英語はイントネーション(抑揚)に注意しよう。平坦な言語といわれる日本語と比べて、英語はイントネーション(抑揚)でより多くのことが表現されるからだ。
日本人は英語の発音に弱い。イントネーション(抑揚)のみならず、リズム(強弱)や音声変化(リエゾン)などの英語独特の発音をまとめて攻略するトレーニング方法もご紹介したい。
目次
1. 英語のイントネーション|「文の種類」と「話者の意図」
イントネーションとは、話すときの声の「高低」の変化だ。日本語では「抑揚」という。つまり、声の「上げ下げ」のこと。このイントネーションを変化することによって様々なことが表現できる。
Yes.
「はい。」(普通の答え)
「いいですか?」(質問している)
「いいんですが…(でも…)」(迷っている)
「そんなわけがないでしょ!」(否定している)
例えば、「Yes.」の一言でも、イントネーションによって上記のように最低でも4種類の意味(意図)の違いを表現できるのだ。
イントネーションの種類は大きく分けて2つある。上の「Yes.」の例のように「話者の意図」によって変わるイントネーションと、「文の種類」によって決まるイントネーションだ。このコラムでは、前者を「応用編」、後者を「基礎編」とする。まずは「基礎編」からご説明しよう。
2. 英語のイントネーション「基礎編」①「下がり型」
声の「上げ」と「下げ」のうちの「下がり型」をご説明する。下がり型は「陳述文(平叙文)」「命令文」「感嘆文」「疑問詞で始まる疑問文」の4種類ある。
2.1. 陳述文(平叙文)
単に情報を伝える文を「陳述文」もしくは「平叙文」というが、この場合は文末を下がり調子に発音する。
I’m from Japan⤵.
私は日本から来ました。
He didn’t go to the party yesterday⤵.
彼は昨日パーティーに行きませんでした。
They’ve gone to Europe for a holiday⤵.
彼らは休暇でヨーロッパに行きました。
2.2. 命令文
誰かに何かして欲しいとき、動詞の原形から始める文を命令文というが、その場合は文末を下がり調子に発音する。
Be careful⤵!
気をつけて!
Don’t worry⤵.
心配しないで。
Don’t open the window⤵!
窓を開けないで!
2.3. 感嘆文
強い感情を表すとき、つまり「感嘆」したときの「What」もしくは「How」で始める文を感嘆文というが、その場合は文末を下がり調子に発音する。
How beautiful you are⤵!
あなたはなんて美しいのでしょう!
What a handsome boy he is⤵!
彼はなんてハンサムな少年なんでしょう!
2.4. 疑問詞で始まる疑問文
疑問詞の「What」「Who」「When」「Where」「Which」「Which」「Why」「How」で始まる疑問文の文末は下がり調子に発音する。
What are you doing⤵?
あなたは何をしているの?
Who will visit the client this afternoon⤵?
誰が午後にクライアントを訪問するの?
Why didn’t you come yesterday⤵?
あなたはなぜ昨日来なかったの?
How did you come here⤵?
あなたはどうやってここに来たの?
Which food do you like⤵?
どっちの食べ物が好きですか?
3. 英語のイントネーション「基礎編」②「上がり型」
次に「上がり型」をご説明する。上がり型は「Yes/No疑問文」と「副詞節の後に主節が続くとき」の大きく分けて2種類ある。
3.1. 「Yes」「No」疑問文
「Yes」もしくは「No」で答える疑問文の文末は上がり調子に発音する。ちなみに、上記で説明した疑問詞から始まる疑問文は、「Yes」「No」では答えられないので下がり調子に発音する。
Are you OK⤴?
大丈夫ですか?
Don’t’ you know his name⤴?
彼の名前を知らないの?
Can you fix the machine⤴?
その機械を直せますか?
3.2. 相手が言ったことを確認するとき
「Yes」「No」疑問文の一種であるが、相手が言ったことを確認する場合(聞き返す場合)は上がり調子になる。単によく聞き取れなかったので聞き返す場合や驚きを表す場合も同様だ。
I met your mother yesterday.(昨日君のお母さんと会った。)
– You met who⤴?(誰と会ったって?)
Are you a doctor?(あなたは医者ですか?)
– A doctor⤴?(医者かだって?)
3.3. 副詞節の後に主節が続くとき
主語+動詞の形を「節」という。主となる節(主節)を修飾する節を「副詞節」と呼ぶが、その副詞節を文頭に置いたとき、副詞節の最後を上がり調子に発音することがある。言いたいことが終わっていないことを示すためだ。
When he visited us⤴, we were having diner.
彼が訪れて来たとき、私たちは夕食を食べていた。
Before you enter the country⤴, you need to get a visa.
その国に入る前に、ビザを取ることが必要です。
If you leave a message⤴, we will call you back as soon as possible.
メッセージを残して頂けたら、すぐに折り返しお電話します。
4. 英語のイントネーション「基礎編」③「and」「or」を使う際の注意点
複数のものや事柄を挙げる際、「and」もしくは「or」の前は上がり調子、後ろは下がり調子で発音する。これも、上記の副詞節と同様に、まだ続きがあることを示すためだ。
I like apples⤴, bananas⤴, and oranges⤵.
私はりんごとバナナとオレンジが好きです。
(「and」は最後の直前に入れる。「and」の前はいくつ並べても全て上がり調子。「or」も同じ。)
Is she your mother⤴ or sister⤵?
彼女はあなたの母親ですか?姉妹ですか?
(疑問文でも最後は下がり調子になる。ちなみにこれは「Yes/No疑問文」ではない。)
Which picture do you like better⤵, this one⤴ or that one⤵?
どちらの写真のほうが好きですか?こちら?あちら?
(疑問詞で始まる疑問文の文末は下がり調子なことに変わりはない。)
5. 英語のイントネーション「応用編」①「感情や態度」を表現
イントネーションによって文字では表現できない「感情や態度」を表現することができる。イントネーションを間違ってしまうと、こちらが意図しないニュアンスで伝わることがあるので注意が必要だ。
ただし、神奈川大学名誉教授の深澤氏は、「話者の心理態度とイントネーションとの関係は絶対的なものではない。」と指摘している。顔の表情などのボディランゲージ等の他の要素も関係してくるので、それほど神経質にならなくてもよいということだ。
5.1. イントネーションで感情や態度が現れる典型例
イントネーションで「感情や態度」が現れる例を2つご紹介しよう。
5.1.1. 「What’s the time?」の4通りのイントネーション
1つ目の「What’s the time?」は「何時ですか?」という意味だが、イントネーションによって最低でも4つの感情や態度を表現できる。
What’s the time?
何時ですか?
気持ちがこもっていない「ぶっきらぼう」なイントネーション
気持ちがこもった「普通」のイントネーション
「一体何時なんだよ」のような「強い」イントネーション
「何時でしょうか?」のような「丁寧」なイントネーション
5.1.2. 「What’s your name?」の3通りのイントネーション
2つ目の「What’s your name?」は「あなたのお名前は?」という意味だが、イントネーションによって最低でも3つの感情や態度を表現できる。
What’s your name?
何時ですか?
普通に「お名前は?」のイントネーション
事務的に「名前は?」のイントネーション
高圧的に「名前?」のイントネーション
5.2. 相手が言ったことに驚いたとき
上記「3.2. 相手が言ったことを確認するとき」でも触れたが、相手の言ったこといついて「驚いて」繰り返すときは文末が上がり調子になる。
I saw Michael Jackson yesterday. (昨日マイケル・ジャクソンを見た。)
– Michael Jackson⤴?! (マイケル・ジャクソンだって?)
– You saw who⤴?! (誰を見たって?)
– Did you⤴?! (会ったの?)
– What⤴?! (なに?)
– Really⤴?! (本当?)
– Excuse me⤴? (え?)
6. 英語のイントネーション「応用編」②「意味の違い」を表現
イントネーションによって文字では表現できない「意味の違い」を表現することもできる。間違ってしまうと、こちらが意図しない意味で伝わることがあるので注意が必要だ。
6.1. 「Excuse me.」の2種類のイントネーション
「Excuse me.」は一義的には「失礼します。」という意味だが、イントネーションによって最低でも3つの「意味の違い」を表現できる。
Excuse me⤵.
「失礼します。」(通常の意味)
Excuse me⤴.
「もう一度言ってもらえますか?」(聞こえなかったので質問している)
Excuse me⤴.
「何を言っているんですか!」(言われたことに怒っている)
最後の怒っている場合は、イントネーションだけではなく、かなり「強く」発音される場合が多い。
6.2. 「Yes.」の4種類のイントネーション
「Yes.」は一義的には「はい。」という意味だが、イントネーションによって最低でも4つの「意味の違い」を表現できる。
Yes⤵.
「はい。」(普通の答え)
Yes⤴.
「いいですか?」(相手に質問している)
Yes⤵⤴.
「いいんですが…(でも…)」(迷っている)
Yes⤴⤵.
「そんなわけがないでしょ!」(強く否定している)
最後の強く否定する場合は、イントネーションだけではなく、かなり「強く」発音される場合が多い。
6.3. 「Catherine」の4種類のイントネーション
「Catherine」は人の名前だ。人の名前を呼ぶときにも、イントネーションによって最低でも4つの「意味の違い」を表現できる。
Catherine⤵.
「キャサリン。(ちょっとこっちに来て。)」(普通の呼びかけ)
Catherine⤴.
「キャサリン。(どこにいるの?キャサリンなの?)」(いるのか聞いている)
Catherine⤵⤴.
「キャサリン。(聞きなさい。)」(説教しようとしている)
Catherine⤴⤵.
「キャサリン。(何てことをしたの!)」(怒りが含まれる)
6.4. 「疑問文が陳述文に」そして「陳述文が疑問文に」
文法上は疑問文でもイントネーションで陳述文(平叙文)になったり、文法上は陳述文でもイントネーションで疑問文になったりすることは頻繁に起こる。
6.4.1. 「This is my pencil.」は疑問文にもなる
This is my pencil⤵.
これは私の鉛筆です。
(陳述文:単に情報を伝えている。)
This is my pencil⤴.
これは私の鉛筆ですか?
(疑問文:質問している。)
6.4.2. 「Isn’t he like his father?」は陳情文にもなる
Isn’t he like his father⤴?
彼はお父さんに似ていませんか?
(疑問文:質問している。)
Isn’t he like his father⤵?
彼はお父さんに似ていますね。
(陳述文:自分の意見を述べている。)
6.5. 付加疑問文の2種類のイントネーション
陳述文(平叙文)の後に短縮の疑問形(「isn’t it」など)をつける場合あるが、これが付いた文を「付加疑問文」という。
付加疑問文の場合、付加された部分を上がり調子で言うと、確信しているけど念の為に確認している意味になり、下り調子で言うと、確かではない為に尋ねている意味になる。
He likes sweets, doesn’t he⤴?
彼は甘いものが好きですか?
(質問している。)
He likes sweets, doesn’t he ⤵?
彼は甘いものが好きだよね。
(念のため確認している。)
6.6. 文の意味が全く違ってしまうイントネーションの例
同じ陳述文でも一つの単語のイントネーションを変えるだけで全く「意味が変わる」こともある。
She didn’t come because I told⤵ her.
私に言われたので彼女は来なかった。
(彼女は来なかった)
She didn’t come because I told⤵⤴ her.
彼女は、私に言われたから来たというわけではなかった。
(他の理由で彼女は来た)
7. 英語のイントネーション「応用編」③「重要性」を表現
同じ陳述文でも、一つの単語のイントネーションを変えるだけでその単語を「強調」することがよくある。
This⤵ is my pen.
これが、私のペンです。
(「他のどれでもない、これが」のニュアンスを含む)
This is my⤵ pen.
これは私の、ペンです。
(「他の誰のものでもない、私の」のニュアンスを含む)
This is my pen⤵.
これは私のペン、です。
(「ペン以外の何ものでもない」のニュアンスを含む)
このように、ある単語を強調する場合は、通常、イントネーションを変えるだけではなく、その単語を「強く」発音する。
8. 英語のイントネーション|学習方法
イントネーションは、上記でご説明したことを理解したら、あとはネイティブ・スピーカーをまねるしかない。下記でご紹介する「自動化トレーニング」をイントネーションを意識して何度も繰り返し行ってほしい。なお、使用する教材は簡単に理解できるものを使用しよう。内容が難しいとイントネーションに集中できなくなるからだ。
「自動化トレーニング」とは、知識を無意識的、自動的に使えるようにするためのThe English Clubで推奨しているトレーニングだ。全部で22のトレーニング方法があるが、そのうち発音矯正に効果がある6つのトレーニングをご紹介する。
6つのトレーニングはそれぞれ単独で行っても効果はあるが、上記のようにフローで行うとより効果が高くなる。それぞれのやり方を簡単に説明しよう。
8.1. 聞き取り(Listening)
英文は見ないで聴く。最初はイントネーションは気にせず、内容を理解することに意識を集中する。内容が(ほぼ)理解できたらイントネーションに注意して何回か聞いてみよう。
8.2. アイシャドーイング(Eye-shadowing)
英文を目で追いながら音源を聴いてみよう。意味が理解できないところがあったら辞書などで調べること。その後、イントネーションのみに意識を集中させてアイシャドーイングを繰り返そう。
8.3. オーバーラッピング(Overlapping)
英文を目で追いながら音源にぴったり合わせて自分でも声を出してみよう。イントネーションに意識を集中して遅れないでついていくこと。オーバーラッピングの第一の目的はスピードを体感することだ。
8.4. リピーティング(Repeating)
英文を目で追いながら音源を一文聴き、一旦音源を止めてから音読してみよう。音源のイントネーションをできるだけそっくりにまねて欲しい。そっくり発音できるまで何度も繰り返そう。
8.5. 音読(Reading aloud)
音源を止め自力で音読する。ここでもイントネーションに集中して、音源とそっくりに発音できるようになるまで繰り返し練習する。うまく音読できない場合は一旦オーバーラッピングやリピーティングに戻り、確認してから再度音読に挑戦してみよう。
なお、音読の効果とやり方についての詳細は「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」を参考にして頂きたい。
8.6. シャドーイング(Shadowing)
仕上げのシャドーイングだ。イントネーションを意識して、音源をそっくりそのままコピーできるまで練習しよう。最終目標は無意識的に音源とそっくりに発音できるようになることだ。
最後に音と意味がつながっているかどうかを確認しよう。イントネーションは意識しなくてよい。意味(内容)を理解しながらシャドーイングをやってみる。シャドーイングをやりながら内容が頭にスーッと入ってこなければ、音と意味がつながっていない証拠だ。その場合は、内容が入ってくるまで意味に意識を集中してシャドーイング繰り返そう。
なお、シャドーイングの効果とやり方についての詳細は「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」を参考にして頂きたい。
9. 英語のイントネーション|リズムとリエゾン
英語の発音で注意すべきことはイントネーションだけではない。英語は「リズム」が大切だと聞いたことがあるだろう。また、英語独特の「音声変化」は日本人が英語を聞き取れない最大の理由と言われている。上記は、それら英語の発音をまとめて体得するための自動化トレーニングだ。何を意識するかで効果は変わってくる。是非繰り返し行ってほしい。
なお、英語のリズムの詳細については「英語のリズム|重要な理由と4つの法則を理解して使える英語を獲得!」、音声変化(リエゾン)の詳細については「英語のリエゾン|ジョブズから学ぼう!単純ルールと簡単発音練習法」を参考にしてほしい。
この記事を書くにあたって、神奈川大学名誉教授の深澤氏の著書である「英語の発音パーフェックト学習辞典」(アルク)を参考にさせて頂いた。イントネーションのより深い知識や、その他の英語の発音の知識を得たい方にはおすすめの書籍だ。
10. 英語のイントネーション|まとめ
- イントネーションとは話すときの声の「高低」の変化。「抑揚」ともいう。つまり声の「上げ下げ」のこと。このイントネーションを変化させることによって様々なことが表現できる。
- イントネーションは大きく分けて「文の種類」によって決まるイントネーション(基礎)と「話者の意図」によって変わるイントネーション(応用)の2つある。
- 基礎の下がり型は「陳述文(平叙文)」「命令文」「感嘆文」「疑問詞で始まる疑問文」の4種類、上がり型は「Yes/No疑問文」と「副詞節の後に主節が続くとき」の2種類ある。
- 応用として、文字では表現できない「感情や態度」を表現することができるイントネーション、「意味の違い」を表現できるイントネーション、そして「重要性」を表現できるイントネーションの3種類がある。
- 英語のイントネーションは重要だ。自動化トレーニングを通して体得しよう。そしてイントネーションだけではなく、英語独特のリズムや音声変化を効率的に体得できれば英語力は飛躍的に向上する。
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