「英語の冠詞」(a/an, the)の「超基本」をまとめると以下のようになる。
コミュニケーションのツールとして英語が必要な日本人にとって、「英語の冠詞」は基本をおさえるだけで十分である。なぜなら、そもそも日本語を母語とする日本人が英語の冠詞を完璧に理解することは不可能に近いからだ。英語の冠詞を完璧に理解する時間があるなら、多くの英語に触れる時間を増やした方が効率的に英語を習得できる。
このコラムは超基本から発展的なことまで説明してあるが、発展的なことはあくまで参考なので気楽に読んでいただきたい。
目次
1. 英語の冠詞|【超基本】「数えられる名詞」と「数えられない名詞」
「英語の冠詞」を理解するには、まずは「数えられる名詞」と「数えられない名詞」について理解しておかなければならない。
1.1. 「数えられる名詞 vs. 数えられない名詞」と「単数形 vs. 複数形」
英語には「数えられる名詞」(countable noun)と「数えられない名詞」(uncountable noun)がある。「数えられる名詞」には「単数形」(singular)と「複数形」(plural)があるが、「数えられない名詞」は一つの形しかない(複数形はない)。
数えられる名詞の例文 | 数えられない名詞の例文 |
I eat an apple every day. (私は毎日1つのリンゴを食べる。) |
I eat rice every day. (私は毎日お米を食べる。) |
I like apples. (私はリンゴが好きだ。) |
I like rice. (私はお米が好きだ。) |
1.2. 「数えられる名詞」と「数えられない名詞」の使い方
「数えられる名詞」の「単数形」は「単独」で使うことができない。つまり、「数えられる名詞」は、前に「a (an), the」や「this, that, my, your, his」などの「冠詞」(article)や「限定詞」(determiner)をつけるか、複数形にしなければならない。
一方で、「数えられない名詞」は「単独」でも使うことができる。つまり、「数えられない名詞」は、必ずしも「冠詞」や「限定詞」をつけなくてもよい。また、「a/an」は「数えられない名詞」につけることができない。「数えられない名詞」には複数形がないことは既に説明した。
1.3. 注意が必要な「数えられる名詞」と「数えられない名詞」
注意が必要な「数えられる名詞」と「数えられない名詞」の一部を例文と一緒に紹介する。
数えられる名詞の例文 | 数えられない名詞の例文 |
He is singing a song. (彼は歌を歌っている。) |
He is listening to music. (彼は音楽を聴いている。) |
Do you like apples. (リンゴは好きですか?) |
Do you like apple juice. (リンゴジュースは好きですか?) |
I’m looking for a job. (私は仕事を探している。) |
I’m looking for work. (私は仕事を探している。) |
He has a lot of bags. (彼は多くのバッグを持っている。) |
He has a lot of baggage/ luggage. (彼は多くの荷物を持っている。) |
I like these chairs. (これらの椅子が好きだ。) |
I like this furniture. (この家具が好きだ。) |
What a nice view! (なんて素敵な景色だ!) |
What nice scenery! (なんて素敵な景色だ!) |
That’s a good suggestion. (それはいい提案だ。) |
That’s good advice. (それはいいアドバイスだ。) |
一般的に、「water」「wood」「air」などの「物質名詞」や、「beauty」「information」「hope」などの「抽象名詞」は「数えられない名詞」である。また、「furniture」「music」「food」などの「集合名詞」も「数えられない名詞」が多い。
1.4. 「数えられる」と「数えられない」の両方の性質を持つ名詞
英語の名詞には、「数えられる」と「数えられない」の両方の性質を持つものも多くある。いくつかを紹介する。
数えられる名詞の例文 | 数えられない名詞の例文 |
I read a paper every day. (毎日新聞を読む。) |
I need some paper to write on. (書くための紙が必要だ。) |
I need a glass of beer. (グラス一杯のビールが必要だ。) |
There’s broken glass on the floor. (床に割れたガラスがある。) |
This is a nice room. (いい部屋だ。) |
There isn’t enough room. (十分なスペースがない。) |
Have a great time! (よいひとときを。) |
Do you have time to talk? (話す時間ある?) |
Can I have two coffees please? (コーヒーを2つください。) |
I don’t like coffee. (コーヒーは好きではない。) |
2. 英語の冠詞|【基本】不定冠詞「a」「an」の使い方
「不定冠詞」と呼ばれる「a」と「an」の基本的な「意味」と「使い方」を説明する。
2.1. 「ある一つ」を意味する「a/an」
複数ある中の、どれかを「特定せず」に「ある一つの」を表す場合に「a (an)」をつける。「a (an)」は、特定していないので「不定冠詞」と呼ばれる。「a (an)」は、「数えられる名詞」の「単数形」につけることができ、「数えられない名詞」にはつけることができない。
She works in a bakery.
(彼女は(ある一つの)パン屋で働いている。)
I have a question.
((ある一つの)質問があります。)
There is a cat under the table.
(机の下に(ある一匹の)猫がいる。)
2.2. 「a」と「an」の使い分け
不定冠詞「a」は、母音(a/e/i/o/u)の前では、発音しやすくするために「an」になる。
Do you need an umbrella?
((ある一つの)傘は必要ですか?)
I found an interesting book yesterday.
(昨日(ある一冊の)面白い本を見つけた。)
We hired an engineer last month.
(先月(ある一人の)エンジニアを雇った。)
「a」と「an」の使い分けで気をつけてほしい代表的な名詞を紹介する。
an hour
(子音の「h」は発音しないため「a」ではなく「an」)
a university
(「university」の「u」は「ユ」という子音のため「a」)
a year
(「year」の「y」は「ユ」という子音のため「a」)
a European country
(「European」の「E」は「ユ」という子音のため「a」)
a window
(「window」の「w」は「ウォ」という子音のため「a」)
2.3. 「種類」を表す「a」と「an」
「人」や「物」の「種類」を表すときに「a/an」が使われる。下の例文をみてほしい。
The Earth is a star.
(地球は星(という種類の一つ)だ。)
A cat is an animal.
(猫は動物(という種類の一つ)だ。)
My father is a lawyer.
(私の父は弁護士(という種類の一人)だ。)
Ken is a very kind person.
(ケンは非常にやさしい(種類の一人))
3. 英語の冠詞|【基本】定冠詞「the」の使い方
複数ある中の、どれかを「特定しない」ときに「a (an)」をつけるのに対して、どれかを「特定する」ときに「the」をつける。「the」は、特定するので「定冠詞」と呼ばれる。
不定冠詞「a/an」と定冠詞「the」の使い分けについての基本を説明する。
3.1. 初めて話題に上がった名詞に「a/an」vs. 既に話題に出ている名詞に「the」
John and Susan have two children, a boy and a girl. The boy is ten years old, and the girl is eight.
(ジョンとスーザンは、男の子と女の子の2人の子供がいる。その男の子は10歳で、女の子は8歳だ。)
上の例文では、2人の子供について初めて話題に上がったので、最初は「a boy」と「a girl」になっている。その次には、どの「boy」と「girl」なのかを特定できるので「the boy」と「the girl」になっている。
3.2. 聞き手が特定できない名詞に「a/an」vs. 特定できる名詞に「the」
My girlfriend has an English name.
(私の彼女は英語の名前を持っている。)
I don’t remember the name of the man we met yesterday.
(昨日会った男性の名前が思い出せない。)
上の1つ目の例文の「an English name」は、どの「英語の名前」なのか特定していないため「an」がついている。一方で、2つ目の例文の「the name」は、「昨日会った男性の名前」と特定しているので「the」がついている。
I have to go to the bank.
(銀行に行かなければならない。)
Is there a bank near here?
(このあたりに銀行はありますか?)
上の1つ目の例文は、「the」がついているので、話し手はある「特定の」銀行に行かなければならず、聞き手もどの銀行かを特定できることが想定される。一方で、2つ目の例文は、どの銀行かを特定していないので「an」がついている。
Does your house have a pool?
(あなたの家にはプールがありますか?)
Let’s swim in the pool.
(プールで泳ごう!)
上の1つ目の例文は、プールがあるかどうかわからないので、特定のプールを指す「the」は使えない。2つ目の例文では、話し手と聞き手の両方が、どのプールかを特定できる状況なので「the」がついている。
3.3. 一つしかない名詞には「the」
この世の中に一つしかないものは、自動的に「限定」されるので「the」をつける。
the earth(地球)
the sun(太陽)
the world(世界)
the universe(宇宙)
the moon(月)
the sky(空)
the sea(海)
the equator(赤道)
the longest river(一番長い川)
the top of the mountain(山の頂上)
the end of this month(今月末)
the middle of the street(通りの真ん中)
「longest」などの形容詞の「最上級」に「the」がつくのは一つに限定されるからだ。「the top」も一か所に限定される。また、「the end of this month」は、1月であれば1月31日に限定されるので「the」がつく。「the middle of the street」も一か所に限定される。
3.4.「the」を「ði」(ジ) と発音する場合
「the」は一般的には「ðə」(ザ)と発音するが、「母音」の前では「ði」(ジ)と発音する。例えば、「the artist」(その芸術家)は、「artist」が「a」という「母音」で始まるので、「the」は「ði」(ジ)と発音される。
「ði」は「this(ðís)」の「ði」であり、上の歯の先に舌先を軽く当て、その隙間から摩擦させるように弱く「声」を出す。
「母音」の前ではなくても、その単語を強調する場合に「ði」(ジ)と発音する場合もある。例えば、「This is the book I was looking for.」(この本は私が探していた本だ。)を「まさにこの本だ」のように「本」を強調する場合は、「ði」(ジ)と発音することがある。
4. 英語の冠詞|【発展】「冠詞」を付けない場合
「冠詞」を付けてはいけない場合(「無冠詞」)を説明する。
4.1.「一般的」な「モノやヒト」の場合は「無冠詞」
「一般的」なモノやヒトについていうときは冠詞をつけない。(ただし、数えられる名詞の単数形は単独では使えないことに注意してほしい。)「特定」のモノやヒトのときは「the」をつける。
一般的なモノ・ヒト | 特定のモノ・ヒト |
I don’t like dogs. (犬が好きではない。) |
I like the dogs she has. (彼女が飼っている犬が好きだ。) |
Japanese people eat a lot of rice. (日本人は多くの米を食べる。) |
The Japanese people I know don’t eat rice. (知っている日本人は米を食べない。) |
I like working with people. (人と働くことが好きだ。) |
I don’t like the people I work with. (一緒に働いている人が好きではない。) |
All cars have wheels. (全ての車には車輪がある。) |
All the car in this park belong to me. (この駐車場の全ての車は私のだ。) |
4.2.「機能」「用途」「内容」に着目するときは「無冠詞」
モノの「機能」「用途」「内容」に着目する場合は冠詞をつけない。(一般的に数えられる名詞でも、単数形で単独で使われることがあるので注意。)一方で、モノを「物体」としてみる場合は冠詞(the)をつける。
例えば下の1番目の例文のように、「school」を「勉強するところ」という「機能」に着目した場合は、無冠詞にする。一方で、「学校」を「建物」という「物体」としてみる場合は冠詞(the)をつける。
つまり、「息子」は「勉強しに行く」ので無冠詞、「私」は「息子の先生に会いに行く」ために「学校」という「建物」に行くので冠詞(the)が必要となる。
「機能」「用途」「内容」に着目する場合 | 「物体」としてみる場合 |
My son goes to school every day. (息子は毎日学校に行く。) |
I have to go to the school to meet my son’s teacher. (息子の先生に会うために学校に行かなければならない。) |
Ken is in hospital. (ケンは入院している。) |
Mary went to the hospital to see Ken. (メアリーはケンに会うために病院に行った。) |
You should go to bed early today. (今日は早く寝た方がいい。) |
I sat down on the bed. (ベッドの上に座った。) |
I watch TV a lot. (テレビをたくさん観る。) |
Can you turn off the TV? (テレビを消してくれますか?) |
I usually go to work by bus/ car/ train. (通常バス/車/電車で仕事に行く。) |
She is on the bus/ car/ train now. (彼女は今そのバス/車/電車に乗っている。) |
4.3.「breakfast」「lunch」「dinner」は「無冠詞」
「breakfast」「lunch」「dinner」は、どれも「食事」という「内容」に着目しているので冠詞をつけない。
Let’s have lunch together.
(一緒にランチを食べよう。)
We had dinner in a gorgeous restaurant last night.
(昨日ゴージャスなレストランで夕食を食べた。)
What do you usually have for breakfast?
(いつも朝食に何を食べる?)
一方で、「breakfast」「lunch」「dinner」の前に「形容詞」がつくと不定冠詞「a」がつく。これは、「色々な種類の中の1つの」というニュアンスがあるからだ。
I had a big lunch today.
(今日はでっかいランチを食べた。)
We enjoyed an early breakfast yesterday.
(昨日早めの朝食を楽しんだ。)
5. 英語の冠詞|【発展】その他の「冠詞」の使い方
その他、覚えておくと便利な冠詞の使い方を紹介する。
5.1. 「〜につき」を表す「a/an」
「a/an」は「〜につき」という意味を表すことができる。
I go swimming once a week/month.
(私は1週間/1ヶ月に1回泳ぎに行く。)
He has to take the medicine three time a day.
(彼はその薬を1日に3回飲まなければならない。)
These oranges are JPY200 a kilo.
(これらのオレンジは1キロ200円だ。)
This ship opens 24 hours a day, 7 days a week.
(この店は1日24時間、1週間に7日やっている。)
5.2. 「種類」を示す場合の「the」
「動物」「機械」「楽器」などの「種類」を示す場合には「the」をつける。
例えば、下の1番目の例文の「the giraffe」は、ある特定の「giraffe」を表しているのではなく、「giraffe」という動物の「種類」を表している。
The giraffe is the tallest of all animal.
(キリンはあらゆる動物の中で一番背が高い。)
The computer has changed our life.
(コンピュータは我々の人生を変えた。)
Who invented the car?
(誰が車を発明したの?)
Can you play the piano?
(ピアノを弾けますか?)
このような「種類」を表すときの「the」と、「ある一つの」を表すときの「a/an」を比較してみる。
「種類」を表すときの「the」 | 「ある一つの」を表すときの「a/an」 |
The giraffe is the tallest of all animal. (キリンは全ての動物の中で一番背が高い。) |
I saw a giraffe at the zoo. (動物園でキリンをみた。) |
Can you play the piano? (ピアノを弾けますか?) |
There is a piano in her room. (彼女の部屋に1台のピアノがある。) |
2番目の例文では、「楽器の1つの種類」である「ピアノ」の場合は「the」が、「一つの物体」として「ピアノ」をみている場合は「a」がつく。
5.3. 「the + 形容詞」で「人」を表す場合
「the + 形容詞」で「人」の「種類」を表す場合がある。例えば、下の1番目の例の「the young」は「若い人たち」を意味する。ある特定の「人」を示しているのではなく、一般的な「若い人たち」というグループを示している。
the young(若い人たち)
the old(年老いた人たち)
the rich(お金持ちたち)
the poor(貧乏人たち)
the homeless(ホームレスの人たち)
the unemployed(失業者の人たち)
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