社会人向け英語の単語帳・単語集のうち、人気の厳選7シリーズ(23冊)を徹底的に検証する。効率的に英単語を覚えるための、科学的見地からの注意点も紹介しよう。
英語を効率的に習得したいのであれば、「どの」英単語を「どのように」覚えるかが非常に重要となる。英単語帳を選ぶ際には、「覚えるべき単語が掲載されているか?」(掲載語彙の信頼性)と「効率的に覚えられる形式・形態か?」(学習の効率性)に特に気をつけよう。
このコラムでは、「掲載語彙の信頼性」と「学習の効率性」に「掲載語彙数」を加えた、3つの指標で下記の7種類・23冊の単語帳を徹底検証する。
目次
1. 英単語帳|「掲載語彙の信頼性」「学習の効率性」「掲載語彙数」ランキング
英単語帳を選ぶ際に重要な指標として、「掲載語彙の信頼性」「学習の効率性」「掲載語彙数」の3つをあげた。それぞれの指標を縦軸、難易度(初級から上級)を横軸として、人気の単語帳23冊をプロットしてみる。
1.1. 英単語帳|「掲載語彙の信頼性」ランキング
「掲載語彙の信頼性」とは、覚えるべき単語が多く掲載されているかどうかの指標である。つまり、せっかく覚えても、この先全く出会わないので無駄な努力になってしまう単語が多く掲載されている単語帳は、表の下の方にプロットされる。
英単語を効率的に覚えたければ、最も使用頻度が高い単語から覚えるべきである。最も使用頻度が高い単語は、使用頻度順に並べた「語彙リスト」から抽出することができる。(なお、自分の専門分野の単語など、使用頻度が低くても自分にとっては重要度が高い単語はあるだろう。しかし、ここではそれらを無視する)
世の中には、いろいろな「コーパス」を基にした、いろいろな「語彙リスト」がある。「コーパス」(corpus)とは、自然言語のデータベースであり、有名なものに「British National Corpus」(BNC)や「Corpus of Contemporary American English」などがある。
信頼できる「語彙リスト」を基として掲載する単語を選定している単語帳は、「掲載語彙の信頼性」は高いということになる。
この「掲載語彙の信頼性」が一番高い単語帳として『JACET8000英単語』を選んだ。なぜなら、本書は「BNC」をベースとして、独自の「サブコーパス」のデータを加味して、使用頻度順に8000語を選定しているからだ。信頼性は非常に高いといっていいだろう。
しかしながら、この『JACET8000英単語』は単語を効率的に覚えるための単語帳ではない。なぜなら、2つの大きな欠点があるからだ。それは、「音声がない」ことと、「例文が効率性を考えていない」ことだ。
1.2. 英単語帳|「学習の効率性」ランキング
「学習の効率性」とは、その単語帳が、単語を効率的に覚えられるように、または、単語力だけではなく英語力全体を強化できるように、様々な工夫を凝らしているかどうかの指標である。それらには以下が含まれる。
- 音声: 収録内容とその質、プロソディ・音声変化・スピードなどの発音の要素が自然かどうか、学習レベルに合っているかなど。
- 例文: よく使用される表現かどうか、自然な表現かどうか、文法が単語レベルに合っているかどうか、1例文に覚えるべき単語がいくつ含まれているか、文章の内容や質など。
- その他: 発音記号や派生語・反意語などの関連語の掲載があるかどうか、語形変化の説明や、語源の紹介があるかどうかなど。
「掲載語彙の信頼性」では2位だった『DUO 3.0』と『DUO select』をトップに選んだ。「掲載語彙の信頼性」でトップだった『JACET8000英単語』は下位に落とした。
『DUO 3.0』と『DUO select』の一番の特徴は、1つの例文に覚えるべき単語をなるべく多く入れ、効率性を重視しているところである。かつ、自然な例文や、頻繁に使用される表現も他に比べて多く含まれている。音声についても他に比べて質が高い。
1.3. 英単語帳|「掲載語彙数」ランキング
最後の指標は「掲載語彙数」である。単純に、1冊の単語帳に覚えるべき単語(見出し語)がいくつ含まれているかで順位付けした。
『JACET8000英単語』が返り咲いた。1冊で8,000語の見出し語は他を圧倒している。一方で、最下位の『キクタンTOEIC SCORE 500』は448の見出し語しか掲載されていない。
掲載単語数のついては、紛らわしい記載がされている単語帳も少なくないので注意してほしい。例えば、『キクタン【Basic】4000』は「4000」という記載があるが、実際は1200の見出し語しか掲載されていない。更にひどいのは『英単語の語源図鑑』である。本書の帯には、「100の語源で10,000語が身につく!すごい英単語集」と記載されているが、実際には126の語源と1,023の単語しか掲載されていない。これはもう「詐欺」である。
次に、人気の単語帳7シリーズ・23冊について、The English Clubが、それぞれのおすすめ度を若干辛口にまとめてみた。是非単語帳選びの参考にしてほしい。
2. 英単語帳|『DUO』シリーズのおすすめ度分析
2.1.『DUO select』のおすすめ度分析by The English Club
「『DUO3.0』から厳選した単語を掲載した効率性重視の単語集。難しい例文があったり、高価格という欠点もあるが、中学基本語は習得したが『DUO3.0』は難しいと感じる方にはおすすめ。」
このコンパクトさで見出し語1624語、総掲載語数3349語というのは、他の単語集を圧倒している。別売りのCDには、見出し語1624語を約30分で総復習できる音源も付いている。他にない効率性を求めた単語集だ。
掲載語については、その選定基準の詳細が記載されており内容も信頼できそうだ。実際に掲載されている単語群を見ても、高校2年生くらいまでの重要語ばかりが並んでおり、派生語、同義語、反意語の記載も充実している。発音についても、発音記号やカタカナ発音ガイドもついており十分にフォローしてある。ただ、中学基本語は含まれていないので、不安な方は別途そこを強化してからの方がいい。
注意点は難しい例文があることだ。本書の売りはコンパクトさだが、1つの例文に平均4つの見出し語を入れることでそれを実現している。その弊害として、このレベルの単語を学習する方にとっては難しい例文になっていることが気になる。特に、結構難しい文法が何の説明もなく出てくる。
一番の欠点は価格が高いこと。音源については、通常の単語集ではCDが付属しているか、もしくは無料でダウンロードできるが、本書は別売りになっている。しかも【2,800円+税】とお高い。単語集と合わせて購入すると【3,940+税】と総額4,000円を超えてしまう。
「DUO select CD」には、同じ例文の音源が、スピードと内容を変えて「練習用」と「基礎用」の2種類入っている。せめてそれらを別々に販売してほしいものだ。繰り返すが、高すぎる!The English Clubのオススメ度は【4.5/5.0】だ。
なお、『DUO select』の詳細については「DUO select|英単語教材としての内容・使い方・効果を徹底検証」を参考にしてほしい。
2.2.『DUO 3.0』のおすすめ度分析by The English Club
「高い。そして掲載基準や例文に若干の不安はあるが、他を圧倒する単語掲載数を最小限の英文に収めている。中学基本語の次を効率的にマスターしたい方にチャレンジしてほしい単語集」
本書の記載されている「推奨学習法」に沿って学習しようとすると、本書、基礎用CD、復習用CD、ザ・カードを買いそろえなければならない。総額なんと!8,640円(税込)だ。あまりにも高すぎる。英語は単語を覚えるだけではない。他にも教材が必要になる。単語だけにこれだけの金額はかけられない。
The English Clubがお勧めする使い方では、復習用CDとザ・カードは必要ない。その場合は4,320円(税込)と半分に抑えられる(それでもまだ高い!)。
一方で、本書の内容は他の単語集を圧倒している。本書の総掲載語は7,866語であり、そのうち見出し語は2,569語だ。これだけの量を掲載している単語集は他にはないだろう。そして、見出し語の説明欄には日本語の訳語の他、派生語・類義語・反意語や、見出し語に関連する役に立つ情報も多く掲載されている。ただし、中学で習う最重要単語などは掲載されていない。加えて掲載基準が若干曖昧なのが気になる。
本書の「売り」は、2,569の見出し語を560の例文に収めたことだ。その最小限の数の例文により、効率的に単語を習得できるというのが本書の特徴だ。それらの例文には、不自然なものもあり、使う場面がないものも少なくないなどの欠点もある。しかしながら、効率的に単語を覚えるにはよい試みだ。また、本書を使用するのであれば基礎用CDが必須となる。その内容については、若干疑問が残る部分もあるが、まずまずの出来だ。その理由は後ほどご説明する。
細かい部分で改善の余地がある単語集だが、総合すると購入する価値のある単語集だといえるだろう。ビジネスパーソンや学生などの幅広い層に方達にお薦めできる。The English Clubのオススメ度は【4.0/5.0】だ。
なお、『DUO 3.0』の詳細については「DUO 3.0|英単語教材としての内容・使い方・効果を徹底検証!」を参考にしてほしい。
3. 英単語帳|『DataBase』シリーズのおすすめ度分析
『DataBase 1700 使える英単語・熟語 3rd Edition』¥850+税
『DataBase3000 基本英単語・熟語 5th Edition』¥950+税
『DataBase4500 完成英単語・熟語 5th Edition』¥990+税
『1700』と『3000』は、大人・社会人の初心者の方で、中学英語からおさらいしたい方におすすめだ。最重要語を確認するにはよい単語集。価格は安いが内容は充実している。」
安い。4種類とも音声がついて千円以下(税別)で購入できる。【1700】はなんと850円(税別)だ。『1700』と『3000』は、安いということに加えて、内容的にも大人・社会人の初心者の皆さまにもおすすめできる。
中学英単語の基礎からしっかりとおさらいしたい方には『1700』を、重要な中学英単語と高校の基礎英単語をおさらいしたい方には『3000』がおすすめだ。両書とも絶対に知っておかなければならない重要語ばかりを掲載しているので、ご紹介するトレーニング方法で、「目」「耳」「口」「手」を使って繰り返し学習して頂きたい。理解できるだけではなく、自分でも使えるようになることを目標にしよう。
付属のCDには、見出し語、日本語訳、フレーズ/例文が収録されているので、単語集を見なくても、聞くだけで単語を覚えることができる。『1700』のフレーズ/例文はかなり遅めのスピードで読まれているので初心者の皆さまにはよいだろう。『3000』はナチュラルに近いスピードで読まれている。
おすすめの『1700』と『3000』にも欠点がある。『1700』には、見出し語の使い方の例を示す目的で、フレーズもしくは例文が載っているが、フレーズだと初心者の皆さまには分かりづらい。最初はあまり深く考えずに、「へー」と見ておく程度でよいだろう。また、『3000』には、「つづりと発音」「語源」についてのコラムも掲載されているが、初心者の皆さまは無視して構わない。長文の内容がつまらないという欠点もある。
『4500』と『5500』は大学受験が色濃く出ているので、大人・社会人の皆さまにはおすすめできない。せっかく苦労して覚えても、出会ったり、使ったりする機会が全くないので忘れてしまう単語が多いからだ。『1700』もしくは『3000』を終了したら、他の単語集に移行することをおすすめする。
The English Clubの評価は、『1700』と『3000』は【4.0/5.0】。『4500』と『5500』は【2.5/5.0】。あくまで大人・社会人向けの単語集としての評価だ。
なお、『DataBase』シリーズの詳細については「データベース|1700 3000 4500 5500の内容・使い方・効果を検証」を参考にしてほしい。
4. 英単語帳|『速読速聴・英単語』シリーズのおすすめ度分析
『速読速聴・英単語Basic 2400 ver.3』¥1,900+税
『速読速聴・英単語Daily 1500 ver.3』1,900+税
『速読速聴・英単語Core 1900 ver.5』¥1,900+税
『速読速聴・英単語Advanced 1100 ver.5』¥2,300+税
「中級者以上のビジネスパーソンの方には、「自動化」促進用として『Core1900』『Advanced1100』はお薦めできる。しかし、決して単語学習用ではない。」
このコラムでピックアップした「速読速聴・英単語」シリーズの4種類のうち、お薦めできるのは『Core1900』と『Advanced1100』の2つだ。『Core1900』はTOEIC600点以上の方にはお薦めできる。一方で『Advanced1100』は、TOEIC900点以上ないと難しいのでターゲット層が非常に限られる。
『Core1900』と『Advanced1100』はお薦めできるが、単語を効率的に覚えるための教材としてではない。「自動化」を促進するための教材としてである。「自動化」とは、第二言語習得研究で用いられている言葉で、単語・文法・発音の知識を「自動的」に使えるようにすることを意味する。
「速読速聴・英単語」シリーズは、単語の選定基準が非常にあいまいなため、英単語を効率的に習得したい方には決してお薦めできない。英単語は、使用頻度順に覚えていくことが最も効率的だが、本シリーズはそれを全く考慮していない。
本シリーズは「文脈主義」という、文脈で単語を覚えることを基本としている。基本的には賛成なのだが、この方法は、特に中学英語からおさらいしたい初級者の方には逆に非効率となる。初級者の方であれば、最重要語2000語を短く簡単な例文で覚えるタイプの教材から始めた方が圧倒的に効率的だ。
また、本シリーズでは、一貫してジェネラルな題材を使用している。英語を効率的に習得したいのであれば、自分が使うであろう英語と似た英語の題材を使うことが必須となるが、本シリーズの題材は、一見、皆にとって必要な題材であるように思えるが、実は皆にとって必要ではない。ターゲット層が非常にあいまいな教材である(特に『Basic2400』と『Dailly1500』)。
The English Clubのオススメ度は、『Basic2400』と『Dailly1500』が【2.0/5.0】、『Core1900』と『Advanced1100』が【3.0/5.0】だ。
なお、『速読速聴・英単語』シリーズの詳細については「速読速聴・英単語|Basic Daily Core Advanced を徹底検証!」を参考にしてほしい。
5. 英単語帳|『キクタン』シリーズのおすすめ度分析
5.1.『キクタンTOEIC』シリーズのおすすめ度分析 by The English Club
『キクタンTOEIC TEST SCORE 500』¥1,600+税
『キクタンTOEIC TEST SCORE 600』1,600+税
『キクタンTOEIC TEST SCORE 800』¥1,600+税
『キクタンTOEIC TEST SCORE 990』¥1,600+税
「音楽にのせて単語を覚える「チャンツ」が好きな方にはお薦めの単語集。単語・熟語の掲載基準に疑問が残るが、効率的に覚えられる学習法を提案している。『600』が一番のお薦め。」
「チャンツ」が好きな方の選択肢はこのキクタン・シリーズしかないだろう。また、本書は「目」「耳」「口」(加えて『500』は「手」)を使って、かつ、センテンスで覚えることを提唱しているが、これは、第二言語習得研究および脳科学(神経科学)研究の知見からも、非常に効率的な単語学習法だ。
CDには、見出し語、日本語の訳語、センテンスが収録されているので、本書を開けない場所でも、CDを聞くだけで単語が覚えられる。センテンスはナチュラル・スピードより若干遅めで録音されているので、英語の発音の入門用には非常によい。
一方で、見出し語はチャンツで録音されているので、単語のアクセントの位置が理解しづらいことが欠点の一つだ。
また、掲載されている単語や熟語の選択には疑問が残る。例えば『500』は、TOEIC350点程度以上の方向けだが、そのレベルでは覚える必要のない単語が少なからず掲載されている。『800』には、知らなくてもTOEIC満点取れるような単語・熟語も多い。『990』は、全く覚える必要がないと判断できる単語・熟語が少なくない。
これらの強みと弱みを考慮すると、このキクタンTOEICシリーズの中でお薦めできるのは『600』のみだ。『600』には、The English Clubが妥当だと判断できる単語・熟語が一番多い。The English Clubのオススメ度は、『600』が【3.0/5.0】。その他が【2.0/5.0】だ。
なお、『キクタンTOEIC』シリーズの詳細については「キクタンTOEIC|500 600 800 990の内容・使い方・効果を検証!」を参考にしてほしい。
5.2.『キクタン【Basic】』シリーズのおすすめ度分析 by The English Club
『キクタン【Basic】4000語レベル 改訂第2版』¥1,400+税
『キクタン リーディング【Basic】4000 改訂版』1,400+税
「ビジネスパーソンにおすすめのキクタンは、『キクタンBasic 4000』。単語の掲載基準に若干の不安は残るが、チャンツ好きな方にはおすすめ。」
ビジネスパーソンの初級・中級者向けにおすすめするキクタンは、「改訂第2版 キクタン【Basic】4000語レベル」だ。
「改訂第2版 キクタン【Basic】4000語レベル」は非常にバランスのとれた単語集だ。掲載されている単語・例文、ダウンロード音声、そして学習方法と、どれも合格点の出来といえる。
本書は、受験生を第一のターゲットにしているが、社会人の皆さまにとっても重要語ばかりなので、チャンツで単語を覚えたい大人の方向けにもオススメできる単語集だ。中学で習う約1000語の最重要語の次に使うべき単語集といえるだろう。
一方で、「改訂版 キクタン リーディング【Basic】4000」はおすすめできない。なぜなら、見出し語として掲載されているターゲット単語と、リーディング用に掲載されている英文の難易度がちぐはぐだからだ。
「キクタン ビジネス【Basic】」は、学習者を選ぶ単語集だ。書店で実際に中身を見て、自分が必要とする単語が多く載っているかどうかを確かめてから購入することを強くオススメする。ちなみに付属のCDにはチャンツしか収録されていない。センテンスの音声は別売りなので注意してほしい。
キクタンといえば、「チャンツ」だ。「チャンツ」とは、音楽に乗せて単語を覚える方法だが、人によって好き嫌いがある。また、「チャンツ」には問題もある。音楽に乗せて発音しているため、よく聞き取れなかったり、アクセントの位置がわかりづらかったりすることがある。
The English Clubのオススメ度は、『キクタン【Basic】』が【3.0/5.0】。その他が【2.5/5.0】だ。
なお、『キクタン【Basic】』シリーズの詳細については「キクタン徹底検証|ビジネスパーソン向け4種類の内容・使い方・効果」を参考にしてほしい。
6. 英単語帳|『究極の英単語』シリーズのおすすめ度分析
『究極の英単語 Vol.1 初級の3000語』¥1,600+税
『究極の英単語 Vol.2 中級の3000語』1,600+税
『究極の英単語 Vol.3 上級の3000語』¥1,800+税
『究極の英単語 Vol.4 超上級の3000語』¥1,800+税
「SVL12000を信じられる方には、自分の単語力確認用には使えるだろう。決して単語を効率的に覚えるための単語集ではない。」
正直にいって「究極の英単語」シリーズの良いところをあげるのは難しい。あえて言えば、SVL12000という語彙リストにしたがって、重要度順に単語を確認できる点である。しなしながら、SVL12000の単語選定基準の詳細は不明であり、かつTOEICなどの試験や、英字新聞などのカバー率も不明なため、SVL12000が信頼できる語彙リストなのかどうかが判断できない。
単語集として、本シリーズの最も致命的な弱点は、見出し語の派生語や反意語などの関連語が全く掲載されていないことだ。単語を効率的に覚えるための単語集としてはありえない。
また、Vol.1〜4の全12000語のうち、半分以上の6089語は、単に単語を羅列しただけの「Word List」に入っている。それらの単語には、ほとんど例文も掲載されていない。日本語の訳語をただ機械的に覚えていくだけの学習であり、効率性を全く無視していると言わざるを得ない。
本シリーズの音声については、CDが別売りされているが、Vol.1〜4の4冊分の音声をまとめて販売している。Vol.4には、多くの方にとって覚える必要性が全く高くない単語が数多く掲載されていることを考えると、あまりに不親切である。The English Clubのオススメ度は【1.5/5.0】だ。
なお、『究極の英単語』シリーズの詳細については「究極の英単語|単語教材としての内容・やり方・効果を徹底検証」を参考にしてほしい。
7. 英単語帳|『JACET8000英単語』のおすすめ度分析
「『JACET8000英単語』は英語学習用の単語集ではない。語彙力を確認するための語彙表だ。本書でチェックしながら英単語を覚えていけば、効率的な単語学習が可能となる。」
使用頻度順に並べられた語彙表は、英単語学習を効率化するには必要不可欠なものだ。一般の英語学習者が一番入手しやすいものが『JACET8000英単語』だ。自分の語彙力に穴がないかを確認するために是非活用して頂きたい。
『JACET8000英単語』には音声がない。そして例文の掲載が極端に少ない。この2つの理由から、本書を英単語学習用に使用することはおすすめできない。あくまで語彙力の確認のために使用することをおすすめする。『【新】JACET8000』には意味すら掲載されていない。
本書は、有名な英語の言語データベースである「British National Corpus」に、アメリカ英語や日本でも各種英語試験の語彙も考慮して、使用頻度順に並べた語彙表である。しかし、覚える必要性が高くない単語が少なくない。それらを覚えるべきかどうかの最終判断はご自身でする必要がある。
また、本書には「TOEIC 600点レベルではLevel 6(5001〜6000語レベル)」などのような、語彙レベルについての記載があるが、これらは他の研究者の結論とは大きく異なる部分もあるので、あまり鵜呑みにしない方がよい。
英単語は、ただ単に数だけを追い求めるのではなく、質も考えて学習することをおすすめする。「使える単語(運用語彙)」と「理解できる単語(認識語彙)」とを分け、使えるようにする単語は深く学習することを心がけることで、英単語学習を効率的にして頂きたい。
The English Clubのオススメ度は、単語を効率的に覚えるための単語帳としては【2.0/5.0】、信頼できる語彙リストとしては【3.5/5.0】だ。
なお、『JACET8000英単語』の詳細については「JACET8000英単語とは?単語集としての内容と使い方を徹底解説!」を参考にしてほしい。
8. 英単語帳|『英単語の語源図鑑』のおすすめ度分析
「語源を学習する理由は、英単語を効率的に習得するためだ。しかし、本書はその効率性が高いとは言えない。初心者が語源を理解するためにペラペラとめくるだけなら良い。」
本書の良いところであり、売れた一つの理由でもあるイラストによる説明は評価できる。しかしながら、意味を理解することが困難なイラストも多い。
本書に掲載されている英単語の総数1,023語を、本書に掲載されている語源の数126で割ると、1つの語源で平均8.1個の英単語が覚えられることがわかる。これは決して多くはないが、少なくもない。
本書の学習効果はあまり高くはない。掲載する語源と英単語の選定があまいからだ。本書に掲載されている語源以上に重要な語源は多くある。そして、掲載されている語源が含まれた覚えるべき単語は、掲載されているもの以外にも沢山ある。
本書には、その語源を学習しても覚えられる単語(かつ、覚えるべき単語)が2〜3つしかないものが少なくない。加えて、本書に見出し語として掲載されている英単語の中には、覚える必要がないものも多い。つまり、英単語の学習方法としては効率的ではないということだ。
1,023の単語しか掲載していないにもかかわらず、「10,000語が身につく!」と宣伝しているのは言語道断。The English Clubのオススメ度は【1.5/5.0】だ。
The English Clubが運営する語源のサイト「英語の語源 by The English Club」を是非一度のぞいてみて頂きたい。遥かに効率よく、覚えるべき英単語が覚えられる。
なお、『英単語の語源図鑑』の詳細については「英単語の語源図鑑|単語集としての内容・使い方・効果を検証!」を参考にしてほしい。
9. 英単語帳|英単語を効率的に覚えるための科学的見地から注意点
英単語を覚える際の13の注意点を紹介する。全て科学的な見地から指摘されている重要なことばかりだ。
9.1. 英単語は最重要語(1000〜2000語)をあなどらないこと!
中学では約1,100語、高校では約2,000語の英単語を最低でも学習する。特に中学で習う1,100語は、今後一番よく出会う最重要語だ。それらの最重要語はあなどらないで「深く」学習する必要がある。
最重要語2000語で通常80%以上をカバーできる。英語に触れる機会が増えてくると、最重要語には何度も出会うことになる。しかし毎回同じ意味や使われ方では出てこない。例えば、「make」は「作る」だが、「行う」「引き起こす」「進む」などの意味にもなる。「make out/うまくやる」「make up/化粧する」など、前置詞や副詞とつくことで色々な意味に派生する。最重要語は深く学習しないと全く意味がないのだ。
9.2. 英単語は発音記号とアクセントの位置を意識すること!
発音記号を知っていれば、実際にその音を聞かなくても、日本語にはない英語の音の発音方法とアクセントの位置が理解できる。そして、その後の学習を効率的にしてくれる。
英語は日本語より発音の数が多いので、日本人には正確に発音することがむつかしく、そのためネイティブ・スピーカーに理解してもらえない。発音できない音は聞き取れないのでリスニング力も向上しない。また、英単語のアクセントの位置を間違って発音すると理解してもらえない可能性が高くなる。発音記号の知識があればコミュニケーション力を効率的にアップすることも可能なのだ。
9.3. 英単語は聴いて覚えること!
英単語は、目で覚えるよりも耳で覚える方がより効率的である。脳科学研究では、人間は進化の過程で目よりも耳を良く活用してきたので、耳の記憶は目の記憶よりも強く心によく残るといわれているのだ。加えて、聴くことにより発音とアクセントの位置も同時に覚えることができる。
9.4. 英単語は発音して覚えること!
英単語はなるべく正確に発音できるように声を出して練習しながら覚えよう。必ず音源がある単語教材を使用して欲しい。発音は唇・舌・喉・顎・肺の動かし方が重要だ。それら5つの動きと、発音記号・アクセントの位置を意識して、なるべく音源とそっくりに発音できるようになるまで繰り返し練習することだ。
自分で正確に発音できるようになると、脳がその音を「音」と認識してくれるのでリスニング力も向上する。加えて、声を出して発音することは自分の声を「聴く」ことにもなるので記憶にも定着しやすい。
9.5. 英単語は例文を聞き、音読し、書き写して覚えること!
英単語は例文で覚えた方が圧倒的に効率的だ。単語の意味だけでなく、文中での使われ方 (前後にどのような単語がくるかなど/コロケーション) も覚えられる。コロケーションの知識はその単語を自分で使う時(話すときなど)に絶対に必要となる。
例文で覚えることが効率的なのは脳科学でも証明されている。ものごとをお互いに関連づければ覚えやすくなるというのがシナプス(神経回路)の性質だからだ。
音読と書き写しが効率的である理由は「目」「耳」「口」「手」を使うからだ。体全体を使って、あらゆる方向から脳を刺激してやると記憶に定着しやすくなる。
9.6. 英単語は派生語・関連語・語形変化を意識すること!
英単語を覚えるときに派生語・関連語を意識すべきことは既に指摘した。語形変化を意識することも忘れないでほしい。これらも、ものごとをお互いに関連づけることになるので、脳科学的にも効率的な英単語の覚え方だ。
派生語とは、例えば「create」では、「creation」「creative」「creativity」などがある。関連語とは、例えば「winter」では「summer」「fall」「spring」「sunny」「windy」「cloudy」「rainy」などがある。語形変化とは、動詞の活用形のことをいう。例えば、規則変化では「live-lived-lived」、不規則変化では「fly-flew-flown」や「go-went-gone」などのことだ。
9.7. 英単語は語源を意識すること!
語源を意識することは、単語と単語を関連づけることになるので、脳科学的観点からも効率的な英単語の覚え方だ。加えて、語源を知っていると知らない英単語の意味を想像しやすくなるので非常に応用が効く。最重要語をマスターした後にチャレンジしてもらいたい。
語源とは、ある単語がその形や意味で使われるようになるに至った、もとの形や意味のことだ。例えば、英単語「port(港)」のもともとは「運ぶ」という意味だった。それに「中に」という意味の「im(in)」がついて「import(中に運ぶ→輸入)」となり、「外に」という意味の「ex」がついて「export(外に運ぶ→輸出)」になった。
下の表にあるように、その他にも「portable」「porter」「transport」など、「port」つながりの単語はまだまだある。このような「in」「ex」「port」などの単語の「部品」が語源だ。
なお、語源初心者の方は「英語の語源|初心者が最初に覚えるべき10の語根と10の接頭語・接尾語」を参考にして頂きたい。
9.8. 英単語は中核のニュアンスをつかむこと!
語彙習得の第一人者であるビクトリア大学(ニュージーランド)のポール・ネーション教授は、1つの単語で複数の意味や訳語がある場合は、すべてに共通する中核的なニュアンスを意識すべきだと指摘している。
例えば、「base」には「土台」「根拠」「中心地」「基地」「野球の塁」などの訳語があるが、「基軸となる場所」という共通するニュアンスを持つことができれば、それらの訳語を全部覚える必要はなくなる。そのニュアンスを理解していれば、文脈から訳語を想像できるようになるからだ。それこそがネイティブ・スピーカーの持つ、その単語に対する感覚なのだ。
9.9. 英単語はやさしい英文を多く読み・聴いて覚えること!
多く読むこと(多読)と多く聞くこと(多聴)は言語を習得する上での基本となる。日本人が英語ができない理由の一つとして、インプット(読むこと・聞くこと)が圧倒的に足りないことを指摘する言語学者は多い。
多読・多聴は、最重要単語の色々な意味、様々な使われ方を知ることができ、深く学ぶことにつながる。そして、単語の意味だけではなく、文中での使われ方(コロケーション)や文法項目も同時に覚えられる。そして、それらを無意識的に理解する能力 (自動化) も向上できる。
使用する素材は、知らない単語、文法・構文が本全体の2〜3%程度含まれたやさしい英文にしよう。第二言語習得研究から、そのような英文を多読・多聴することは、前後関係から類推することにより新たな単語や文法に関する知識も習得することができるといわれている。
9.10. 知らない英単語は意味を想像しながら読むこと!
多読・多聴の際、知らない単語があってもいちいち辞書を引かずに、前後関係や語源などから意味を想像しながら読もう。それを繰り返していると徐々にその単語の中核的なニュアンスを理解できるようになる。ただし、その単語の正確な意味が理解できないとストーリーを追えない場合は意味を調べることをお薦めする。
9.11. 英英辞典を活用すること!
英英辞典を使うことは日本語を介さないで英語を英語のまま理解することにつながる。また、訳語が沢山ある英単語の中核的なニュアンスをつかむことにもつながる。
英語力が向上していくと英単語を日本語の訳語で覚えることの弊害がでてくる。我々英語学習者の究極の目標は英語を英語のまま理解し、英語で考えそのまま英語で表現することだ。いちいち日本語に訳して理解したり、日本語で考えたことを頭の中で英語に訳していたらスムーズな会話はできっこない。英単語を日本語で覚えていると、その「訳す」くせから抜けられなくなる。
TOEICで730点以上とったら、ネイティブ・スイーカーが持っているニュアンスを獲得していくために、英和辞典は卒業して英英辞典を使おう。
9.12. 英単語は自分で使ってみること!
英単語は、何度も読んだり聞いたり(インプット)するより、自分で使ってみる(アウトプット)方が記憶に定着しやすい。この脳の性質は脳科学の世界では常識だ。
最重要語など、使える単語(運用語彙)にする必要がある場合は、例文を暗唱したり、その単語を使って英作文したり、問題を解くなどのアウトプットを繰り返そう。
9.13. 群動詞は個々の単語の意味から推測しながら覚えること!
群動詞(もしくは「句動詞」)とは、「動詞+副詞」または「動詞+前置詞」や「動詞+副詞+前置詞」の形で、まとまって1つの動詞のような働きをする「熟語」だ。動詞単体とは違う色々な意味になるので覚えるのが大変だが、個々の単語の意味からその群動詞の意味を推測しながら覚えることをオススメする。
例えば「stand out」は「目立つ」という意味だが、「stand」は「立つ」、「out」は「外」で、「外に立つ」から「目立つ」と推測しながら覚えると記憶に定着しやすくなる。
なお、英単語を効率的に覚えるためのトレーニング方法などについては「英単語の覚え方|科学的勉強法で暗記を効率化!自動化トレ8選」を参考にしてほしい。
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