TOEIC用単語集の『キクタンTOEIC TEST』シリーズを、英語と英語の学習方法を教えている立場から徹底検証することがこのコラムの目的だ。
The English Clubはこの教材を長年使用してきた。その積み重ねてきた経験と知識をもとに、本書の内容、使い方、効果についてできる限り客観的に、そして徹底的に検証したい。皆さまの英語学習の手助けになれば幸いだ。
『キクタンTOEIC TEST』シリーズを含む人気の単語帳7種類・23冊を徹底検証したコラム「【英単語帳】社会人におすすめは?人気の23冊を徹底検証!」も参考にしてほしい。
目次
1. キクタンTOEIC|おすすめ度 by The English Club
「音楽にのせて単語を覚える「チャンツ」が好きな方にはお薦めの単語集。単語・熟語の掲載基準に疑問が残るが、効率的に覚えられる学習法を提案している。【600】が一番のお薦め。」
「チャンツ」が好きな方の選択肢はこのキクタン・シリーズしかないだろう。また、本書は「目」「耳」「口」(加えて【500】は「手」)を使って、かつ、センテンスで覚えることを提唱しているが、これは、第二言語習得研究および脳科学(神経科学)研究の知見からも、非常に効率的な単語学習法だ。
CDには、見出し語、日本語の訳語、センテンスが収録されているので、本書を開けない場所でも、CDを聞くだけで単語が覚えられる。センテンスはナチュラル・スピードより若干遅めで録音されているので、英語の発音の入門用には非常によい。
一方で、見出し語はチャンツで録音されているので、単語のアクセントの位置が理解しづらいことが欠点の一つだ。
また、掲載されている単語や熟語の選択には疑問が残る。例えば【500】は、TOEIC350点程度以上の方向けだが、そのレベルでは覚える必要のない単語が少なからず掲載されている。【800】には、知らなくてもTOEIC満点取れるような単語・熟語も多い。【990】は、全く覚える必要がないと判断できる単語・熟語が少なくない。
これらの強みと弱みを考慮すると、このキクタンTOEICシリーズの中でお薦めできるのは【600】のみだ。【600】には、The English Clubが妥当だと判断できる単語・熟語が一番多い。The English Clubのオススメ度は、【600】が 3.0/5。その他が 2.5/5だ。
2. キクタンTOEIC|シリーズの対象レベル
本書に記載されている対象レベル(現在のレベル)をまとめたものが下の図だ。ちなみに、【500】と【600】の対象レベルは同じになっている。
キクタンTOEIC シリーズ |
対象レベル |
SCORE 500 | 英語初級以上 英検3級/TOEICスコア350程度から |
SCORE 600 | 英語初級以上 英検3級/TOEICスコア350程度から |
SCORE 800 | 英語中級以上 英検2級/TOEICスコア600程度から |
SCORE 990 | 英語上級以上 英検準1級/TOEICスコア730程度から |
3. キクタンTOEIC|シリーズに共通する宣伝コピー
【500】【600】【800】【990】に共通する宣伝コピー(本書に記載されているもの)を抜粋する。
・英語は聞いて覚える!「読む」だけでは、言葉は決して身につきません。私たちが日本語を習得できたのは、赤ちゃんのころから日本語を繰り返し「聞いて」きたから —「キクタン」シリーズは、この「当たり前のこと」にこだわり抜いた単語集・熟語集です。(…)「聞いて覚える」、そして「読んで理解する」、さらに「使って磨く」— 英語習得の「新しい1歩」が、この1冊から必ず始まります!
・本書では、音楽のリズムに乗りながら単語の学習ができる「チャンツ」を用意。
・TOEICの本試験・公式問題・模擬試験データと最新の語彙研究の成果であるコーパスを基に収録単語(・熟語*)を厳選していますので、「TOEICに出る」「日常生活で使える」ものばかりです。その上で「いかに効率的に単語・熟語を定着させるか」— このことを本書は最も重視しました。
(尚、【500】のみ、熟語は掲載されていないので(*)の言葉は含まれていない。)
4. キクタンTOEIC|個別の宣伝コピーと内容
キクタンTOEICシリーズ4種類のうち、【600】【800】【990】の3つは、掲載されている単語とその数が異なるだけで、掲載方法や「学習モード」と呼ばれる学習方法は同じだが、【500】だけは他と異なっている。それは、【500】のみ「書く」学習を取り入れているからだ。
それぞれの宣伝コピーと内容をご紹介する。
4.1. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 500」
4.1.1. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 500」の宣伝コピー
• TOEICテスト本試験で毎回のように登場する必修語彙448をわずか8週間でマスター!
• 「目」と「耳」から同時に単語をインプットし、さらに「口」に出していきますので、「覚えられない」不安を一発解消。「手」で書く学習も取り入れていますので、定着率が高まります。
• 1日8語 × 8週間、7のチャプターの「スケジュール学習」
• 1日最短2分、最長15分の「モード学習」
4.1.2. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 500」の利用法(本書に記載のもの)
1日の学習量は4ページ、学習単語数は8語です。1つの見出し語につき、定義を学ぶ「Check 1」、フレーズ中で単語を学ぶ「Check 2」、単語とフレーズを書いて学ぶ「Check 3」、センテンス中で単語を学ぶ「Check 4」、センテンスを書いて学ぶ「Check 5」と5つのチェックポイントがあります。
「学習モード」
• 聞くだけモードlevel 1:Check 1の該当(CD)トラックで「チャンツ音楽」を聞き流すだけのモード。学習時間の目安:1日2分
• 聞くだけモードlevel 2:Check 1の該当トラックで単語とその意味を押さえたら、Check 2の該当トラックを聞いて、Check 1で覚えた単語が使われているフレーズをチェック。学習時間の目安:1日3分
• 聞く&書くモードlevel 1:Check 1からCheck 3まで、テキストの指示に従って学習を進めましょう。学習時間の目安:1日5分
• 聞くだけモードlevel 3:Check 1、2、4の該当トラックを聞く学習モードです。学習時間の目安:1日8分
• 聞く&書くモードlevel 2:Check 1からCheck 5まで、テキストの指示に従って学習を進める、「かんぺきモード」です。学習時間の目安:1日15分
4.1.3. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 500」の内容
Chapter 1|名詞:超必修104 Day 1〜13(Page 17〜70)
Chapter 2|動詞:超必修72 Day 14〜22(Page 71〜108)
Chapter 3|形容詞:超必修32 Day 23〜26(Page 109〜126)
Chapter 4|名詞:必修104 Day 27〜39(Page 127〜180)
Chapter 5|動詞:必修72 Day 40〜48(Page 181〜218)
Chapter 6|形容詞:必修32 Day 49〜52(Page 219〜236)
Chapter 7|副詞・前置詞:必修32 Day 53〜56(Page 237〜254)
4.2. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 600」
4.2.1. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 600」の宣伝コピー
• 最新の出題傾向に対応!600点突破に必要な単語・熟語力に加えリスニング力も同時に身につきます!
• 米英2カ国発音対応のチャンツに加え、センテンス部は米英加豪の4ヶ国発音で収録。
• 「目」と「耳」から同時に単語をインプットし、さらに「口」に出していきますので、「覚えられない」不安を一発解消。読解・聴解力もダブルアップします。
• 1日16見出し × 10週間、11のチャプターの「スケジュール学習」!
• 1日最短2分、最長でも7分の3つの「モード学習」!
4.2.2. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 600」の利用法(本書に記載のもの)
1日の学習量は4ページ、学習単語・熟語数は16となっています。1つの見出し語・熟語につき、定義を学ぶ「Check 1」、フレーズ中で単語・熟語を学ぶ「Check 2」、センテンス中で学ぶ「Check 3」の3つ「モード学習」が用意されています。
3つの「学習モード」
• 聞くだけモード:Check 1だけの「聞くだけモード」。該当(CD)のトラックで「チャンツ音楽」を聞き流すだけでもOK。でも、時間があるときはCheck 2とCheck 3で復習も忘れずに。学習時間の目安:1日2分
• しっかりモード:Check 1とCheck 2を学習する「しっかりモード」。声に出してフレーズを音読すれば、定着度もさらにアップするはず。学習時間の目安:1日4分
• かんぺきモード:Check 1 > Check 2 > Check 3。できればみんな「かんぺきモード」でパーフェクトを目指そう。学習時間の目安:1日7分
4.2.3. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 600」の内容
Chapter 1|名詞:超必修160 Day 1〜10(Page 13〜55)
Chapter 2|動詞:超必修112 Day 11〜17(Page 57〜87)
Chapter 3|形容詞:超必修80 Day 18〜22(Page 89〜111)
Chapter 4|名詞:必修160 Day 23〜32(Page 113〜155)
Chapter 5|動詞:必修112 Day 33〜39(Page 157〜187)
Chapter 6|形容詞:必修80 Day 40〜44(Page 189〜211)
Chapter 7|副詞・前置詞:必修32 Day 45〜46(Page 213〜223)
Chapter 8|動詞句 Day 47〜61(Page 225〜287)
Chapter 9|形容詞句・副詞句 Day 62〜65(Page 289〜307)
Chapter 10|群前置詞句・群接続詞 Day 66〜68(Page 309〜323)
Chapter 11|その他の熟語 Day 69〜70(Page 325〜333)
4.3. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 800」
4.3.1. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 800」の宣伝コピー
• 最新の出題傾向に対応!800点突破に必要な単語・熟語力に加えリスニング力も同時に身につきます!
• 1日16見出し × 10週間、10のチャプターの「スケジュール学習」!
(他は「SCORE 600」と同じ。)
4.3.2. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 800」の利用法(本書に記載のもの)
*「SCORE 600」と同じ。
4.3.3. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 800」の内容
Chapter 1|名詞:超必修192 Day 1〜12(Page 13〜63)
Chapter 2|動詞:超必修96 Day 13〜18(Page 65〜91)
Chapter 3|形容詞:超必修96 Day 19〜24(Page 93〜119)
Chapter 4|名詞:必修192 Day 25〜36(Page 121〜171)
Chapter 5|動詞:必修96 Day 37〜42(Page 173〜199)
Chapter 6|形容詞:必修96 Day 43〜48(Page 201〜227)
Chapter 7|副詞:必修48 Day 49〜51(Page 229〜243)
Chapter 8|動詞句 Day 52〜66(Page 245〜307)
Chapter 9|形容詞句・副詞句 Day 67〜69(Page 309〜323)
Chapter 10|群前置詞 Day 70(Page 325〜331)
4.4. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 990」
4.4.1. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 990」の宣伝コピー
• 最新の出題傾向に対応!990点突破に必要な単語・熟語力に加えリスニング力も同時に身につきます!
• 1日16見出し × 10週間、9のチャプターの「スケジュール学習」!
(他は「SCORE 600」と同じ。)
4.4.2. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 990」の利用法(本書に記載のもの)
*「SCORE 600」と同じ。
4.4.3. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 990」の内容
Chapter 1|名詞:超必修240 Day 1〜15(Page 13〜75)
Chapter 2|動詞:超必修112 Day 16〜22(Page 77〜107)
Chapter 3|形容詞:超必修112 Day 23〜29(Page 109〜139)
Chapter 4|名詞:必修240 Day 30〜44(Page 141〜203)
Chapter 5|動詞:必修112 Day 45〜51(Page 205〜235)
Chapter 6|形容詞:必修112 Day 52〜58(Page 237〜267)
Chapter 7|副詞:必修48 Day 59〜61(Page 269〜283)
Chapter 8|動詞句 Day 62〜68(Page 285〜315)
Chapter 9|形容詞句・副詞句 Day 66〜70(Page 317〜327)
5. キクタンTOEIC|シリーズの学習効果分析 by The English Club
まずは【500】【600】【800】【990】に共通する部分についての内容、やり方、効果を検証する。
5.1. 「チャンツ」には注意が必要!
キクタンTOEIC TESTシリーズに共通する「チャンツ」は人によって好き嫌いがある。音楽にのせて英単語と日本語の訳語が収録されているので、それが「合わない」「好きではない」という方も少なくないだろう。ちなみに筆者の好みではない。
加えて、「チャンツ」は音楽にのせて発音しているので、単語のアクセントの位置がわかりづらくなっている。単語を覚える際は、発音も同時に覚えることが必須だが、特にアクセントの位置は重要だ。それがわかりにくいというのは致命的だろう。
5.2. 掲載されている単語には注意が必要!
掲載されている単語の選定については、「TOEICの本試験・公式問題・模擬試験のデータに加え、最新の語彙研究から生まれたコーパスのデータを徹底的に分析。」とある。しかし、分析したコーパスの名称もしくは概要を明記していないので不安が残る。
ちなみに、効率的に単語を学習したいのであれば、単語集の掲載基準には十分に気を配った方がいい。間違っても「豊富な経験から厳選した単語を掲載」などと謳った時代遅れの単語集は避けた方が無難だ。
5.3. 記載されている学習法には注意が必要!
【500】には「必修語彙448をわずか8週間でマスター!」とある。【600】【800】【990】にも同じような記載があるが、「○週間でマスター!」とは、本書が勧める本書の利用法を1回通してやった期間だ。1回通しただけで全て覚えられる(マスターできる)人はいないのでこの記載には注意が必要だ。
6. キクタンTOEIC|個別の学習効果分析 by The English Club
【500】【600】【800】【990】のそれぞれの内容、やり方、効果について検証する。
6.1. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 500」の学習効果分析
6.1.1. 掲載単語の選定に難あり!
掲載されている単語のほとんどは覚えておかなければならない重要単語だが、中にはこのレベルで覚える必要のない単語も少なくない。例えば、「238. detour」(迂回路)や「078. plumber」(配管工)という単語が載っているが、これらの単語は大学英語教育学会基本語リストに基づく「JACET8000」の8,000語にも含まれていない。
「JACET8000」とは、ブリティッシュ・ナショナル・コーパス(British National Corpus)をベースとし、アメリカ英語や日本での各種試験を考慮した上で8,000語を厳選し、使用頻度順に並べた語彙リストだ。このJACET8000にも若干の問題があるが、掲載単語を選別する際に使用したコーパスの詳細を明らかにしていないキクタンTOEICに比べて、はるかに信頼できる語彙リストだ。
上記で挙げた単語以外にも、「379. curb」(〜を抑制する)や「265. token」(印)など、【500】レベルには不適切な単語が掲載されている。このような単語は覚える必要がないということではない。より重要な単語は他にも沢山あるので、それらを掲載した方が圧倒的に効率的に学習できる。
6.1.2. 学習方法・CDの内容には高い評価
本書おすすめの「学習モード」では、CDを聞いて、テキストで読んで、発音して、書くという「耳」「目」「口」「手」を使った学習方法を提案しているが、これは脳に定着しやすい効率的な学習方法と言えるだろう。なぜなら、脳をあらゆる方向から刺激した方が記憶に定着しやすくなるからだ。目だけではなく、耳・手・口も使えば発音やスペルも覚えられる。
フレーズやセンテンスで単語を覚えることも効率的な単語学習方法だ。その単語の使われ方や、前後にどのような単語がくるのか(「コロケーション」という。)についても同時に覚えられる。更に、掲載されているセンテンスは自然な表現なものが多い。
CDには下記の順番で収録されている。日本語の訳語も収録してあるので、テキストを開かなくても、聞くだけで単語が覚えられる。また、フレーズやセンテンスの読み上げの速さはナチュラルスピードより遅いが、英語の発音(リズム・音声変化・イントネーションなど)の入門練習用としては良い。
- 見出し語(チャンツあり)
- 見出し語の日本語訳語(チャンツあり)
- 見出し語を含んだ短いフレーズ(チャンツなし)
- フレーズの日本語訳語(チャンツなし)
- 見出し語を含んだ短いセンテンス(チャンツなし)
6.2. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 600」の学習効果分析
6.2.1. 【500】と【600】の違い
【600】と【500】は、同じ「英語初級以上」(英検3級/TOEICスコア350程度から)を対象としているが、内容は次の点で異なっている。
- 掲載単語数(見出し語):【500】は448語、【600】は736語
- 掲載熟語数(見出し語):【500】は0、【600】は384
- 学習方法:【500】は書いて覚えられる構成になっているが、【600】はそれを省いて掲載単語・熟語数を増やしている。
6.2.2. 掲載熟語の選定に難あり!
掲載熟語のほとんどは、このレベルで覚えておかなければならないものばかりだが、中には重要性がかなり低いものを含まれている。例えば、「1101. a host of 〜」(多数の〜)だが、この意味での「host」は、前出の「JACET 8000」には一切記載がない。その他にも、「これを覚えるのであれば、もっと重要なものがあるだろう…。」というものが散見されるので注意が必要だ。
単語の方は、【500】に比べて改善されている感がある。掲載単語数は【500】よりも【600】の方が圧倒的に多いのにも関わらず、上記【500】のところで指摘した「238. detour」などは一切掲載されていない。
6.2.3. 学習方法・CDの内容には高い評価
【500】以外の【600】【800】【990】は、「手」を使って「書いて覚える」ページ構成にはなっていない。しかし、「耳」「目」「口」を使って覚えることを中心として、どうしても覚えられないものや、スペルが難しい単語については、自分の判断で「書く」作業を加えれば十分だろう。
フレーズやセンテンスで覚えるところは、このシリーズの評価できる点だ。【600】のフレーズやセンテンスも自然の表現のものが多い。
【600】のCDには以下が収録されている。TOEICを意識して4カ国の発音を収録していることは評価するが、フレーズの音声が収録されていないのが残念だ。センテンスの読み上げの速さは、【500】同様、ナチュラルスピードより遅いが、英語の発音(リズム・音声変化・イントネーション)の入門練習用としては良い。
- 見出し語(1回目・米発音)(チャンツあり)
- 見出し語の日本語訳語(チャンツあり)
- 見出し語(2回目・英発音)(チャンツあり)
- 見出し語を含んだ短いセンテンス(米・英・加・豪発音のいづれかで1回のみ)(チャンツなし)
なお、【500】と【600】の選択で迷っている場合は、【600】をお勧めする。理由は以下の3つ。① 掲載単語数が【600】の方が圧倒的に多い、②【600】は重要熟語が覚えられる、③【500】は重要度の低い単語が少なくない。
6.3. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 800」の学習効果分析
6.3.1. 掲載単語・熟語の選定に難あり!
【800】には、知らなくてもTOEIC(L/R)で満点取れる単語や熟語が少なくない。例えば、「0288. mount」(〜を実施する)、「0396. perishable」(生鮮食品)、「0642. drain」(〜を枯渇させる)などは前出の「JASET 8000」には(少なくともカッコ内での意味では)掲載すらされていない。このような、時間と労力をかけて覚えても無駄になる可能性が高い単語・熟語がかなり掲載されているので注意が必要だ。
ちなみに、掲載単語・熟語数は以下の通り。
- 掲載単語数(見出し語): 816語
- 掲載熟語数(見出し語): 304
6.3.2. 学習方法・CDの内容は評価できる
学習方法とCDの内容は【600】と同じだ。センテンスの読み上げの速さは、【500】【600】とあまり変わらずナチュラルスピードよりも遅めなので、このレベルを使用する方にはリスニング強化にはつながらないだろう。
6.4. 「キクタンTOEIC TEST SCORE 990」の学習効果分析
この【990】は使用する必要はない。このシリーズを使用するのであれば、【800】までで十分だ。その理由は、① 覚える必要のない単語が少なくないから。そして、② このレベルになったら日本語の訳語を覚えることは英語力向上の弊害になるからだ。
【990】には覚えなければならない単語も多く掲載されている。しかし、滅多に出会わない、覚える必要のない単語も多い。このような単語集で学習することは無駄が多くなってしまう。時間と労力を費やしてやっと覚えたとしても、1年に1回も出会わないため、結局忘れてしまうからだ。
また、英単語の日本語の訳語を覚える勉強は、ある程度の英語力がある方にはお勧めしない。英語を日本語に変換して理解する癖が抜けなくなるからだ。我々の究極の目標は、英語を英語のまま理解し、英語で考えたことをそのまま英語で表現することだ。そこに日本語の入る余地はない。いちいち日本語を介入させていたらスムーズな会話などできない。
【800】で語彙力増強は終了していいと言っている訳ではない。【800】レベルの単語力を獲得したあとは、①比較的やさしい英文を多く読む、②英英辞典を活用する、そして、③語源を意識することなど、日本語を介入させない方法で語彙を増強していって欲しい。詳細は「英単語の覚え方|みんな実践中!8つの基本トレーニングと25のコツ」を参考にして欲しい。
7. キクタンTOEIC|おすすめ使い方 by The English Club
キクタンTOEIC TESTシリーズのおすすめ使い方をご紹介する。
下図のように5つ(書き取りを含めて6つ)のアクティビティからなるトレーニングだ。The English Clubでは、これらのトレーニングを「自動化トレーニング」と呼んでいる。英単語を無意識的・自動的に理解し、使えるようにするためのトレーニングだからだ。
それぞれのトレーニングを単独で行っても効果はある。しかし、上図のように組み合わせて行うと、より高い効果が期待できる。なお、慣れてきたら音読とシャドーイングだけを繰り返せばよい。それでは、順番にやり方を説明する。
7.1. アイ・シャドーイング(Eye-shadowing)
テキストを見ながら「チャンツ」(見出し語と日本語)を聴いてみる。意味はもちろんだが、発音(必ずアクセントの位置にも注意すること!)を意識して何度か繰り返し聴いてみる。次に、テキストを見ながら「フレーズ(【500】のみ収録)」と「センテンス」を何度か聴いてみる。
7.2. 音読(Reading-aloud)
音源を止め、見出し語とフレーズ・センテンスを大きな声で音読しながら、意味や文の構造を確認する。わからないところは本書や辞書で確認すること!
7.3. オーバーラッピング(Overlapping)
再度テキストを見ながら、そしてチャンツ・フレーズ(【500】のみ)・センテンスを聴きながら、唇を音源に合わせて動かしてみる(リップ・シンク/口パク)。発音が理解できたら、今度は音源にぴったりと合わせて、自分でも発音しながらついていく(オーバーラッピング)。
7.4. 音読(Reading-aloud)
音源を止め、フレーズとセンテンスを大きな声で音読する。読みながら意味が頭にスーッと入ってくるようになるまで繰り返す。その後、個々の発音、アクセントの位置、音声変化、強弱、イントネーションを意識して再度何度か音読する。発音が曖昧な場合は、リップ・シンクで確認してから再度音読する。
なお、音読のやり方や効果についての詳細は「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」を参考にして頂きたい。
個々の発音、アクセントの位置、音声変化、強弱、イントネーションについての詳細は「英語の発音|初心者向け科学的見地からの6つのコツと矯正・練習方法」を参考にして頂きたい。
7.5. シャドーイング(Shadowing)
テキストを見ずに、チャンツ、フレーズ(【500】のみ)・センテンスの音源を聴き、1語程度遅れて、自分でも発音しながら影(shadow)のようについていく。その際、必ず意味と発音を意識しながら行う。うまくできない場合は、一旦、オーバーラッピングや音読に戻ってから、再度シャドーイングに挑戦してみる。
なお、シャドーイングのやり方や効果についての詳細は「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」を参考にして頂きたい。
7.6. (おまけ) 書き写し(Transcribing)
【500】は書く練習も取り入れているが、【600】【800】【990】でも「書き写し」の練習を行うことをお勧めする。
フレーズやセンテンスを黙読もしくは音読し、ノート(【500】の場合はテキスト)に書き写す。その際、センテンス一文(もしくはフレーズ一つ)を一気に書き写すようにすると高い効果が期待できる。途中でチラチラと見ないようにする。この「書き写し」は、シャドーイングの前、もしくは後に行うとよい。
* 余裕が出てきたら、掲載されている各単語の派生語・関連語も確認しましょう。音声がないので、発音がわからない場合は発音記号を確認し、発音しながら覚えよう。
なお、ビジネスパーソンの皆さまには、「キクタン(元祖)」「キクタン・リーディング」「キクタンTOEIC」「キクタン・ビジネス」の内容・使い方・効果を比較検証したコラム「キクタン徹底検証|ビジネスパーソン向け4種類の内容・使い方・効果」も参考にして頂きたい。
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- アウトプット(話す・書く)能力向上のためのリハーサル・トレーニング法
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そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。