日本語の名前をローマ字表記する場合は「ヘボン式ローマ字」で書くことが一般的である。しかし、最近はそれによらずに比較的自由に表記する人も増えてきた。名前のローマ字表記の基本と応用を説明する。
また、姓名の順番については、ローマ字で書く場合は「名・姓」の順番で書くことが一般的であったが、日本政府の方針の影響もあり、それも変わりつつある。また、カンマや大文字を使うなどの別の方法もあるので、それらの基本と応用を説明する。
1. 英語での名前の書き方|ローマ字表記の基本と応用
日本語の名前を英語表記する場合は「ヘボン式ローマ字」を使って書くことが一般的である。
その理由は、パスポートの氏名を「ヘボン式ローマ字」で表記することが「旅券法」という法律で定められているからだ。
1.1.【基本】日本語と「ヘボン式ローマ字」の変換表
日本語と「ヘボン式ローマ字」の変換表は以下の通り。
1.2.【基本】注意が必要な「ヘボン式ローマ字」
長音(ちょうおん)|母音をのばす音
※「い」をのばす場合:「I」は省略しない
【例】
椎名(しいな)→ SHIINA(× SHINA)
新潟(にいがた)→ NIIGATA(× NIGATA)
新菜(にいな)→ NIINA, etc. (× NINA), etc.
※「う」をのばす場合:末尾の「U」は省略する
【例】
佐藤(さとう)→ SATO(× SATOU)
太郎(たろう)→ TARO(× TAROU)
伊藤(いとう)→ ITO(× ITOU), etc.
※「う」をのばす場合:「U」は一つ
【例】
裕子(ゆうこ)→ YUKO(× YUUKO)
優太郎(ゆうたろう)→ YUTARO(× YUUTARO)
秀太(しゅうた)→ SHUTA, etc. (× SHUUTA), etc.
※「お」をのばす場合:「おう」は「O」
【例】
浩平(こうへい)→ KOHEI(× KOUHEI)
翔太(しょうた)→ SHOTA(× SHOUTA)
陽子(ようこ)→ YOKO, etc. (× YOUKO), etc.
※「お」をのばす場合:「おお」は「O」
【例】
太田(おおた)→ OTA(× OOTA)
大西(おおにし)→ ONISHI(× OONISHI)
大岡(おおおか)→ OOKA, etc. (× OOOKA), etc.
促音(そくおん)|小さい「っ」で表記する音
※ 小さい「っ」を入れる場合:子音を重なる
【例】
一平(いっぺい)→ IPPEI
吉川(きっかわ)→ KIKKAWA
服部(はっとり)→ HATTORI, etc.
※ 小さい「っ」を入れる場合:「CH」の前は「T」を入れる
【例】
吉兆(きっちょう)→ KITCHO
八丁(はっちょう)→ HATCHO, etc.
撥音(はつおん)|「ん」で表記する音
※「B」「M」「P」の前に「ん」を入れる場合:「N」ではなく「M」
【例】
本間(ほんま)→ HOMMA(× HONMA)
俊平(しゅんぺい)→ SHUMPEI(× SHUNPEI)
丹波(たんば)→ TAMBA, etc. (× TANBA), etc.
1.3.【応用】「ヘボン式ローマ字」以外のローマ字表記
最近は「ヘボン式ローマ字」によらずに比較的自由に表記する人も増えてきた。最近よく見かける例を紹介するが、パスポートでは使えない(別途申請が必要)。そのほかの公的な書類でも避けた方がよいだろう。
「お」をのばす場合:「H」を入れる
【例】
伊藤(いとう)→ ITO → ITOH
大野(おおの)→ ONO → OHNO
翔太(しょうた)→ SHOTA → SHOHTA, etc.
「K」を「C」で表記する
【例】
莉子(りこ)→ RIKO → RICO
誠(まこと)→ MAKOTO → MACOTO, etc.
「R」を「L」で表記する
【例】
理沙(りさ)→ RISA → LISA
沙羅(さら)→ SARA → SALA, etc.
名前の途中でハイフン「-」を入れる
【例】
健一(けんいち)→ KENICHI → KEN-ICHI
(「けにち」を避けるため), etc.
2. 英語での名前の書き方|姓名の順番の基本と応用
英語で名前を書く場合は、通常「名 → 姓」の順で書く。
一方で、日本人の名前をローマ字で書く際は、国の公文書では「姓 → 名」の順にすると政府が2019年9月に決めた。
詳しく説明しよう。
2.1.【基本】英語の名前は「名 → 姓」の順番が基本
英語で名前を記載する際は、公用語が英語の国では「名 → 姓」の順番である。
【例】
Donald Trump(ドナルド・トランプ)
Tom Cruise(トム・クルーズ)
Cameron Diaz(キャメロン・ディアス), etc.
日本人の名前をローマ字で記載する際も「名 → 姓」の順番が基本である。その際、日本人以外の方にとって「名」と「姓」の区別がつきにくいため、「姓」を全て大文字にする場合もある。
【例】
Shohei Otani/OTANI (大谷翔平)
Shinzo Abe/ABE(安倍晋三)
Hayao Miyazaki/MIYAZAKI(宮崎駿), etc.
ちなみに、大谷翔平の背番号は「OHTANI」である。
2.2.【基本】日本人の名前をローマ字で記載する場合は「姓 → 名」と政府が決定
日本政府は、2019年9月、公文書などに日本人の名前をローマ字で書く際は「姓 → 名」の順番にすることを決定した。姓と名を明確に区別させる必要がある場合は、姓の全てを大文字にするとのことだ。
【例】
Otani/OTANI Shohei(大谷翔平)
Abe/ABE Shinzo(安倍晋三)
Miyazaki/MIYAZAKI Hayao(宮崎駿)
, etc.
パスポートではこの表記方法になる。しかし、名刺には「名 → 姓」の順番で記載している方も未だ多く、一般的には浸透しているとは言い難い。
2.3.【基本】フォームに名前を記載する際の注意点
フォームにローマ字で名前を記載する際、基本は「First name」のところに「名」、「Last name」のところに「姓」を記載する。しかし、「名」と「姓」は下記のように色々な呼び方があるので注意が必要だ。
【名】
「First name」
「Given name」
「Personal name」
「Christian name」
【姓】
「Last name」
「Family name」
「Surname」
「Middle name」を記載するところもあるが、日本人は空欄のままでいい。英語圏の方は「Middle name」を持っている方が多いが、その場合の書き方の順番は「名 → middle name → 姓」である。
【例】
Joseph Robinette Biden Jr.(ジョー・バイデン)
Angelina Jolie Voight(アンジェリーナ・ジョリー)
John Fitzgerald Kennedy(ジョン・F・ケネディ), etc.
2.4.【応用】カンマ・ピリオドやイニシャルを使った名前の記載方法
※ カンマ「,」は、「名」と「姓」の順番を反対に記載するときに使用される。
【例】
Trump, Donald(ドナルド・トランプ)
Abe, Shinzo(安倍晋三)
Shakespeare, William(ウィリアム・シェイクスピア), etc.
なお、日本政府が決定した「姓 → 名」の記載方法の場合は、「姓」のあとにカンマ「,」は入れない。
※ ピリオド「.」は省略するときに使用される。
【例1】
D. Trump
Donald T.
T., Donald
Trump, D.
(ドナルド・トランプ)
【例2】
S. Abe
Shinzo A.
A., Shinzo
Abe, S.
(安倍晋三)
なお、「A., Shinzo」は、「,」があるので「名」と「姓」が反対に記載されているという意味であり、Aのあとに「.」があるので「姓」(Abe)は省略されているという意味である。
しかしながら、このように名前の一部を省略して記載する機会はあまりないだろう。
2.5. 英語圏の人の名前を書く場合の注意点
名前の省略形(ニックネーム)には要注意!
英語圏の人の正式な名前を書かなければならない場合は注意が必要だ。普通に使用されている名前(省略形・ニックネーム)が正式な名前ではない場合がよくあるからだ。
例えば、アメリカ合衆国第46代大統領の「Joe Biden」(ジョー)の正式な名前は「Joseph Robinette Biden Jr.」(ジョセフ)である。その他にも下記のような例がある。
【例】
Mike(マイク)→ Michael(マイケル)
Steven(スティーブン)→ Stephen(ステファン)
Jeff(ジェフ)→ Jeffrey(ジェフリー), etc.
敬称をつけることも忘れずに!
男性(未婚もしくは既婚):Mr.(ミスター)
女性(未婚もしくは既婚):Ms.(ミズ)
なお、既婚女性の場合は「Mrs.」(ミセズ)が使用される場合もあるが、最近は「Ms.」(ミズ)を使用する場合が多い。
また、女性か男性が不明な場合は「Mx.」(ミクス)が使用される場合がある(主にイギリス)。
これらの敬称のあとには「姓」かフルネーム(名姓)を書く。「名」だけはだめ。
【例】
Mr. Donald Trump
Mr. Trump
(ドナルド・トランプ様)
(× Mr. Donald)
親しい人には、「姓」もしくは「名」のあとに「-san」をつけることも受け入れられる(あなたが日本人の場合)。
【例】
Donald-san
Trump-san
(ドナルドさん・トランプさん)
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