英語の「目的語」とは、下記の例文の「dog」のことだ。目的語は「〜を」と日本語に訳せる場合が多い。下記の例文では、「dog」 は動詞「have」の目的語である。S (主語)+V (動詞)+O (目的語) の第3文型だ。
英語の「補語」とは、下記の例文の「doctor」のことだ。主語とイコールの関係にある語句は「補語」という。下記の例文では「She」=「doctor」になっている。S (主語)+V (動詞)+C (補語) の第2文型だ。
実は、「目的語」や「補語」が何なのかを知らなくても英語は習得できる。その証拠に、イギリスで出版されている英文法書には「Object」(目的語)や「Complement」(補語)という単語が載っていないものも多い。
一方で、日本の英語教育では5文型から学ぶので、「目的語(O)」や「補語(C)」を理解する必要がある。しかし、これらは理解しづらい概念なので、そこでつまずいてしまう方が非常に多い。
このコラムでは、本当はあまり重要ではない「目的語とは?」「補語とは?」ということから、これは知っておいてほしいという重要なことまで、「目的語」と「補語」を徹底的に解説する。
以下は、このコラムを読むと理解できるようになる「目的語」と「補語」の主な例文(発展)だ。太字が「目的語」もしくは「補語」である。
He suggested changing the plan. (彼は計画を変更することを提案した。) |
He showed me how to get to the station. (彼は私に駅への行き方を示した。) |
They decided to close the shop without asking me. (彼らは私に聞かずに店を閉めることを決めた。) |
He turned out to be a nice guy. (彼はいいやつだった。) |
His hard work made him what he is today (彼の多大な努力が彼を今の彼にした。) |
目次
1. 英語の目的語|【基本】動詞の「目的語」
「目的語」は動詞のすぐ後ろに置かれ、「〜を」の意味を表す場合が多い。そのような「目的語」を「動詞の目的語」という。目的語になれるのは名詞と代名詞だ。
「be動詞」以外の動詞(「一般動詞」という)は、「目的語」を必要とするものが多い。後ろに目的語を必要とする動詞を「他動詞」という。
1.1. 「他動詞」と「第3文型」(S+V+O)
下の例文を見てほしい。「like」は後ろに「目的語」が必要な動詞である。「I like.」だけだと、「何を」好むのかがわからない。全く意味をなさない英文になってしまう。
「目的語」を必要とする「他動詞」に「目的語」を付けないと意味が通じなくなり、文法的にも間違った文章になってしまう。
上記の例文のように、主語(Subject)+ 動詞(Verb)+ 目的語(Object)の文を第3文型(SVO)という。
1.2. 「他動詞」と「第4文型」(S+V+O+O)
動詞の中には目的語を2つとるものもある。下の例文を見てほしい。
「her」(彼女に)、「present」(プレゼントを)「gave」(あげた)のように、動詞「give」は2つの目的語をとる動詞の一つだ。
ちなみに、最初の目的語(例文では「her」)(〜に)を「間接目的語」、2つ目の目的語(例文では「a present」)(〜を)を「直接目的語」と呼ぶ。(覚える必要はない。)
例文のように、主語(Subject)+ 動詞(Verb)+ (間接)目的語(Object)+ (直接)目的語(Object)の文を第4文型(SVOO)という。この文型では、間接目的語が「人」、直接目的語が「物など」の順番になる。
どの動詞でもこの形がとれるわけではない。「give」のほか、「tell」「show」「teach」などの動詞に限られることに注意してほしい。
1.3. 「他動詞」と「自動詞」①
「目的語」を必要としない動詞もある。それらは「自動詞」という。例えば下の例文の「swim」(泳ぐ)は目的語を必要としない「自動詞」だ。ちなみに、「can」は「助動詞」で動詞「swim」を助ける働きをしている。
その動詞が「自動詞」なのか「他動詞」なのかは一つ一つ覚えていくしかない。
また、下記の「move」(動く/動かす)のように、「自動詞」としても、そして「他動詞」としても使われる動詞も少なくない。
2. 英語の目的語|【基本】前置詞の「目的語」
目的語は「動詞の目的語」の他に「前置詞の目的語」がある。「前置詞」とは「on」「at」「in」などのことだ。「名詞の前に置く詞(ことば)」なので、前置詞の後には必ず名詞が続く、その名詞のことを「前置詞の目的語」と呼ぶ。
下の例文をみてほしい。「at the station」の前置詞「at」の目的語が「the station」である。前置詞の目的語の場合は、動詞の目的語のように「〜を」の意味にはならない。意味は前置詞によって変わることになる。
ちなみに、「Ken」は動詞「met」の目的語であり、「S+V+O」の第3文型だ。「at the station」は、動詞「met」を修飾する「副詞句」である。
3. 英語の補語|【基本】主語を説明する「補語」
「補語」とは、「be動詞」などの限られた動詞の後ろに置かれ、主語を説明するもの。「主語=補語」の関係になる。補語になれるのは名詞・代名詞と形容詞だ。
3.1 「第2文型」(S+V+C)
下の例文をみてほしい。「補語」である形容詞の「busy」(忙しい)は、主語の「I」がどういう状態なのかを説明している。つまり「I = busy」だ。
この例文のように、主語(Subject)+ 動詞(Verb)+ 補語(Complement)の文を第2文型(SVC)という。
3.2. 「補語」をとる動詞
この「S+V+C」の形をとれる動詞は限られている。主な動詞を例文とともに紹介する。
He remained silent.
(彼は沈黙を保った。)
ここでの「remain」は、主語の「状態」を表している。主語の「状態」を表す動詞で「SVC」の形がとれるものは、他にも「be動詞」「keep」「stay」などがある。
I got angry.
(私は怒った。)
ここでの「get」は、主語が「その状態になる」ことを表している。主語が「その状態になる」ことを表す動詞で「SVC」の形がとれるものは、他にも「become」「grow」「turn」などがある。
It tastes good.
(それは美味しい。)
ここでの「taste」は、主語が「そのように感じる」ことを表している。主語が「そのように感じる」ことを表す動詞(知覚動詞)で「SVC」の形がとれるものは、他にも「feel」「smell」「look」「sound」などがある。
He seems upset.
(彼は動揺しているようだ。)
ここでの「seen」は、主語が「そのように見える/思われる」ことを表している。主語が「そのように見える/思われる」ことを表す動詞(知覚動詞)で「SVC」の形がとれるものは、他にも「appear」がある。
上記のいずれの例文も、「主語 = 補語」の関係になっていることに注意していただきたい。
3.3. 「他動詞」と「自動詞」②
「S+V+C」の形をとる動詞は「自動詞」である。「目的語」を必要とする動詞が「他動詞」であり、「補語」を必要としても「目的語」を必要としない動詞は「自動詞」だ。
たとえば、下の例文の「be動詞」は、補語がないと意味をなさない。つまり、「be動詞」は補語を必要とするが、目的語を必要としない自動詞である。ちなみに、このような自動詞を「不完全自動詞」と呼ぶ。(覚える必要はない。)
ただし、文脈により省略される場合はある。(例:Are you busy? – Yes, I am.)
一方で、下の例文の「run」は、補語も目的語も必要ない自動詞である。ちなみに、このような自動詞を「完全自動詞」と呼ぶ。(覚える必要はない。)
ちなみに上の例文は、主語(Subject)+ 動詞(Verb)の第1文型(SV)である。なお、「every morning」は動詞「run」を修飾する副詞である。
4. 英語の補語|【基本】目的語を説明する「補語」
補語は、「主語」ではなく「目的語」を説明する場合もある。「目的語=補語」の関係になる。ここでも、補語になれるのは名詞・代名詞と形容詞だ。
4.1. 「第5文型」(S+V+O+C)
下の例文をみてほしい。「補語」である形容詞の「angry」(怒っている)は、目的語の「me」がどういう状態なのかを説明している。つまり「me = angry」だ。
この例文のように、主語(Subject)+ 動詞(Verb)+ 目的語(Object)+ 補語(Complement)の文を第5文型(SVOC)という。
4.2. 「第5文型」(S+V+O+C)の動詞
この「S+V+O+C」の形をとれる動詞は限られている。主な動詞を例文とともに紹介する。
You should keep it simple.
(あなたはそれを単純に保つべきだ。)
ここでの「keep」は、目的語の「状態」を表している。目的語の「状態」を「SVOC」の形で表現できる動詞は、他にも「make」「get」「leave」などがある。
Please call me Ken.
(私をケンと呼んでください。)
ここでの「call」は、目的語の「呼び方」を表している。目的語の「呼び方」を「SVOC」の形で表現できる動詞は、他にも「name」などがある。
I find this book interesting.
(私はこの本が面白いことを知った。)
ここでの「find」は、目的語についての「考え」を表している。目的語についての「考え」を「SVOC」の形で表現できる動詞は、他にも「think」「believe」「consider」などがある。
上記のいずれの例文も、「目的語 = 補語」の関係になっていることに注意していただきたい。
5. 英語の目的語と補語|【基本】「目的語」と「補語」の見分け方
目的語と補語の見分け方を説明する。(本来あまり重要ではない。つまり、本来5文型自体あまり重要ではないのだが、なぜか日本の英語教育では重要視されている。)
5.1.「S+V+O」vs.「S+V+C」
「目的語」(O)なのか、「補語」(C)なのかは、「主語」とイコールの関係かどうかで簡単に判断できる。
下の例文をみてほしい。第3文型「S+V+O」の例文では、動詞の後の語「teacher」が主語「He」とイコールになっていない。一方で第2文型「S+V+C」の例文では、動詞の後の語「teacher」が主語「He」とイコールになっている。
イコールでなければ「目的語」、イコールであれば「補語」である。
5.2.「S+V+O+O」vs.「S+V+O+C」
「目的語」(O)なのか、「補語」(C)なのかは、「目的語」とイコールの関係かどうかで簡単に判断できる。
下の例文をみてほしい。第4文型「S+V+O+O」の例文では、動詞の後の目的語「me」が次の語「watch」とイコールになっていない。一方で第5文型「S+V+O+C」の例文では、動詞の後の目的語「me」が次の語「happy」とイコールになっている。
イコールでなければ「目的語」、イコールであれば「補語」である。
6. 英語の目的語|【発展】動詞の「目的語」①
「目的語」を取る動詞の中から、よく使用されるものを例文とともに紹介する。なお、ここで取り上げる例文は全て第3文型(S+V+O)である。(太字が目的語)
Can I help you?
(私はあなたを助けることができますか?→ 何かお手伝いしましょうか?)
「you」は、動詞「help」の「目的語」。
He suggested changing the plan.
(彼は計画を変更することを提案した。)
動詞「suggested」の目的語は、「changing the plan」という「動名詞」から始まる句。「動名詞」も目的語になる。「動名詞」とは「動詞」を名詞にした形だ。
We decided to accept your offer.
(我々はあなたの提案を受け入れることにした。)
動詞「decided」の目的語は、「to accept your offer」という「to不定詞」の句。「to不定詞」を名詞として使えば目的語になる。ちなみに、文法用語では「to不定詞の名詞的用法」という。(覚える必要なない。)
We discussed how we could support him.
(我々はどのように彼をサポートできるか議論した。)
動詞「discussed」の目的語は、「how」から始まる「名詞節」。「節」とは、名詞と動詞を含む文の形をしたもの。ここでは、「how」から始まる「節」が名詞の働きをしているので「名詞節」という。
7. 英語の目的語|【発展】動詞の「目的語」②
「目的語」を2つ取る動詞の中から、よく使用されるものを例文とともに紹介する。なお、ここで取り上げる例文は全て第4文型(S+V+O+O)である。(太字が目的語)
Can you lend me some money?
(お金をいくらか貸してもらえないか?)
動詞「lend」の間接目的語が「me」で、直接目的語が「some money」。ちなみに、「Can you lend some money to me?」と書き換えられる。この場合は第3文型になる。
I want you to come with me.
(私はあなたに一緒に来てほしい。)
動詞「want」の間接目的語が「you」で、直接目的語が「to come」。「to不定詞」が名詞として使用されて(to不定詞の名詞的用法)目的語になっている。
He showed me how to get to the station.
(彼は私に駅への行き方を示した。)
動詞「showed」の間接目的語が「me」で、直接目的語が「how to get to the station」。直接目的語が「how」から始まる「名詞句」になっている。
She told me that she wouldn’t go to college.
(彼女は私に大学には行かないといった。)
動詞「told」の間接目的語が「me」で、直接目的語が「that she wouldn’t go to college」。直接目的語が「that節」になっている。ちなみに、この「that節」は名詞の働きをしているので「名詞節」である。
8. 英語の目的語|【発展】前置詞の「目的語」
前置詞の「目的語」を、よく使用されるものを例文とともに紹介する。太字が前置詞の目的語だ。
I went shopping with her yesterday.
(私は昨日彼女と買い物に行った。)
「her」が前置詞「with」の目的語。
They decided to close the shop without asking me.
(彼らは私に聞かずに店を閉めることを決めた。)
前置詞「without」の目的語は、動名詞の「asking」(聞くこと)。ちなみに「me」は動名詞「asking」の目的語である。
The future of the company depends on how we solve this problem.
(会社の未来は、我々がこの問題をどのように解決するかにかかっている。)
前置詞「on」の目的語は、「how」から始まる「節」。ちなみに、この節は名詞の役割をしているので「名詞節」である。
9. 英語の補語|【発展】主語を説明する「補語」
主語を説明する「補語」を取る動詞の中から、よく使用されるものを例文とともに紹介する。なお、ここで取り上げる例文は全て第2文型(S+V+C)である(太字が補語)。全ての例文で、「主語 = 補語」になっていることに注意してほしい。
It is getting colder.
(寒くなってきた。)
形容詞「cold」の比較級「colder」が補語になっている。天候や気温を表すときの主語は「It」を使う。「It = colder」になっている。「is getting」は現在進行形なので「〜になってきている。」の意味。
Her dream is to become an actress.
(彼女の夢は女優になることだ。)
補語は名詞句の「to become an actress」(女優になること)。「to不定詞」が名詞として使用されて(to不定詞の名詞的用法)補語になっている。
He turned out to be a nice guy.
(彼はいいやつだった。)
動詞句の「turn out」は「〜だと分かった」のニュアンス。「to be a nice guy」(いいやつであること)という「to不定詞」から始まる名詞句(to不定詞の名詞的用法)が補語。
The problem seems that they don’t understand the basics.
(問題は、彼らが基本を理解していないということのようだ。)
「that節」の「that they don’t understand the basics」(彼らが基本を理解していないということ)が補語。この節は名詞の役割をしているので「名詞節」という。動詞「seem」は「〜のようだ」という意味を表す。
10. 英語の補語|【発展】目的語を説明する「補語」
第5文型「S+V+O+C」の形をとる動詞の中から、よく使用されるものを例文とともに紹介する(太字が補語)。全ての例文で、「目的語 = 補語」になっていることに注意してほしい。
My son drives me crazy.
(息子が私をおかしくする。)
形容詞「crazy」が「補語」になって、目的語「me」を説明している。「私をクレイジーな状態に導く」のニュアンス。
I kept her waiting for an hour.
(私は彼女を1時間待たせ続けた。)
動詞「wait」の現在分詞形「waiting」が「補語」になって、目的語「her」を説明している。「彼女を待っている状態にし続けた」のニュアンス。
My father let me use his car.
(父が車を使わせてくれた。)
[toなし]不定詞(動詞の原型)の「use」が「補語」になって、目的語「me」を説明している。「私が使うことを許した」のニュアンス。
His hard work made him what he is today.
(彼の多大な努力が彼を今の彼にした。)
名詞節「what he is today」(彼が今日あるところのもの → 今日の彼)が補語で、目的語「him」を説明している。「彼の多大な努力が、彼を、今の彼に作った。」のニュアンス。
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