「英会話ぜったい音読」シリーズを、英語と英語の学習方法を教えている立場から徹底検証することがこのコラムの目的だ。
The English Clubはこの教材を長年使用してきた。その積み重ねてきた経験と知識をもとに、本書の内容、使い方、効果についてできる限り客観的に、そして徹底的に検証したい。皆さまの英語学習の手助けになれば幸いだ。
目次
1. 英会話ぜったい音読|おすすめ度 by The English Club
「冒頭の國弘氏自身の音読の説明は一読の価値あり。題材が大人向けではないためモーティベーション維持に苦労。英語回路作りに特化した初級・中級者のトレーニングにはおすすめ。」
2001年の初版発行以来、音読の有効性や重要性を世に知らしめてくれた先駆的な教材。アポロ11号の月面着陸を伝えるテレビ中継番組の同時通訳を務め、「同時通訳の神様」と言われた國弘正雄氏が編者だ。
冒頭の國弘氏自身の、音読の重要性に関する記述は、英語学習者のみならず、英語教育に従事する誰もが納得する内容だろう。事実、筆者も今なお勉強させて頂いている。英語の学習をこれから始めようとされている方にも是非一度読んで頂きたい。
音読の教材としても優れていると思うが、一つ指摘するとすれば、題材が大人向けではないということだ。その理由は、本書に掲載されている英文が、すべて中学と高校の英語の教材のものを使用しているからだ。そのことが、大人の英語学習の鍵となるモーティベーションの維持を困難にしていることに加え、学習の効率性も低くしている。
英語を学習する際の英文素材には、今後自分が使うだろう単語や表現が多く含まれていることが理想だ。そういった教材を使用し、音読などのトレーニングを繰り返し行うことにより、本書も指摘している「英語回路」を構築することに加え、使える表現も覚えることができる。本書の題材では、使える表現を覚えるというところが弱いといわざると得ない。
2. 英会話ぜったい音読|本書シリーズの宣伝コピーと内容
英会話ぜったい音読は、上記の写真にある通り全部で6シリーズある。そのうち「続」を除く3冊の宣伝コピー(売り文句)の一部をそのままご紹介しよう。そして、含まれている内容もご紹介する。
なお、下記は【挑戦編】に掲載されているTOEICスコア別お薦め「英会話ぜったい音読」だ。
現在のTOEICスコア | 教科書のレベル | お薦め教材 |
---|---|---|
470点までの人 | 中学校1・2年生 | 【入門編】 |
470〜600点の人 | 中学校3年生 | 【標準編】 |
600点以上の人 | 英語I(高校) | 【挑戦編】 |
2.1.「英会話ぜったい音読【入門編】」
2.1.1.「英会話ぜったい音読【入門編】」の宣伝コピー
音読と筆写という「筋トレ」を続ければ、読むだけのものから「使える英語」に転換できる。練習を重ねて「英語の基礎回路」を作ろう。
本書は『英会話ぜったい音読』シリーズの入門編で、音読トレーニングで頭の中に英語の基礎回路を作るものです。はじめて「音読トレーニング」をされる方々を対象に、レッスンの題材は、中学校の1、2年生用の英語教科書を使用しました。本書後半に収録されている英文テキストを、「あまり引っかからずに通読でき、大体意味がとれる…」、本書はそんな段階の方々にお薦めします。「学校で一応勉強したことがあるけど、使える英語が身についていない…」、「もう何年も英語から遠ざかっている…」、そんな方でも安心して取り組むことができます。本書をマスターされたら、次は「英会話ぜったい音読 標準編」(レッスンの題材は中学校3年生用英語教科書)にお進みください。
2.1.2.「英会話ぜったい音読【入門編】」の内容
2001年4月現在、文部省検定済みの中学校1、2年生用の英語教科書…14点の中から、…12レッスン(中学校1年生用より2レッスン、中学校2年生用より10レッスン)を厳選…。
付属のCDの音源は、各々の教科書会社(Lesson 7を除く)からご提供いただいたものをそのまま収録しました。
目次:
- 「Lesson 1:ハンバーガーショップで」(東京書籍株式会社)
- 「Lesson 2:Welcome Aboard」(学校図書株式会社)
- 「Lesson 3:Halloween」(光村図書株式会社)
- 「Lesson 4:Ainu」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 5:The United Kingdom」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 6:Gestures Talk」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 7:Good for the Earth」(学校図書株式会社)
- 「Lesson 8:The Hot Dog」(光村図書株式会社)
- 「Lesson 9:Here Comes the Elephant Train!」(中教出版株式会社)
- 「Lesson 10:A Dream Comes True」(開隆堂出版株式会社)
- 「Lesson 11:John Manjiro」(教育出版株式会社)
- 「Lesson 12:The Haiku」(開隆堂出版株式会社)
2.2.「英会話ぜったい音読【標準編】」
2.2.1.「英会話ぜったい音読【標準編】」の宣伝コピー
英語を身につけるに王道は音読によるトレーニング。中3の教科書を繰り返し音読して、「英語回路」を作ろう!
2.2.2.「英会話ぜったい音読【標準編】」の内容
2000年1月現在、文部省検定済みの中学校3年生用の英語教科書…7点の…中から、…12レッスンを厳選…。
付属のCDの音源は、各々の教科書会社(中教出版株式会社を除く)からご提供いただいたものをそのまま収録しました
目次:
- 「Lesson 1:The Internet」(学校図書株式会社)
- 「Lesson 2:The Development of Computers」(開隆堂出版株式会社)
- 「Lesson 3:A Blend of Cultures」(開隆堂出版株式会社)
- 「Lesson 4:A Famous Old Town」(教育出版株式会社)
- 「Lesson 5:A Pajama Party」(東京書籍株式会社)
- 「Lesson 6:Making a Speech」(中教出版株式会社)
- 「Lesson 7:Mika’s Speech」(光村図書株式会社)
- 「Lesson 8:Let’s Have a Debate!」(中教出版株式会社)
- 「Lesson 9:Ha, ha, ha…」(学校図書株式会社)
- 「Lesson 10:On the Top of the World」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 11:Protect Our World」(教育出版株式会社)
- 「Lesson 12:I Have a Dream」(株式会社三省堂)
2.3.「英会話ぜったい音読【挑戦編】」
2.2.3.「英会話ぜったい音読【挑戦編】」の宣伝コピー
中学レベルが身についたら、次は高1レベルへとステップアップだ。英語で議論できる「英語の上級回路」をこの一冊でものにしよう!
本書は『英会話ぜったい音読』シリーズの1冊で、音読トレーニングによって、英語の上級作りをするためのものです。トレーニングの題材は、「英語I」の検定済高校教科書から厳選したものです。本書後半に収録されている英文テキストを、「あまり引っかからずに通読出来、大体意味がとれる…」、本書はそんな段階の方々にお薦めします。
2.2.4.「英会話ぜったい音読【挑戦編】」の内容
本書には、「英語I」の検定済高校教科書から、…10レッスンを厳選…。
付属のCDの音源は、各々の教科書会社(レッスン2を除く)からご提供いただいたものをそのまま収録しました。
目次:
- 「Lesson 1:The Eurailpass」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 2:So Many Countries, So Many Maps」(文英堂)
- 「Lesson 3:The Soybean Road」(文英堂)
- 「Lesson 4:”Don’t Work Too Hard”」(大修館書店)
- 「Lesson 5:Freedom and Equality in the American Family」(開隆堂出版株式会社)
- 「Lesson 6:Tales from Tsurezuregusa」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 7:”The World and You”」(東京書籍株式会社)
- 「Lesson 8:Do Your Best While You Can」(文英堂)
- 「Lesson 9:Computers Catch Cold」(株式会社三省堂)
- 「Lesson 10:Bikini」(開隆堂出版株式会社)
3. 英会話ぜったい音読|学習効果分析 by The English Club
【入門編】【標準編】【挑戦編】のそれぞれの内容、使い方、効果について検証してみよう。
3.1.「英会話ぜったい音読【入門編】」の学習効果分析
The English Clubでは、大人のビジネスパーソンの方達を対象として英語を教えているが、TOEICの点数でいうと、400点以下の方にこの【入門編】を使用することが多い。使用する理由は、他によい教材がないからだ。
単語や文法の難易度、そして音源のスピードに関しては、400点以下の方たちにはちょうどよいというレビューを多くの受講生から頂いている。しかしながら、内容がビジネスパーソンの方達にはつまらないため、モーティベーションを維持することが一番の課題となる。加えて、ビジネスで直接使える表現もあまり載っていないため、ビジネス表現を覚えるための教材を別途準備しなければならない。
日本で入手できる英語教材は、そのほとんどが、「英語力=知的レベル」を前提として作られているため、知的レベルは高いが、英語初心者のビジネスパーソン向けの教材選定に苦労しているのが実情だ。
本書の使用方法については、その詳細が本書の中に記載されている。そのやり方は、我々が提唱している「22の自動化トレーニング」と重なるところがある。単に音読トレーニングだけで終わらせずに、スピーキングまで持っていっているのは評価できるが、内容が大人向けではないため、その効果には疑問が残る。英語回路の土台作りにはよい教材だが、定型表現や言い回しを覚えることを目的する内容ではない。
音読の効果を疑う言語学者や英語教育者はいない。我々の経験からも、この教材はその入門には適した一冊だ。本書の記載通りにトレーニングを続ければ、英語回路の土台を作るという目的については、必ず結果は出るだろう。
しかし、音読だけやっていれば英語力がどんどん上がるわけではない。当たり前だが、単語を覚えて、文法も学習しなければならない。発音についても、音源をまねているだけでは非効率だ。それらについては別途学習を進めて頂きたい。
3.2.「英会話ぜったい音読【標準編】」の学習効果分析
The English Clubでは、この【標準編】は現在ほとんど使用していない。単語や文法のレベルは、ターゲット層のTOEIC500点レベルの方々にはちょうどよいので、以前は使用しており、題材の内容以外については、レビューの評価も高かった。なぜ使用するのをやめたのか。理由は2つある。
【標準編】のターゲット層であるTOEIC500レベルであれば、よく使用される定型表現や言い回しも同時に覚えられて、音読やシャドーイング等のトレーニングにも使える教材が他に存在するというのが一つの理由だ。もう一つの理由は、音源のスピードだ。TOEIC500以上に方々にとっては若干スピードが遅いと感じてしまう。
このレベルの方々には、より実践的に、使える表現や言い回しが多く含まれたもので、かつ、単語や文法はやさしめでも、スピードはナチュラルに近いものを使用した方がレビューも高く、結果も出ている。加えて、モーティベーションも維持しやすいという意見も多い。
3.3.「英会話ぜったい音読【挑戦編】」の学習効果分析
The English Clubには、【入門編】から【標準編】【挑戦編】と、自分の意思で続けられた受講生も過去いらしたが、受講生からの要望がない限り、この【挑戦編】は使用していない。ターゲット層であるTOEIC600点程度あれば、教材の選択肢は「ぐっと」広がるからだ。英語レベルと知的レベルが一致する教材も出てくる。
シリーズを通してコンセプトは素晴らしく、筆者も多くを勉強させて頂いた教材だが、題材が中学・高校の教科書を使用しているというところが、どうしても足かせになっていると感じる。
4. 英会話ぜったい音読|おすすめ使い方 by The English Club
英会話ぜったい音読シリーズのおすすめ使い方をご紹介する。
The English Club では、単語・文法・発音の3つの基本知識を定着させ、そして無意識的に使えるようにするためのトレーニングとして、22のトレーニングからなる「自動化トレーニング」を提唱している。そのうち、「英会話ぜったい音読」シリーズにおすすめの10種類のトレーニングのやり方をご紹介したい。
それぞれ単独でも効果はあるが、下記の流れで行うとより効果が高い。繰り返し行って頂くことが前提だが、2回目からは、全てを行う必要はない。最終的には音読とシャドーイングのみを繰り返そう。
なお、それぞれのトレーニングを行う際は、意味(内容)もしくは発音のどちらかを意識して行って欲しい。下記のどのトレーニングでも、同時に両方を意識しながら行うことは不可能だからだ。どちらかに意識を集中して、何度も繰り返し行ってほしい。
4.1. リスニング(Listening)
まずは音源を聴いてみよう。テキストは見ない。聴く前も見ないでおこう。どの程度聞き取れるか確認する。これ以上聞き取れないというくらいまで繰り返し聞いてみよう。
4.2. アイ・シャドーイング(Eye-shadowing)
テキストを目で追いながら音源を聴く。リスニングで聞き取れなかったところ、意味が理解できなかったところに注意しながら何度か聴いてみよう。テキストを見ても理解できないところ、発音が難しいところはチェックしておこう。
4.3. 意味確認(Vocabulary & Grammar check)
テキストの意味(内容)を確認する。アイ・シャドーイングで理解できなかったところは、辞書や文法書で調べて理解しておこう。英文全体を通してできる限り完璧に理解しておくこと。理解できないまま次のトレーニングに進むと効果が低くなる。
4.4. リップ・シンク(Lip-sync)
音源を聴きながら、テキストを目で追い、同時に音源にぴったりと合わせるように唇(Lip)を同調(Sync)させて動かす。口パクだ。発音を確認することが第一の目的なので、アイ・シャドーイングのときにチェックした難しいところに意識を集中しながら繰り返しやってみよう。
4.5. オーバーラッピング(Overlapping)
リップ・シンクと同じ要領で、今度は声を出す。ここではスピードに慣れることが第一の目的だ。発音に意識を集中して何度かやってしてみよう。ついていけない場合は発音に問題があることが多い。その場合は、一旦リップ・シンクに戻って発音を確認してから再度オーバーラッピングに挑戦しよう。
なお、英語の発音についての詳細は、まずは「英語の発音記号|日本人が苦手な母音と子音を14のコツで矯正しよう」から読んで頂けるとよいだろう。
4.6. リピーティング(開本)(Repeating – book open)
テキストを目で追いながら(開本)音源を一文聴き、一旦音源を止めて音読する。自分で正確に発音できるようになることが第一の目的だ。スピードはあまり意識する必要はない。
4.7. 音読(Reading aloud)
自力で音読してみる。できるだけ大きな声ではっきりと発音しながら読んでいこう。発音やスピードを音源とそっくりになるように何度も練習しよう。
なお、音読のやり方と効果についての詳細は、「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」も参考にしてほしい。
4.8. ルックアップ&セイ(Look-up & say)
いよいよテキストから目を離す。テキストを目で追いながら音源を一文聴き、一旦音源を止めて、顔をあげて(ルックアップ)暗唱(セイ)する。発音に自信がある場合は、音源を使わずに、黙読してから顔をあげて(ルックアップ)暗唱(セイ)する方法でもよい。
4.9. リピーティング(閉本)(Repeating – book closed)
スクリプトを見ない(閉本)で音源を一文聴き、一旦音源を止めて暗唱する(リピートする)。うまくできない場合は、一旦、音読やルックアップ&セイに戻ってから、再度閉本リピーティングに挑戦しよう。
4.10. シャドーイング(Shadowing)
音源の後1〜2語遅れて、影(shadow)の様に音源通りに声に出して追っかけていく。テキストは見ない。うまくできない場合は、一旦、音読やルックアップ&セイに戻ってから、再度閉本シャドーイングに挑戦しよう。
シャドーイングのやり方と効果についての詳細は、「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」も参考にしてほしい。
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