『Grammar in Use』シリーズを、英語と英語の学習方法を教えている立場から徹底検証することがこのコラムの目的だ。
The English Clubはこの教材を長年使用してきた。その積み重ねてきた経験と知識をもとに、本書の内容、使い方、効果についてできる限り客観的に、そして徹底的に検証したい。皆さまの英語学習の手助けになれば幸いだ。
『Grammar in Use』シリーズを含む人気の文法書7種類を徹底検証したコラム「英文法の参考書・問題集|おすすめ7種類の文法書を徹底検証!」も参考にしてほしい。
目次
1. Grammar in Use|おすすめ度 by The English Club
「英語を使うための実用的な文法書。おすすめはオリジナル版。音声などの欠点もある。しかし、基礎文法は身につけたが英語が使えないという方には是非チャレンジしてほしい一冊。」
「The world’s best-selling grammar book」の宣伝文句にふさわしい文法書。日本の出版社から出ている文法書とは一線を画す実用的な文法書だ。英語の非ネイティブ・スピーカーが英語を使うために必要な文法を網羅しているといっていい。「かゆいところに手が届く」文法書である。
しかし、この「Grammar in Use」シリーズのうち、おすすめする版は限られる。致命的な欠点もある。そして、対象学習者もある程度限定される。
おすすめは、「English Grammar in Use」。このシリーズはこのイギリス英語版から始まった。元々のオリジナル版だ。そして一番の欠点は音声の使い勝手がよくないこと。残念ながら、最新版(2019年5月現在)の「Fifth Edition」でもあまり改善が見られなかった。対象は、やる気のあるTOEIC500点以上の方向け限定といっていい。
この「Grammar in Use」は欠点もある。しかし、日本の英語学習者用の、英語を使うための文法書としては最適な一冊だ。基礎的な文法の知識はあるが、もっと英語を使えるようになりたいかたは是非チャレンジしてほしい。The English Clubの本書おすすめ度は 4.5/5 だ。
2. Grammar in Use|本書シリーズの宣伝コピーと内容
「Grammar in Use」シリーズは全部で7種類ある。イギリス英語版とアメリカ英語版、そしてアメリカ英語版の日本語訳版の3種類あり、レベルも初級・中級・上級と3種類ある。
最初に発行された「English Grammar in Use」(イギリス英語版中級編)が「オリジナル版」だ。ここから派生して全7種類となった。
なお、上の図中のTOEICの点数のレベル感は、「マーフィーのケンブリッジ英文法」の帯に記載されていたものを転載した。The English Clubのレベル感とは若干異なる。
本書に記載されている宣伝コピー(売り文句)の一部をそのままご紹介しよう。そして、含まれる内容もご紹介する。一部The English Clubによる日本語訳も付けた。ただし、アメリカ英語版の初級編と中級編はイギリス英語版をほぼ同じなので割愛した。
2.1. 「English Grammar in Use 5th Edition」(イギリス英語版中級編(オリジナル版))
eBook付 Raymond Murphy (著)[Cambridge University Press]¥4,000程度
写真は「eBook」と「練習問題の答え」が付いた通常版だが、この他に「eBook」が付いていないもの、「eBook」と「練習問題の答え」の両方が付いていないものがある(全3種類)。
2.1.1. 「English Grammar in Use 5th Edition」の宣伝コピー
Raymond Murphy’s English Grammar in Use is the first choice for intermediate learners and covers all the grammar you will need at this level. Its clear explanations and practice exercises have helped millions of people around the world improve their English. It is perfect for self-study but can also be used by teachers as a supplementary book in classrooms.
(English Grammar in Useは中級の学習者に最適だ。このレベルに必要な文法を全てカバーしている。明確な説明と練習問題は世界中の人の英語の向上を助けてきた。独学に最適だが、クラスの補助教材としても使える。)
Use the study guide to help you find the units you need to study.
(あなたが学習が必要なユニットを見つけるために「Study Guide」を使おう。)
Read the grammar explanations on the left-hand page and complete the exercises on the right.
(左のページで説明を読んで、右のページで練習。)
The book will be useful for you if you are not sure of the answers to questions like these:
(下記の様な質問の答えがあいまいな方向けに最適な本です。)
・What is the difference between “I did” and “I have done”?
(“I did”と“I have done”の違いは?)・When do we use “will” for the future?
(未来の“will”はどの様なとき使う?)・What is the structure after “I wish”?
(“I wish”の次に続く形は?)・When do we say “used to do” and when do we say “used to ding”?
(“used to do”と“used to ding”はいつ使う?)・When do we use “the”?
(“the”はいつ使う?)・What is the difference between “like” and “as”?
(“like”と“as”の違いは?)
2.1.2. 「English Grammar in Use 5th Edition」の内容
- Present and past(現在形と過去形):Unit 1〜6
- Present perfect and past(現在完了形と過去形):Unit 7〜18
- Future(未来):Unit 19〜25
- Modals(法助動詞):Unit 26〜37
- if and wish(if と with ):Unit 38〜41
- Passive(受動態):Unit 42〜46
- Reported speech(間接話法):Unit 47〜48
- Questions and auxiliary verbs(疑問文と助動詞):Unit 49〜52
- -ing and to…(-ingとto〜):Unit 53〜68
- Articles and nouns(冠詞と名詞):Unit 69〜81
- Pronouns and determiners(代名詞と限定詞):Unit 82〜91
- Relative clauses(関係詞節):Unit 92〜97
- Adjective and adverbs(形容詞と副詞):Unit 98〜112
- Conjunctions and prepositions(接続詞と前置詞):Unit 113〜120
- Prepositions(前置詞):Unit 121〜136
- Phrasal verbs(句動詞):Unit 137〜145
2.2. 「Essential Grammar in Use 4th Edition」(イギリス英語版初級編)
eBook付 Raymond Murphy (著)[Cambridge University Press]¥4,000程度
写真は「eBook」と「練習問題の答え」が付いた通常版だが、この他に「eBook」が付いていないものがある。
2.2.1. 「Essential Grammar in Use 4th Edition」の宣伝コピー
Clear examples and easy-to-follow exercises make Essential Grammar in Use perfect for independent study. Used by millions of learners around the world, it covers all the grammar you will need at this level.
(クリアな例文と理解しやすい練習問題が、「Essential Grammar in Use」を独学用の完璧な教材にしています。世界中の数百万の英語学習者に使われており、このレベルで必要な文法項目の全てをカバーしています。)
The book is for elementary learners, i.e. learners with very little English, but not for complete beginners. It is intended mainly for elementary students who are beyond the early stages of a beginners’ course. It could also be used by low-intermediate learners whose grammar is weaker than other aspects of their English or who have problems with particular areas of basic grammar.
(この本は初心者向けです。例えば、ほとんど英語を知らない方向けですが、全くの初学者向けではありません。全くの初学者向けコースを超えたレベルの方向けです。中級者の下のレベルの方で文法が苦手な方や、基本文法の特定の部分が苦手な方向けにも使用できます。)
2.2.2. 「Essential Grammar in Use 4th Edition」の内容
- Present(現在形):Unit 1〜9
- Past(過去形):Unit 10〜14
- Present perfect(現在完了形):Unit 15〜20
- Passive(受動態):Unit 21〜22
- Verb forms(動詞の形):Unit 23〜24
- Future(未来表現):Unit 25〜28
- Modals, imperative, etc.(法助動詞、命令形など):Unit 29〜36
- There and it(There と it):Unit 37〜39
- Auxiliary verbs(助動詞):Unit 40〜43
- Questions(疑問文):Unit 44〜49
- Reported speech(関節話法):Unit 50
- -ing and to…(-ing と to〜):Unit 51〜54
- Go, get, do, make and have(Go, get, do, make と have):Unit 55〜58
- Pronouns and possessives(代名詞と所有格):Unit 59〜64
- A and the(A と the):Unit 65〜73
- Determiners and pronouns(限定詞と代名詞):Unit 74〜84
- Adjectives and adverbs(形容詞と副詞):Unit 85〜92
- Word order(語順):Unit 93〜96
- Conjunctions and clauses(接続詞と節):Unit 97〜103
- Prepositions(前置詞):Unit 104〜113
- Phrasal verbs(句動詞):Unit 114〜115
2.3. 「マーフィーのケンブリッジ英文法(中級編)第4版」
Raymond Murphy (著)[Cambridge University Press]¥2,800円+税
2.3.1. 「マーフィーのケンブリッジ英文法(中級編)第4版」の宣伝コピー
マーフィーのケンブリッジ英文法(中級編)第4版」は、世界的ベストセラー Grammar in UseシリーズIntermediateの日本語版である。中級レベル(B1-B2)の学習者を対象とし、このレベルで必要とされる全ての文法が含まれている。使われる場面や文脈に基づいて文法知識を整理することで、実際に使う状況を想定して学習を進めることができ、学習者は自信を持って英語で話す力と書く力を身につけることができる。さらに、ケンブリッジ英検、TOEICやTOEFL、IELTS(International English Language Testing System:国際英語力試験)、その他の標準テスト対策用としても最適である。
本書は「中級」レベルの学習者を対象に書かれています。また、中学校から高校1、2年程度の英語の初級文法を終えて、さらに英文法を学びたいと考えている「中級」レベルの学習者が「英語で言ってみたい。でも間違っていないか心配」と思うような構文を多く取り上げています。さらに、英語をそれなりに使えるものの、もっと文法を詳しく学びたいと考えている「上級」レベルの学習者にも役立ちますが、英語を学び始めた小学生や中学生のような「初級」の学習者には向いていません。
2.3.2. 「マーフィーのケンブリッジ英文法(中級編)第4版」の内容
- 現在形と過去形:Unit 1〜6
- 現在完了形と過去形:Unit 7〜17
- 未来形:Unit 18〜24
- 法助動詞:Unit 25〜35
- if と with :Unit 36〜39
- 受動態:Unit 40〜44
- 間接話法:Unit 45〜46
- 疑問文と繰り返しを避ける助動詞:Unit 47〜50
- 動名詞 (-ing) と不定詞 (to + 動詞の原形):Unit 51〜66
- 冠詞と名詞:Unit 67〜79
- 代名詞と限定詞:Unit 80〜89
- 関係詞節:Unit 90〜95
- 形容詞と副詞:Unit 96〜109
- 接続詞と前置詞:Unit 110〜117
- 前置詞:Unit 118〜133
- 句動詞:Unit 134〜142
2.4. 「マーフィーのケンブリッジ英文法(初級編)第4版」
Raymond Murphy (著)[Cambridge University Press]¥2,800円+税
2.4.1. 「マーフィーのケンブリッジ英文法(初級編)第4版」の宣伝コピー
マーフィーのケンブリッジ英文法(初級編)第4版」は、世界的ベストセラー Grammar in UseシリーズBasicの日本語版である。初級レベル(A1-A2)の学習者を対象とし、このレベルで必要とされるすべての文法が含まれている。使われる場面や文脈に基づいて文法知識を整理することで、実際に使う状況を想定して学習を進めることができ、学習者は自身を持って英語で話す力と書く力を身につけることができる。さらに、TOEICやTOEFL、IELTS(International English Language Testing System:国際英語力試験)、その他の標準テスト対策用としても最適である。
本書は、初級から中級に入ったレベルの人たちを対象に書かれています。「中学校程度の英語の初級文法は終えたものの、英語で会話をしたり、自分自身のことについて話したりすることができない。初級レベルの文法や表現を用いて、もっと英語を使ってみたい」と考えている学習者を対象としています。本書では、英語を実際に使う際に必要な文法事項を多数取り上げています。
2.4.2. 「マーフィーのケンブリッジ英文法(初級編)第4版」の内容
- 現在形:Unit 1〜9
- 過去形:Unit 10〜15
- 現在完了形:Unit 16〜19
- 受動態:Unit 20〜21
- 動詞の形:Unit 22〜23
- 未来表現:Unit 24〜26
- 法助動詞と命令形:Unit 27〜34
- There と it:Unit 35〜37
- 助動詞:Unit 38〜41
- 疑問文:Unit 42〜47
- 関節話法:Unit 48
- -ing と「to +動詞の原形」:Unit 49〜52
- Go, get, do, make, have(基本的な動詞を用いた表現):Unit 53〜56
- 代名詞と所有格:Unit 57〜62
- A と the:Unit 63〜71
- 限定詞と代名詞:Unit 72〜82
- 形容詞と副詞:Unit 83〜90
- 語順:Unit 91〜94
- 接続詞と節:Unit 95〜100
- 前置詞:Unit 101〜111
- 句動詞:Unit 112〜113
2.5. 「Advanced Grammar in Use 3rd Edition」(イギリス英語版上級編)
eBook付 Martin Hewings (著)[Cambridge University Press]¥4,000程度
写真は「eBook」と「練習問題の答え」が付いた通常版だが、この他に「eBook」が付いていないもの、「eBook」と「練習問題の答え」の両方が付いていないもの、そして「eBook」の代わりに「CD-Rom」がついているものがある。
2.5.1. 「Advanced Grammar in Use 3rd Edition」の宣伝コピー
Advanced Grammar in Use Third Edition meets the advanced-level learner’s needs with comprehensive grammar coverage and a user-friendly layout.
2.5.2. 「Advanced Grammar in Use 3rd Edition」の内容
- Tenses:Unit 1〜8
- The future:Unit 9〜14
- Modals and semi-modals:Unit 15〜20
- Linking verbs, passives, questions:Unit 21〜27
- Verbs complementation: what follows verbs:Unit 28〜31
- Reporting:Unit 32〜39
- Nouns:Unit 40〜43
- Articles, determiners and quantifiers:Unit 44〜52
- Relative clauses and other types of clause:Unit 53〜59
- Pronouns, substitution and leaving out words:Unit 60〜65
- Adjectives and adverbs:Unit 66〜78
- Adverbial clauses and conjunctions:Unit 79〜87
- Prepositions:Unit 88〜94
- Organising information:Unit 95〜100
3. Grammar in Use|学習効果分析 by The English Club
「Grammar in Use」シリーズの7冊について、それぞれの内容、使い方、効果について検証してみよう。
3.1. 「English Grammar in Use」と「Grammar in Use – Intermediate」の学習効果分析
イギリス英語中級版「English Grammar in Use」(オリジナル版)と、アメリカ英語中級版「Grammar in Use – Intermediate」は、版(Edition)が異なるが内容はほぼ同じだ。
The English Club では、TOEIC500点以上の方で、文法の学習が必要だと判断した場合は、特別な理由がない限り、オリジナル版の「English Grammar in Use」を使用している。従って、ここではこの「オリジナル版」の学習効果について分析する。なお、アメリカ英語版を使わない理由は下記の「ご参考」でご説明しよう。
3.1.1. 英語を使うための実用文法書
「オリジナル版」は受講者のレビューの結果が非常よい。絶賛する方も少なくない。TOEIC800点以上の方にも使用するケースも多いが、そのような方達にとっても、英語を使う上で非常に役にたつ文法が多く取り上げられているからだ。
加えて、英語の文法を英語で学ぶことになるので、必然的に多くの英語に触れることになる。英文法は日本語で理解しながら学習した方が効率的だという考え方も確かにある。しかし、そもそも文法を学習する目的を忘れてはならない。使える英語を身につけるためだ。そのために一番重要なことは多くの英語に触れること。多くの英語に触れながら、英語を使うための文法を学習できるのだから一石二鳥だ。TOEICのSection5〜7全ての対策にもなるだろう。
3.1.2. 欠点は音声と取っつきにくさ
欠点もある。一番の欠点は音源が使いづらいことだ。最新のFifth Editionの通常版では eBookが無料でついてくる。本書に記載されているアクセス・コードでサイトにログインして利用するのだが、まずログイン・ページにアクセスするだけでも時間がかかる。やっとログインできて、音源を聞こうとしても再生されたり、されなかったりする。非常に重いのだ。ダウンロードはできない。聞くことは学習を圧倒的に効率的にしてくれるので本当に残念だ。
二つ目の欠点は、取っつきにくい印象があること。全て英語で、しかもぎっしりと書かれており、2ページのユニットが145もある。見ただけであきらめる人もいるだろう。しかし、内容はそれほど難しくないので是非チャレンジしてほしい。特に説明文は平易な英語で書かれているので、TOEIC 500点とっていれば、まず問題はないだろう。
3.1.3. オリジナル版は文法学習の最終章
TOEIC 500点以下の方は、まずは日本語で書かれた文法書(日本の出版社のものをおすすめする)で基礎的なこと(高校1年くらいまでの文法)を理解してから、このオリジナル版に挑戦してほしい。
このオリジナル版を仕上げたら文法の学習は終了したと考えていい。あとは多くの英語の触れること、そして、アウトプットを重ねて自分のものにしていくことだ。ただし、TOEICの点数を満点近くまで効率的にあげたいのであれば、更にTOEIC文法対策は必要かもしれない。
3.1.4. ご参考|イギリス英語版とアメリカ英語版の選択について
イギリス英語版とアメリカ英語版の選択は、あなたの好みの問題だ。とはいいつつ、The English Clubはイギリス版をおすすめする。その理由は3つある。
1つ目は、イギリス英語版の方が版が新しいということ。イギリス英語版の最新版(2019年5月現在)は「Fifth Edition」(第5版)だが、アメリカ英語版は「Fourth Edition」(第4版)だ。理由はイギリス英語版をアメリカ英語版に修正して出版しているからだ。イギリス英語版の方が進化が速いということ。
2つ目の理由は、アメリカ英語版はイギリス英語からアメリカ英語に修正しているため、若干ちぐはぐな印象を受けるところがあるということ。やはりオリジナル版に勝るものはない。
3つ目の理由はアメリカ英語が簡略化していることにある。アメリカは移民の国だ。英語の非ネイティブの人たちがどんどん入ってくる。そうすると英語自体も変化しやすくなる。簡単になっていくのはある意味当然だ。一方で、イギリスは伝統を重んじる国だ。英語もアメリカに比べてあまり変化しない。そうすると、アメリカ英語は理解できるが、イギリス英語は理解できないということが起こり得る。その逆は圧倒的に少ない。
3.2. 「Essential Grammar in Use」と「Basic Grammar in Use」の学習効果分析
イギリス英語初級版「Essential Grammar in Use」と、アメリカ英語初級版「Basic Grammar in Use」の内容はほぼ同じだ。2019年5月時点では、両方とも「Fourth Edition」である。
The English Clubでは、TOEIC500点未満の受講者にこの初級版を使用していたことがある。しかしながら、今は使用していない。その理由は文法レベルと英語レベルにズレがあるので使いにくいからだ。
3.2.1. 「初級編」の問題点は文法レベルと英語レベルのズレ
この「初級編」は、「be動詞とは」という初歩的なところから学ぶための文法書だ。しかしながら、全て英語で書かれている。そのような初歩的なことを学ぶ必要のある方が、説明や例文、問題文の英語を自力で読めるだろうか?The English Clubでの経験上、非常に難しいと言わざるを得ない。
The English Clubでは、文法は自主学習が基本だ。どんなにやる気がある受講生でも、難しすぎるとモーティベーションが続かなくなる。かといって自力で読んでいけそうな方に使用すると、今度は文法項目が簡単すぎるという問題が出てくる。
3.2.2. 「初級編」の対象者は日本人ではない?
この「初級編」は、例えば英語を母語としないヨーロッパの方達には最適な文法書だと思われる。英語を母語としないが母語の単語が英語のそれと似ているため、単語を適当に並べれば英語も通じるという方が一から英文法を学ぶにはいい。日本人が対象ではない。
日本人がこの「初級編」レベルの文法を学習するには、日本語で学習した方が圧倒的に効率的だ。
3.3. 「マーフィーのケンブリッジ英文法」「初級編」「中級編」の学習効果分析
「マーフィーのケンブリッジ英文法」の「初級編」は、アメリカ英語初級版「Basic Grammar in Use」の説明部分を日本語に訳したもの。「中級編」は、アメリカ英語中級版「Grammar in Use – Intermediate」の説明部分を日本語に訳したものだ。
この2つの「日本語版」も中途半端な感が否めない。The English Clubではこの2冊も以前使用していたが、今は使用していない。理由は3つある。一つは、直訳が多いので非常に理解しにくいところがあること。誤訳も少なくない。二つ目はレイアウトに無理があること。三つ目は非効率なこと。
3.3.1. 「日本語版」は理解しづらい
「初級版」「中級版」ともに、レイアウトを全く変更しないで、ただ単に説明文と問題文を日本語に訳しただけのものなので、非常に理解しづらくなってしまっている。直訳がわかりづらくしているところもあれば、直訳では意味が通じないところは説明が長くなってしまい、非常に「ごちゃごちゃ」している。レイアウトを全く変えていないからだ。無理をしている印象で非常に使いづらい。
「初級版」レベルの文法を学習する必要がある方は、まずは日本の出版社が出している文法書で基礎を固めてから、オリジナル版に挑戦することをおすすめする。
3.3.2. 「日本語版」の「中級版」を使う理由はない
「中級版」レベルの文法を学習する英語力(TOEIC500点以上)があれば、日本語版ではなく英語で書かれたものを使用した方が圧倒的に効率的だ。文法だけではなく、定型表現や言い回しも覚えられる。何より多くの英文に触れることができる。わざわざ日本語版を使用する理由がない。
3.4. 「Advanced Grammar in Use」の学習効果分析
イギリス英語版上級編「Advanced Grammar in Use」はアメリカ英語版や日本語版はない。
The English Clubでは、特定の場合に限り、この「Advanced Grammar in Use」を使用している。非常にレベルの高い文法を扱っているからだ。TOEICで満点取れる方で、もっと深く文法を知りたいという方向けだ。
ビジネス・パーソンの場合、仕事で使える英語が目的であれば、オリジナル版をマスターすれば文法の学習は終了と考えていい。
ちなみに、この「Advanced Grammar in Use」のみ、著者が Raymond Murphyではない。よって、シリーズの他の版とは若干毛色が異なる。
4. Grammar in Use|おすすめ使い方 by The English Club
Grammar in Useシリーズのおすすめ使い方をご紹介する。
4.1. 最初から順番に学習する
本シリーズはユニット別に文法項目が分かれている。版によってユニットの数は異なるが、オリジナル版は全145ユニットだ。基本、どのユニットから始めてもよい作りになっている。しかしながら、The English Clubは最初から順番に学習していくことをおすすめしている。一度全体を網羅した方がよいということと、網羅するには最初から順番に学習した方が効率的だからだ。
もし、自分の弱いところだけをカバーしたい場合は、巻末にある「Study Guide」が役立つ。全部で161の問題を解いてみて、間違ったところのユニットを学習すればよい。
4.2. 左を読んで右で定着
1つのユニットは見開き2ページからなる。左のページが文法項目の説明で、右のページがエクササイズになっている。
左のページの説明を読んで理解してから、左のページで問題をといて定着させるのが一般的、かつ、おすすめのやり方だ。簡単に感じる場合は、問題を最初に解いて、間違ったところの解説を読む順番でもよい。
4.3. 説明は必ず音読!
説明を読む際には、できる限り声を出して「音読」してほしい。音読の効果を否定する言語学者はいない。英語回路の土台作りなどの様々な効果がある。詳細を知りたい場合は「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」を参考にしてほしい。eBookの音声を使用できれば、なるべく音声も聞き、発音を確認しながら、繰り返し音読してほしい。
4.4. 森を見てから枝葉を見よう!
最初は森を見ることが肝心だ。枝葉は後でいい。理解できないところや、途中で忘れてしまうこともあるだろう。しかし、あまり気にしないでどんどん先に進んだ方がよい。枝葉は森を見てからの方が理解しやすい場合も多い。
オリジナル版は全部で145ユニットなので1日1ユニットやれば半年以内で終了する。その後は気になったところを時折見返せばよい。
なお、文法の勉強方法については、「英文法勉強法|科学的トレーニング法8選と8つの基本的な注意点」も参考にしてほしい。
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そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。