英語の音読トレーニングは、4技能の能力アップに確かな効果がある。第二言語習得研究の知見とThe English Clubの経験からの結論だ。ただし、正しいやり方でトレーニングを行なった場合に限る。科学的な実験により効果が認められたやり方とコツをご紹介しよう。
音読には3つのやり方があり、それぞれ効果が異なる。そして、効果を意識してやれば結果も変わってくる。是非ここでご紹介することを実践して、その効果を実感して頂きたい。
目次
1. 英語の音読とは?
英語の音読は、英語を習得するための基本中の基本のトレーニングだ。京都外大の英語教育学教授の鈴木氏は、「第二言語としての英語習得において「音読」こそが全ての基本。」と断言している。「英語習得の王道は「音読」」と表現するのは、同時通訳の神様といわれ、英エディンバラ大学客員研究員だった國弘氏だ。
音読とは、声を出して英文を読むこと。ただそれだけだが、「実はどんな目的でどのような方法で実施するかによって効果はがらりと変わる」。これは関西学院大学応用言語学教授の門田氏の言葉だが、第二言語習得研究では常識でもある。
2. 英語を音読するとどんな効果があるの?
音読の効果はたくさんあるが、大きく分けると下記の3つだ。
- 「音声」と「文字」と「意味」を結びつける。
- 「単語」と「文法」と「発音」の知識を無意識的に使えるようにする。
- 自然な英語表現を理解し使えるようにする。
一つ一つ説明しよう。なお、これらの効果を最大限に引き出すためには、ネイティブ・スピーカーの音源が必要となる。
2.1. 音読は「音声」と「文字」と「意味」を結びつける効果がある
「音声と文字を結びつける」というのは、文字の発音方法を理解すること。「音声と意味を結びつける」というのは、音声を聴いて意味を理解すること。「文字と意味を結びつける」というのは、文字を見て意味を理解することだ。音読はこの3つの結びつきを強化してくれる基本のトレーニングなのだ。
英語を習得するには、これら「音声」「文字」「意味」の3つを結びつけることが必須だ。日本人はこの中で特に「音声」に弱い。音読は、「音声」を「文字」および「意味」と結びつけるための、日本人にとっての最も重要なトレーニングだといっても過言ではない。
われわれ日本人は、中学・高校の英語の授業で、「文字と意味を結びつける」練習ばかりやってきた。しかし「音声」、つまり発音はほとんど教えられていない。日本人のリスニング力、スピーキング力が低い要因の一つだ。「同時通訳の神様」國弘氏は、「音声面を重視した英語教育をしてこなかったことが、日本の英語教育の最大の過ち」と指摘している。
「音声」を「文字」および「意味」と結びつけるためには、英語の音声の5大要素を克服する必要がある。
- 母音と子音
- 単語のアクセントの位置
- 音声変化(リエゾン)
- 強弱(リズム)
- 抑揚(イントネーション)
音読は、これらを克服することであなたの英語力を飛躍的に向上することができる超基本トレーニングだ。それぞれ概要を説明しよう。
2.1.1. 母音と子音
英語は日本語に比べて発音数が多い。日本語の母音は5つなのに対して、英語は24あるといわれている(数え方によって違う場合もある)。子音は、日本語は16、英語は24だ。日本人が英語の発音が苦手な理由の一つだ。
英語の母音と子音についての詳細は、「英語の発音記号|日本人が苦手な母音と子音を14のコツで矯正しよう」が参考になるはずだ。
2.1.2. 単語のアクセントの位置
英単語は、アクセント(ストレス)の位置を間違えると理解してもらえないことが多い。例えば、「バニラアイス」の「バニラ/vanilla」は、「ニ」にアクセントがある。日本語的に「バ」にアクセントをおいて発音すると理解してもらえない。
英単語のアクセントについての詳細は、「英語のアクセント|英単語のアクセントは基礎と応用8のルールで完璧」を参考にして欲しい。
2.1.3. 音声変化(リエゾン)
音声変化(リエゾン)とは、単語と単語が連続して発音され、切れ目がわからなくなること。つながって発音される「連結(Linking)」、つながることによってある音が発音されなくなる「脱落(Elision/Reduction)」、つながることによって音が変化する「同化(Assimilation)」の3種類ある。
音声変化についての詳細は、「英語のリエゾン|ジョブズから学ぼう!単純ルールと簡単発音練習法」が参考になるはずだ。
2.1.4. 強弱(リズム)
英語は、発話の強弱やスピードの差によって独特のリズムが生じる。基本的には、意味的に重要なところ (content words/内容語) は強く発話し、あまり重要ではないところ (function words/機能語) は弱く発話する。しかし、話者の意図や前後の関係で変化することもある。
英語のリズムについての詳細は、「英語のリズム|意外に重要!4つの法則と効果的な練習で使える英語に」が参考になるだろう。
2.1.5. 抑揚(イントネーション)
抑揚(イントネーション)とは、音の高低(ピッチ)のパターンのこと。イントネーションによって、気持ちやニュアンスの違いを表すことができる。イントネーションを間違えると、意図した意味とは全く違う形で相手に伝わってしまう可能性があるので要注意だ。文法で説明できるものと、話者の意図によって変わるものがある。
イントネーションについての詳細は、「英語のイントネーション|基礎と応用15のルールとおすすめ学習法!」が参考になるはずだ。
2.2. 音読は「単語」「文法」「発音」の知識を使えるようにする効果がある
音読は「自動化」のための基本的なトレーニングだ。「自動化」とは、知識を無意識的に使える様にすること。「自動化」していないと、話せないし聞き取れない。多くの日本人が抱える最重要課題だ。
言語の基本3要素である「単語」「文法」「発音」は、その知識を得るだけでは英語を自由に操れるようにはならない。それらの知識を「自動的」に使えるようになって初めて、英語を習得したといえるのだ。第二言語習得研究では、知識を自動的に使えるようにすることを「自動化」という。
自動化するということは、英語を英語のまま理解し、使えるようにするということ、つまり英語脳(英語回路)を作るということだ。音読は英語脳の土台を作る基本トレーニングなのだ。
英語脳(英語回路)を効率的に作るには、音読の他にも色々なトレーニングを実践した方がよい。それらの詳細については「英語脳の作り方|8つの自動化トレーニングで英語回路を構築しよう!」を参考にして欲しい。
2.3. 音読は自然な英語表現を使えるようにする効果がある
英語を習得するには、よく使われる自然な表現や言い回しを覚えることも重要だ。適切な教材を使用して音読トレーニングを繰り返せば、それらを覚えること、そして自動化して自分で使えるようにすることも可能である。
英語学習の基本は、「単語」「文法」「発音」を基礎から学び、それら3つを組み合わせて無限の文章を作れるようになることだ。しかし、それだけでは不十分。流暢に話すため、そして、ネイティブ・スピーカーにとって自然な表現を自分でも使えるようにするためには、使えそうな表現や言い回しを覚えることが必須なのだ。
3. 音読は4技能にも効果がある!
音読の効果を3つご紹介したが、それら3つの効果が得られれば、英語の4技能(読む・聞く・書く・話す)の能力も当然アップする。具体的にどのようにアップするのかをご説明しよう。
3.1. 音読でリーディング力アップ!
音読トレーニングは、英単語と英文法の知識を自動化させるため、理解するための時間が短くなりスラスラと読めるようになる。
英単語の知識が自動化されると、日本語に訳してから理解する必要がなくなり、英単語を英単語のまま、すばやく理解できるようになる。文法の知識が自動化されると、後ろから戻り訳す必要がなくなり、英文を前から理解できるようになる。結果、スラスラと読めるようになるのだ。
更に、音読トレーニングを続けていると、意識は、実際に声を出して音読しているところよりも「前」にいけるようになる。口が後から追っかけていく感じだ。例えば、下記の例文をみて欲しい。
I’m going to the airport.
この文を初めてみて、初めて音読する際、文中の「the」を「ザ」ではなく「ジ」と発音するには(「the」は母音の前では「ジ」と発音する。)、意識は口より先にいっていなければならない。つまり、「the」を発音するときには、意識はすでに「airport」の「a」にいっていないと「the」を「ジ」とは発音できない。この様な状態になるまで音読トレーニングを繰り返すことで、速読力も身につく。
3.2. 音読でリスニング力アップ!
音読トレーングは、「音声」を「文字」および「意味」と結びつける。加えて単語と文法の知識を自動化するのでリスニング力がアップするのだ。
「音声」と「文字」を結びつけることにより正確な発音方法を理解できるようになり、自分でも正確に発音できるようになる。自分で正確に発音できるようになれば聞き取れるようになる。更に、「音声」と「意味」を結びつけることにより、聴いて理解できるようになる。音読は、リエゾンなどの英語独特の発音やスピードに対応するための基本トレーニングだ。
また、単語と文法の知識が自動化されると、英単語を英単語のまま、英文を前から素早く理解できるようになり、結果リスニング力が更にアップするのだ。
3.3. 音読でスピーキング力とライティング力もアップ!
音読トレーニングは、リーディング力とリスニング力のみならず、スピーキング力とライティング力もアップさせることができる。
自分で使えそうな表現や言い回しが多く含まれた英文を使って音読トレーニングを繰り返し行えば、それらの表現・言い回しが定着し、話すとき、書くときに使えるようにすることも可能だ。
加えて、英語独特のリエゾンやリズム、イントネーションを身につけることで、ネイティブ・スピーカーにとって理解しやすい発音で話せるようにもなれる。これもスピーキング力アップの重要な要素の一つだ。
また、英単語の知識が自動化されると、英単語を英単語のまま、日本語から英語に変換せずに話せたり書けたりできるようになる。文法の知識が自動化されると、英文を前から組み立てることができるようになるので時間がかからなくなる。結果、スピーキング力とライティング力がアップするのだ。
4. 音読のやり方|プロソディ音読・コンテンツ音読・フレーズ音読
音読は、やり方で効果ががらりと変わる。やり方というのは、何を意識するかの違いのことだ。同じ音読トレーニングでも、何を意識するかで効果は全く違ってくる。
意識すべきことは「意味」「発音」「表現」の3つだ。ただし、人間の脳はマルチタスクが苦手なので、3つ同時に意識しながら音読することはできない。したがって、3つ全ての効果を得るためには、意識するところを変えて3回音読する必要がある。
意味を意識する音読を「コンテンツ音読」、発音を意識する音読を「プロソディ音読」、フレーズを意識する音読を「フレーズ音読」という。
4.1. コンテンツ音読
意味を意識して行う音読というのは、英語の内容(コンテンツ)を理解しながら音読するということだ。発音や表現は意識しなくていい。コンテンツだけに意識を集中して行うので、「コンテンツ音読」と呼ぶことにする。コンテンツ音読は下記の効果がある。
- 「文字」と「意味」を結びつける。つまり、文字を見て意味を理解する能力がアップする。
- 「音声」と「意味」を結びつける。つまり、音声を聴いて意味を理解する能力がアップする。
- 「単語」と「文法」の知識を「自動化」する。つまり、英語を英語のまま、語順通りに理解できるようになる。
4.2. プロソディ音読
発音を意識して行う音読というのは、母音と子音、単語のアクセントの位置、リエゾン、リズム、イントネーションを、できるだけ音源そっくりにまねて音読すること。意味と表現は意識しないいい。発音だけに意識を集中して音読する。リズムやイントネーションのことを、第二言語習得研究で「プロソディ」というので「プロソディ音読」と呼ぶことにする。プロソディ音読は下記の効果がある。
- 「音声」と「文字」を結びつける。つまり、文字の発音方法を深く理解できるようになる。
- 発音矯正が可能。つまり、無意識的に、ネイティブ・スピーカーに理解しやすい発音で話せるようになる。
- 英語独特のリエゾンやリズムなどが身につくことで、英語が聞き取りやすくなる。
4.3. フレーズ音読
表現(フレーズ)を意識して行う音読というのは、自分で使えそうな表現や言い回しを覚える目的で行う音読のこと。「フレーズ音読」と呼ぶことにする。フレーズ音読は、ネイティブ・スピーカーにとって自然なフレーズを身につけることができるので、当然スピーキング力とライティング力をアップさせることができる。
5. 音読のやり方|効果を最大限引き出す7つのステップ
音読とは、声を出して英文を読むことだ。つまり、「口」と「目」を使うトレーニング方法である。しかし、その効果を最大限に引き出すためには「耳」も活用する必要がある。人間の脳はあらゆる方向から刺激を与えることで記憶が定着しやすくなるからだ。ネイティブ・スピーカーが正しく発音した音源を聴き、そっくりまねて音読を繰り返すことが基本のやり方だ。
上記の基本のやり方で音読を繰り返し行えば、ある程度の効果は得られる。しかしながら、順序立てて行えば更に効果的だ。音読の効果を最大限に引き出すお薦めの方法をご紹介する。
5.1. 効果的な音読トレーニングの流れ
おすすめする音読トレーニングは7ステップある。繰り返し何周も行うことが基本だ。しかし、2周目以降は7つのステップ全てを行う必要はない。発音とスピードに慣れてきたら、音読だけ繰り返して行えばよい。
それぞれ何回くらい繰り返せばよいのか?それは個人の能力とトレーニングをするときの集中力によって全く違ってくるので一概にはいえない。それぞれのトレーニングの目的を下記でご説明するので、その目的を達成するまで何度も繰り返してほしい。
5.2. 7つのステップのやり方と目的
7つのトレーニングのやり方と目的を一つ一つご説明しよう。
5.2.1. 聞き取り(閉本)(Listening)
英文を見ないで(閉本)音源を聴く。意味(内容)に集中して、どの程度理解できるか確認する。理解できないところ、聞き取れないところに意識を集中して、何度か聴いてみよう。
5.2.2. アイ・シャドーイング(Eye shadowing)
音源を聴きながら英文を目で追う。「5.2.1. 聞き取り(閉本)」で聞き取れなかったところに意識を集中して何度も繰り返してみよう。わからない単語がある場合は、印をつけ、その意味を想像しながら繰り返そう。一つ一つの単語は理解できるが、文の意味が理解できないところも印をつけておくとよい。
発音方法も確認しておこう。母音と子音、単語のアクセントの位置、リエゾン、リズム、イントネーションを意識して何度も聴いてみよう。
アイ・シャドーイングは、意味がわからないところの確認と発音の確認が目的だ。
5.2.3. 音読(理解)(Reading aloud)
最初の音読(コンテンツ音読)だ。音読しながら単語と文法を確認する。アイ・シャドーイングの時に印をつけたところを、辞書などで調べて意味を理解しておくこと。音読する際、発音が曖昧な単語は、適当に音読せずに黙読でよい。ここでの音読は、英文を理解することが目的だ。
5.2.4. リピーティング(開本)(Repeating)
英文を見ながら一文一文音源を聴き、一旦音源を止めて音読(リピート)する。スピードはあまり意識する必要はないが、意味と発音を意識して何度か繰り返そう。リピーティングは、意味と発音を確認することが目的だ。
5.2.5. リップシンク(Lip-sync)
音源を聴きながら、英文を目で追い、同時に音源にぴったりと合わせるように唇(Lip)を同調(Sync)させて動かす。口パクだ。スピードに慣れることが第一の目的なので、口の動かし方(発音)に注意して繰り返そう。慣れてきたら、意味を意識してまた何度か繰り返そう。
5.2.6. オーバーラッピング(Overlapping)
リップシンクの声を出すバージョンだ。音源を聴きながら、英文を目で追い、同時に音源にぴったりと合わせるように声を出す。リップシンクでスピードについていけるようになっても、オーバーラッピングだとついていけない場合も多い。ここでもスピードに慣れることが第一の目的だ。発音に意識を集中して何度か練習してみよう。スピードに慣れてきたら意味も意識すること。
5.2.7. 音読(Reading aloud)
最後に、音源に頼らずに自力で音読する。意味、発音、スピードを意識して「コンテンツ音読」と「プロソディ音読」を何度も繰り返し行ってほしい。
音読していて意味が頭に入ってこないところは、集中して何度も音読すること。発音が曖昧なところは、リップシンクもしくはリピーティングに戻って確認すること。スピードにうまく乗れないと感じた場合は、オーバーラッピングに戻ることだ。
何回繰り返せばよいのか?目標は、意識が口より前にある状態で音読できるようになるまでだ。そのように音読できれば、必ず噛まずに音読できるようになる。
6. 音読のやり方|効果を落とさない7つのコツと注意点
音読の効果を最大限に引き出すための7のコツと注意点をご紹介する。どれも第二言語習得研究や脳科学研究で指摘されている重要なことばかりだ。
6.1. 自分の目的とレベルに合った教材を使うこと!
音読トレーニングを行う上で最も重要なのは教材選びだ。目的によって教材を変えた方が良い場合もある。また、自分の英語レベルに合ったものを選ばないと期待した効果が得られないので注意が必要だ。
6.1.1. 英語を使えるようにするための教材
「音声」と「意味」をつなげることや、単語と文法の知識を自動化することによって英語を「使えるようにする」ことが主な目的であれば、やさしめの英文を選ぼう。おすすめは、知らない単語・文法が5%以下の教材。未知な単語を文脈から類推しながら読めるレベルだ。
音源のスピードも重要だ。最初はゆっくりなものから徐々にスピードを上げて、最終的にはナチュラル・スピードのものをそっくりまねて音読できるようになりたい。
6.1.2. 単語・文法・フレーズを覚えるための教材
「文字」と「意味」をつなげることが目的の場合、つまり、単語・文法やフレーズを例文や長文で覚える場合でも英文の難易度は気にした方がよい。知らない単語や文法項目が多すぎる英文を使用することは非効率だ。モーティベーションが下がる原因にもなる。難易度は徐々に上げていく方が効率的に覚えられることが脳(神経)科学研究でも指摘されている。
6.1.3. 発音矯正のための教材
発音を矯正させ、同時にリスニング力も向上させることが目的であれば、内容は100%理解できる簡単な英文を使用した方がよい。意味を理解することに神経を使う必要がなくなるので発音に集中できる。スピードについては、いきなりナチュラルなものを使わずに徐々に上げていこう。特にリエゾンを習得するにはその方が効率的だ。
上記3つの目的に共通することだが、教材の内容はなるべく自分が英語を使う状況に合ったものを使おう。例えば、ビジネスで英語を使うのに、スラングが多く含まれた映画のスクリプトを教材に使うようなことは避けたい。
6.2. 目的と効果を意識してやること!
音読の効果は下記の3つであることをご説明した。このうちどの効果を目的とするのかを明確にして、それを意識しながら音読を行なってほしい。
- 「音声」と「文字」と「意味」を結びつける。
- 「単語」と「文法」と「発音」の知識を無意識的に使えるようにする。
- 自然な英語表現を理解し使えるようにする。
トレーニングジムで筋力トレーニングをする際、色々な筋肉を鍛えるために様々なマシンを使ってトレーニングをするが、それぞれのトレーニングがどの筋肉を鍛えるものなのかを理解して、その筋肉に意識を集中してトレーニングすると効果の現れ方が全く違うそうだ。英語のトレーニングも同じことだ。
6.3. 単語と文法を理解してからやること!
音読する際は、単語と文の構造(文法)をしっかりと理解した上で行なって欲しい。目的が英語を使えるようにする場合でも、新しい単語・文法・フレーズを覚える場合でも同じだ。
単語も文法も理解せず、意味をイメージせず、何も考えずに機械的に音源をまねて音読しても、せいぜい発音が自動化されるだけだ。加コンコーディア大学の心理言語学教授のセガロウィッツ氏も同様なことを指摘している。
6.4. 発音をそっくりにまねて音読すること!
聞き取れるようになるための近道は、自分でも発音できるようになること。母音と子音、単語のアクセントの位置、リエゾン、リズム、イントネーションの、英語の発音の5大要素を意識して、音源とそっくりに音読できるようになるまで繰り返し練習しよう。
「別にネイティブ・スピーカーのような発音で話せなくてもいい。」と反論される方もいらっしゃるかもしれない。その通りだ。我々日本人が英語で話す時は、相手に伝わるようにはっきり、くっきり話せればよい。スピードもネイティブのように速く話す必要は全くない。しかし、ここではリスニング力の向上が目的だということを忘れないでほしい。
6.5. 音読はとにかく繰り返すこと!
人間の脳は、記憶や自動化には繰り返しを要求する。脳科学の知見を総合すると、最初に音読した日から1週間後に1回目の復習、その復習から2週間後に2回目の復習、そしてさらに1ヶ月後に3回目の復習が最も効率的な復習サイクルだ。それぞれの復習で2回以上、トータルで6回以上繰り返してほしい。
脳科学研究によると、記憶の一時的な保管場所である「海馬」は、長くて1ヶ月程度しかその記憶を保管しない。海馬がその記憶を保管しているうちに、覚えたい情報をもう一度海馬に送信すれば、海馬はその情報を「必要」な情報と判断し、その後、長期的に記憶を保存する側頭葉に「これを記憶せよ」と指示し、側頭葉に保存される。
復習の頻度については、ドイツの心理学者エビングハウスの実験を参考にしている。また、6回という復習の回数については別の実験の結果を参考にしている。覚えたい単語が文中に出てくる回数と学習効果を調べた実験では、文中に出てくる回数が6回以上で明らかに効果が違ったそうだ。関西学院大学の堀氏の、シャドーイングの回数と効果の実験では、5〜6回繰り返したら効果があるという結果だったという。
6.6. 音読以外のトレーニングも取り入れること!
音読を含めて7つのトレーニング方法をご紹介したが、The English Clubが提唱している英語のトレーニングは全部で22ある。
これらのトレーニングを、The English Clubでは「自動化トレーニング」といっている。これら全ては、英語を覚えるだけではなく、自動的に使えるようにするトレーニングだからだ。
それぞれ効果は異なるので、この記事でご紹介しなかったトレーンングも、是非あなたの英語学習に取り入れて頂きたい。必ずあなたの英語習得を効率化してくれる。
なお、シャドーイングについては、「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」、ディクテーションについては、「英語ディクテーション|リスニング力だけじゃない!4技能に効果あり」、多読については、「英語多読の効果|第二言語習得研究も認めた効果とおすすめ多読法!」が参考になるはずだ。その他についても順次記事にする予定である。
6.7. なかなか効果が出ないからといって諦めないこと!
英語の習得には時間がかかることを覚悟してほしい。英単語を覚え、英文法と英語の発音を理解し、それらを自動的に使えるようにするには、繰り返しが必要だからだ。
特に学習の初期段階では、忍耐が必要であることが脳科学研究で指摘されている。上のグラフにあるように、学習時間と学習効果は幾何級的なカーブを描くことがわかっている。すぐに成果が現れないからといって決して諦めないでほしい。
7. 英語の音読|おすすめ教材3選
The English Clubがおすすめする音読教材を3つご紹介しよう。英語を使えるようにするための教材だ。
earson Graded Readers[Pearson Education]¥1,000円前後
旧ペンギンリーダーズ。多読用の書籍。英検4級(TOEIC250)レベルから準1級(TOEIC730)レベルまで、レベル別に様々なタイトルが出版されている。音源が付属されているタイトルも多い。このピアソン以外にも、オックスフォードやケンブリッジからも同様の多読本が出版されている。
英会話・ぜったい音読 標準編[講談社]¥1,300+税
TOEIC470〜600点の方を対象とした音読教材の定番。CDも付属している。シリーズにレベルの違う「入門編」と「挑戦編」がある。中学・高校の英語のテキストを使用している。内容的に面白みがないので、英語回路を作るためだと割り切る必要がある。
公式TOEIC(L&R)問題集[国際ビジネスコミュニケーション協会]¥2,800+税
上級者向け。Section3と4の問題が音読用素材として適している。ビジネスでよく使われる表現も多く含まれているのでスピーキングにもつなげることができる。TOEICリスニング対策にもなる。
なお、英会話・ぜったい音読シリーズの内容とやり方についての詳細は「英会話ぜったい音読|音読教材としての内容・やり方・効果を徹底検証」を参考にして欲しい。
8. 英語の音読|まとめ
- 音読は英語を習得するための基本中の基本のトレーニング。どんな目的でどのような方法で実施するかによって効果はがらりと変わるので注意が必要だ。
- 音読の効果は大きく分けて3つある。①音声と文字と意味を結びつける。②単語と文法と発音の知識を無意識的に使えるようにする。③自然な英語表現を理解し使えるようにする。
- 上記3つの効果が得られれば、英語の4技能(読む・聞く・書く・話す)の能力がアップし、英語力の飛躍的な向上が期待できる。
- 音読は、意味を意識して行えば単語と文法知識の自動化に効果がある。発音を意識して行えば発音の自動化に効果がある。表現を覚えたければ、そのフレーズに意識を集中する必要がある。それぞれ目的を意識して行えば効果も出やすい。
- 音読の効果を最大限に引き出すためには7のコツと注意点がある。二言語習得研究や脳科学研究で指摘されている重要なことばかりなので十分に注意してトレーニングしてほしい。
- 音読の教材には、「Pearson Graded Readers」「英会話・ぜったい音読」「公式TOEIC(L&R)問題集」がお薦めだ。
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- インプット(読む・聞く)能力向上のための英語脳作りトレーニング法
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- 学習計画の立て方と効率性を上げるための学習習慣
そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。