つまり、日本の学校で行われている一般的な英語の授業は全くの無駄だという主張ですので、皆さんの中でも反発する人は多いでしょう。実際、言語学者や研究者の中でもこの主張に反対する人は少なくありません。しかし、まったく馬鹿げていると切り捨てられない事例や研究結果があることは事実です。

「意識的な学習」は役に立たない証拠となる「イマージョン方式」の事例

英語のクラス

例えば、カナダで行われている「イマージョン方式」によるバイリンガル教育での研究結果です。「イマージョン方式」とは、英語以外の言語を母語とする子ども(例えば私たち日本人の子ども)に、英語で他の学科(理科・算数・社会など)を学ばせる方法です。

この「イマージョン方式」で学習した子どもは、英語を一つの教科として学習した子どもと比べると、圧倒的に英語力が向上したという研究結果が多く発表されています。このことは、「インプット仮説」の「意識的に学習された知識は役に立たない」という主張の裏付けになると考えられます。

2. 英語学習法の科学|「インプット仮説」の注意すべき点!

注意(小)

クラシェンの提唱する「インプット仮説」には、現在でも論争となっている主張があります。ここでは、論争となっている2つを紹介します。上記でも指摘した、「アウトプットは必要ない」という点と、「意識的な学習は役に立たない」という点の2つです。

2.1.「アウトプットは必要ない」は本当か?

「インプット仮説」の、言語習得には「アウトプットは必要ない」という主張には注意が必要です。なぜなら、英語を話せるようになるためには「話す練習」が必要なことは疑う余地がないからです。しかし、その練習は、実際に話したり書いたりするような「アウトプット」である必要はなく、頭の中で行う「リハーサル」が必要だと理解すべきです。

TOEIC高得点でも話せない事例

恥ずかしがり屋

TOEICで高得点を取っても、英語を話せない日本人はたくさんいます。TOEICは英語を「聞くこと」と「読むこと」(インプット)の能力を測るテストです。TOEICで高得点を取るには、多くの英語を「インプット」する必要があります。しかし、「アウトプット」する必要はありません。

したがって、TOEICで高得点を取りたい日本人は、英語を「インプット」することだけに集中して勉強します。ほとんどの人は、話したり書いたりする「アウトプット」は全くしません。結果、英語を聞いたり読んだりする「インプット」の能力は向上するけれど、話したり書いたりする「アウトプット」の能力は全く向上しないということになってしまうと考えられます。

このTOEICの事例は、「インプット仮説」の、言語習得には「アウトプットは必要ない」という主張では説明できません。「インプット」だけでは英語を話せるようにはならない。つまり、「インプット」だけでは英語を習得できないという強力な証拠になり得ます。

それでは、やはり「アウトプット」は必要なのでしょうか?

子どもの「沈黙期」の事例

child

ことばを口から発するのが遅い子どもが、いきなり単語も文法も完璧なちょっと長めの文をいきなり話したという事例を上記で紹介しました。このような子どもは、「インプット仮説」が主張するように、実際には口からことばを発する「アウトプット」の練習はしていません。しかし、「話す練習はしている」と考えられています。

子どもは、実際に口からことばを発する前に、頭の中で話す練習をしていると言われています。両親などからインプットして理解したことばを、頭の中で試行錯誤しながら文章を作る練習をしていると言われています。沈黙しているので「沈黙期」(サイレント・ピリオド)を呼ばれているすが、実際には頭の中で話す練習を一生懸命しているのです。

実際に口から出さずに、頭の中で文章を作る練習(つまり、話す練習)をすることを「リハーサル」と言いますが、このリハーサルは、話す練習としては、実際に声を出す練習に比べて、効率的かつ実践的だと言われています。脳科学者の茂木健一郎氏は、第二言語(私たちにとっての英語)の習得においても、「サイレントピリオドで潜在的に進行している変化の方が、(実際に話すことによる変化より)習得の準備という意味においては実質的である。」と指摘しています。

実際に声に出して相手と話すことを「アウトプット」というのであれば、「アウトプットは必要ない」という「インプット仮説」の主張は間違っていないと言えます。

2.2.「意識的な学習は役に立たない」は本当か?

「インプット仮説」の「意識的な学習は役に立たない」という主張については、「意識的な学習」は、学習した知識を「使える」ようにすることが難しいという点で、「役に立たない」と言えるかもしれません。しかし、「使える」ようにすることは可能です。

2.2.1.「理解できる知識」だけでは役に立たない!

理解不能

意識的な学習は、「理解できる知識」にとどまりがちになり、「使える知識」になりにくいため、実際のコミュニケーションのときに「役に立たない」のです。「理解できる」知識と「使える知識」は2つの点で異なります。一つは、知識の「深さ」です。「理解できる」だけの知識は浅い知識ですが、その知識を「使える」ようにするには、深く理解する必要があります。

例えば、”discuss” は中学で習う超基本単語ですので、「議論する」という意味を知らない人はいないと思います。しかし、正確に使えるようになるには、”discuss” は(他動詞なので)目的語が直接続く(”about” などの前置詞は必要ありません)という知識も必要になります。「議論する」という意味を「理解できる」知識はあっても、前置詞は必要ないという「使える」知識がないと、”discuss” を使えるようにはなりません。

「理解できる知識」と「使える知識」の異なる点の二つ目は、「自分のもの」になっているかどうかです。例えば、自分が勉強したことを人に教えることにより学習が効率化すると言われています。人に教えるには、「本当に」理解しなければなりません。そして、人に教えるには、どのように教えるかを考えなければなりません。そのような試行錯誤の過程を経ることによって、単に「理解した知識」を「自分のもの」にでき、「使える知識」にできるのです。

2.2.2.「イマージョン方式」は「使える知識」にできる!

意見

英語で他の学科を学ばせる方法の「イマージョン方式」の方が、英語を一つの科目として学ばせるよりも英語力が向上する事例を上記で紹介しましたが、その理由は、「イマージョン方式」では「理解できる知識」を「使える知識」にしやすい環境を作れるからです。

「イマージョン方式」では、他の学科について英語で学習することになります。その過程では、先生の言うことや、教科書に書いてある英語を「理解する」ための知識を得られるだけではなく、英語で考えたり、クラスで先生の質問に口頭で答えたり、自分の意見を発言したり、書く宿題をやったりすることで、「使える」知識にしていきやすくなります。

2.2.3.「意識的な学習」でも「使える知識」にできれば役に立つ!

一方で、英語を一つの科目として学習する場合は、単語や文法、表現などを「理解する」ことが中心の学習となり、それらを「使える」知識にまでにもっていくことがどうしても難しくなってしまいます。

しかしながら、「意識的な学習」でも、学習した「理解できる知識」を「使える知識」に変えていくことができれば、「役に立たない」ことはありません。英語に限らず、最初は学習したこと(理解できる知識)を意識しながらゆっくりとしか使えなかったものが、慣れてくると(使える知識していくことで)無意識的に使えるようになることは日常でよくあることです。

3. 英語学習法の科学|「インプット仮説」から私たちが学ぶべきこと!

ひらめいた人

「インプット仮説」から、私たち英語学習者が学ぶべきことは3つあります。

3.1. 英語を習得するには「インプット」が重要!

第二言語(私たちにとっての英語)を習得するには「インプット」が重要なことを否定する研究者・言語学者はいません。「i+1」のレベルの英語を多くインプットすることにより、私たちが日本語を習得するように、自然な英語習得が可能となります。

3.2. 英語を話せるようになるには「リハーサル」が重要!

英語を習得するには、相手を見つけて実際に声を出して英語を話す練習をする必要はありません。自分の言いたいことを頭の中で英語の文章にする練習の方が重要です。つまり、意識的に「沈黙期」を確保して、「リハーサル」することが英語を話せるようになる鍵となります。

3.3.「意識的な学習」では「使える知識」にすることが重要!

「意識的な学習」で得た知識を「理解できる知識」にとどまらせるのではなく、「使える知識」していく必要があります。「使える知識」にするには、その知識を意識的に深めていくことと、自分自身で試行錯誤しながらその知識を自分のものにしていくことが重要です。

4. 英語学習法の科学|「自動化モデル」ってなに?

若葉マーク

「自動化モデル」とは、意識的に学習された知識が、何度も行動を繰り返すことで「自動化」し、無意識的に使えるようになるという理論です。この「自動化モデル」は、「インプット仮説」と並ぶ、第二言語習得研究の世界で最も有名な理論の一つです。

「自動化モデル」は、上記で説明した「インプット仮説」の「意識的な学習は、コミュニケーションの場面では役に立たない」という主張と相反する理論です。しかしながら、多くの日本人が、学校で意識的に学習した英語の知識をベースにして、トレーニングや実践を積み重ねることで英語を使えるようになっていることを考えると、日本人にとっては受け入れやすい理論です。

実際、「インプット仮説」の「意識的な学習は、コミュニケーションの場面では役に立たない」という主張に強く反対し、この「自動化モデル」を推す研究者や言語学者も多数います。

4.1.「自動化モデル」のメリット❶:「インプット」だけでは気づかない知識の習得

「インプット仮説」では、自然な「インプット」を理解することのみが言語習得につながると主張していますが、「インプット」だけでは気付けないことも多いのも事実です。

例えば、”I was scolded by my wife.”(私は妻に叱られた)と “I scolded my wife.”(私は妻を叱った)は、ただ聞いている(インプット)だけでは区別がつきにくいですが、「受け身」という文法項目を学習すれば、聞き取りやすくなります。そして、そのことで「インプット」による言語習得も更に促進されます。

心理動作

4.2.「自動化モデル」のメリット❷:「インプット」だけよりも学習効率性が向上

また、「インプット」だけの習得は非効率になりがちです。

例えば、「主語が三人称単数現在のときは動詞に “-s” が付く」という文法項目を学習しないまま、ただ「インプット」を続けた場合、「主語が “I” の場合は “-s” が付かない。”You” の場合も付かない。 “He” の場合は付く。 “John” の場合は付く…。」というように、さまざまな主語の場合で “-s” が付くか付かないかを、いちいち自分で検証していかなければなりません。「三単現の ”-s”」という文法を学習した方が圧倒的に効率的です。

これは、母語(英語)を学習中のアメリカ人の子どもの場合と、英語を学習中の日本人の大人の場合と大きく異なります。子どもは丸暗記の能力が高いので「三単現の “-s”」を知らなくても、自然に習得できますが、大人は丸暗記の能力が低いので自然には習得できません。私たち大人が英語を習得するには、「三単現の “-s”」を学習した方が効率的ということです。

良い点

4.3.「自動化モデル」のメリット❸:「言語間の距離」を克服する手助けになる

日本人にとって、日本語と異なる点が非常に多い英語(第二言語習得研究では「言語間の距離が遠い」といいます)を、大人になってから習得するには「意識的な学習」が必要不可欠といってもいいでしょう。

日本語と英語は言語間の距離が非常に遠いと言われています。それが、日本人が英語を習得するのが難しい一番の理由だと言われています。例えば、日本語と英語では「語順」が全く異なります。日本語の「動詞」は通常、文の一番最後に置きますが、英語では通常「主語」次に置きます。このような基礎的な文法項目を学習しないまま、ただ聞いている(インプット)だけでは、それに気づくだけでも永遠の時間がかかってしまいます。

フランス語やドイツ語など、英語と同じインド・ヨーロッパ語族に属する言語を母語としている人たちにとっては、ただ聞いているだけでも英語の習得は進みやすいのかもしれませんが、日本人には難しいと言えるでしょう。

5. 英語学習法の科学|「自動化モデル」の注意すべき点!

注意(小)

「自動化モデル」の一番の欠点は、知識を使えるようにすることが難しいという点です。そもそも「自動化」して無意識的に使えるようにすることが不可能なことも少なくありません。また、「自動化モデル」では、ネイティブにとって「不自然」は表現を作ってしまうというリスクもあります。

5.1.「自動化モデル」では「使える知識」にすることが難しい!

「インプット仮説」のところで既に指摘しましたが、「意識的な学習」で得た知識は、「理解できる知識」にとどまりがちになり、「使える知識」にならないため、実際のコミュニケーションのときに「役に立たない」ということになりがちです。

「自動化モデル」では、知識を「自分のもの」にし、「使える知識」にすることを常に意識しながら学習することが重要となります。

5.2.「使える知識」にすることが不可能な文法も多い!

そもそも、知識を「自動化」して無意識的に使えるようにすることが不可能な複雑な文法項目も少なくありません。このような文法項目は「自動化モデル」では対応できません。

例えば、名詞を修飾する形容詞を、名詞の前にいくつか置くことがありますが、それらの形容詞の置く順番は下記のように文法で決まっています。

英語:形容詞の順番

しかしながら、この順番を意識的に覚えて、無意識的に使えるようにすることが可能だとは思いませんし、現実的ではありません。

このようなことに対応するには、やはり多くの英語を「インプット」し、「文法」としてではなく、「感覚」として習得する必要があります。

5.3. 単語と文法が正しくても「不自然な英語」はいくらでも作れる

単語と文法が正しくても、ネイティブにとっては不自然な英語はいくらでも作れます。なぜなら、単語と文法は万能ではないからです。「自動化モデル」だけで英語を学習していると、不自然な英語で話してしまうことが多くなる危険性が高いということです。

例えば、下記の①は、単語も文法も全く間違いはありませんが、ネイティブにとっては非常に不自然な英文です。②が自然な英文です。


① The sisters of my wife are three.
(私の妻の姉妹は3人です。)
My wife has three sisters.
(私の妻は3人の姉妹がいます。)


「自動化モデル」では、自然な表現かどうかを認識することができないということです。これらを認識できるようになるには、多くの英語を「インプット」し、「感覚」として習得していくしかありません。

6. 英語学習法の科学|「自動化モデル」から私たちが学ぶべきこと!

ひらめいた人

「自動化モデル」から、私たち英語学習者が学ぶべきことは3つあります。

6.1.「自動化モデル」では「使える知識」にすることが重要!

「意識的な学習」で得た知識は、「使える知識」にしていくという意識を強く持つ必要があります。なぜなら、「自動化モデル」では、理解することに意識が集中しがちになるからです。「理解できる知識」にとどまってしまうと、「インプット仮説」が指摘するように、「意識的な学習は役に立たない」となってしまいます。

6.2.「意識的な学習」は日本人の英語学習を効率化してくれる!

「自動化モデル」の「意識的な学習」は、特に私たち日本人の大人の英語学習を効率化してくれます。「インプット」だけでは気付けないことに気づけたり、自然な習得では時間がかかることをすぐ理解できたり、日本語と英語の言語間の距離を克服する手助けもしてくれます。

6.3.「意識的な学習」では対応できないことがある!

「意識的な学習」で得た知識は、そもそも「使える知識」にできないものがあります。そして、「意識的な学習」で得た知識だけだと、不自然な英語になってしまうリスクを避けることができません。このような「自動化モデル」の弱点は「インプット仮説」で補う必要があります。

7. 英語学習法の科学|「インプット・自動化 ハイブリッド理論」が最強!

力

「インプット仮説」と「自動化モデル」は全く異なる主張をしていることは事実ですが、お互いの弱点を補うことができる関係でもあります。実際、多くの研究者や言語学者が2つの中間的な立場をとっています。

その、お互いの弱点を補う中間的な考え方(「ハイブリッド理論」と呼びます)を第二言語習得研究の「認知プロセス」という考え方をもとに説明します。この「ハイブリッド理論」が最強の理論であることがわかると思います。

7.1. ハイブリッド理論|「インプット」の量を確保すること!

「認知プロセス」とは、「第二言語(≒外国語)は、「インプット」(聞く・読む)されたものを知識として定着させ(「インテイク」)、最終的に「アウトプット」(話す・書く)につなげていくプロセスを経て習得される」という、研究者や言語学者の間では広く認知されている考え方です。

input_intake_output

この「認知プロセス」からわかることは、①「インプット」しなければ「アウトプット」できないということと、②「アウトプット」できる量は「インプット」の量よりも少なくなるということです。

言語を習得する上で、「インプット」の量を確保することが最も重要だというのは、「インプット仮説」が主張しているところであり、この考え方に反対する研究者や言語学者はいません。

7.2. ハイブリッド理論|「i+1」の英語と「単語・文法・発音」の知識をインプット!

「インプット仮説」と「自動化モデル」では、何をインプットするのか?という点については主張が異なります。「インプット仮説」では「i+1」の英語、「自動化モデル」では、言語の基本の3要素である「単語・文法・発音」の知識をインプットする必要があります。

「ハイブリッド理論」では、それら両方をインプットします。「i+1」の英語というのは、自分の英語力より若干難易度が高い英語の文章のことです。それに加えて、英単語の日本語訳を覚えること、英語の文法を日本語のそれを比較しながら理解し覚えること、そして、日本語にない英語独特の発音の仕方を理解し覚えることを同時にやっていきます。

7.3. ハイブリッド理論|「使える知識」への変換と「リハーサル」で「インテイク」!

「認知プロセス」の「インテイク」は、「知識として定着されること」と説明しましたが、もうちょっと具体的にいうと、「理解できる知識」を「使える知識」にすることです。

理解できる知識を使える知識に変える

「インプット仮説」では、実際に声に出して話す練習(アウトプット)は必要ないと主張していますが、声に出さずに頭の中で行う話す練習である「リハーサル」は必要であると考えると、「リハーサル」を通して「インテイク」すると考えることができます。

「自動化理論」では、意識的に学習した知識を「自動化」することで無意識的・自動的に使えるようにしていくという考え方でした。この場合は、「自動化」が「理解できる知識」を「使える知識」に変えることだと考えることができます。つまり、「自動化」が「インテイク」だと考えることができます。

「リハーサル」も「自動化」も、「インプット」したことを使えるようにするという意味では目的は同じです。「インプット仮説」による「インプット」も、「自動化モデル」による「インプット」も、同時並行的に「リハーサル」&「自動化」すれば、効率的に「インテイク」できるはずです。

なお、「インテイク」の詳細は「英語を話せるようになるには?ペラペラになる方法を科学で解明」に書いています。

7.4. ハイブリッド理論が最強である理由は5つ!

グラフ

ハイブリッド理論は、インプット仮説と自動化モデルの両方の強みに、2つの理論の相乗効果が加わることで、「最強」の英語習得理論になり得ます。ハイブリッド理論が「最強」である理由は、下記の5つのことを実現できるからです。

  • ハイブリッド理論では、「i+1」レベルの英語のインプットの量を確保することにより、自然な英語習得を促進します。(インプット仮説
  • ハイブリッド理論では、「単語・文法・発音」の知識を意識的に学習することで、自然に習得しずらい知識を効率的に学習します。(自動化モデル
  • ハイブリッド理論では、「単語・文法・発音」の知識を意識的に学習することで、インプットによる自然な英語習得も効率化することができます。(インプット仮説と自動化モデルの相乗効果
  • ハイブリッド理論では、意識的に学習した「単語・文法・発音」の知識(自動化モデル)と、「i+1」の英語(インプット仮説)を同時に、「リハーサル」と「自動化」を通して「理解できる知識」から「使える知識」へ効率的に変換します。(インプット仮説と自動化モデルの相乗効果
  • ハイブリッド理論では、よく使う定型表現も「使える知識」に変えていきます。(インプット仮説と自動化モデルの弱点補強

最後の点については補足が必要だと思います。「自動化モデル」の弱点の一つとして、単語と文法が正しくてもネイティブにとって不自然な英語を作ってしまうリスクがあり、これは多くインプットすることにより感覚として身につけていく部分であると説明しました。

しかし、例えば日本で英語を学習している皆さまにとっては、インプットの量を確保することが難しい場合もあると思います。その場合の対応策として、よく使用される定型表現を覚えて使えるようにすることも、不自然な英語を避ける有効な方法です。

8. 英語学習法の科学|「インプット・自動化 ハイブリッド理論」の学習法!

本とひらめき

The English Club は、「最強」の英語習得理論である「ハイブリッド理論」の考え方をベースとした英語学習方法をご提案しています。

このような理論は「机上の空論」と批判されることもありますが、The English Club は、この「ハイブリッド理論」を具体的な学習方法に落とし込んでいるところに他者にない強みがあります。

その具体的な学習方法については、無料eBook『英語独学完全マニュアル』に概要をまとめていますので是非お読みになってください。また、The English Club が提供している「英語学習プラン作成サービス」と「オンライン学習サポート」では、実際に「ハイブリッド理論」をベースとした学習方法をご体験いただけます。こちらも是非ご検討ください。

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そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。

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執筆者プロフィール
小柳 恒一
  • 1999年ロンドン大学大学院ロンドン・ビジネス・スクールにてMBA取得。1997年TOEFL630点取得。2003年TOEIC990点取得。2004年米国公認会計士試験合格。2010年4月中小企業診断士登録。
  • 2000年よりリーマン・ブラザーズ等にて13年以上M&Aのアドバイザリー業務に携わる。
  • 2010年より中堅・中小企業を対象とした事業継承M&Aコンサルティング事業を開始。
  • 2013年よりThe English Clubの前身となるEnglish Tutors Network事業を開始。
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