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公開日:
2024.05.08
更新日:
2024.05.09

英語脳|英語の思考回路とバイリンガル脳が必要な理由と作り方

英語を流暢に使いこなせるようになるためには「英語脳」を獲得することが必須です。

日本では、「日本語脳」の中で英語を操(あやつ)ることを目標にした教育が未だに続けられています。そのような前近代的な英語学習方法からは脱却しなければ、「アジアで一番英語ができない日本人」と罵(ののし)り続けられることになります。

大人になってからでも「英語脳」は獲得できます。しかし、英会話スクールや瞬間英作文では「英語脳」は作れません。TOEICではアウトプットの「英語脳」は作れません。

では、どうすればいいのでしょうか?脳科学(神経科学)研究と第二言語習得研究の知見から、「英語脳」を作る効率的なトレーニング方法を紹介します。

1. 「英語脳」・「英語の思考回路」・「バイリンガル脳」とは?

自動化

「英語脳」「英語の思考回路」って何?

「英語脳」とは、英語を使うときの「思考回路」のことです。「英語回路」ともいいます。

このコラムでは「英語脳」「英語の思考回路」「英語回路」を同じ意味で使っています。

「英語を習得する」ということは、「日本語」に加えて、もう一つ新しい「英語」という言語を獲得することです。新しい「英語」という言語を獲得するには、頭(脳)の中に「日本語回路」とは別の「英語回路」を獲得する必要があります。

日本語を使うときは「日本語の回路」、英語を使うときは「英語の回路」を使います。この2つは、それぞれ独立しています。

「英語脳」の存在は科学的に証明されています。科学雑誌『Nature』に掲載された脳科学(神経科学)の論文によると、高校生以降に英語を習得してバイリンガル(bilingual)になった人の脳波を調べたところ、母語(日本人の場合は日本語)を使用するときと、英語を使用するときでは、脳の別の領域が活動するという実験結果が得られたそうです。

また、新潟大学脳研究所教授の中田氏の実験では、日本人が日本語を使っているときと、アメリカ人が英語を使っているときで、それぞれ脳の活動がはっきりと違ったそうです。東京大学大学院神経生理学准教授の池谷氏は、その理由として、「日本語と英語の持つ音韻や文法構造の違い」などが考えられるとしています。

「バイリンガル脳」って何?

「バイリンガル脳」とは、例えば日本語と英語のバイリンガル(二言語使用者)であれば、日本語回路(日本語脳)と英語回路(英語脳)の2つの回路を持つ脳のことをいいます。

生まれ育った環境により「バイリンガル脳」になった方、そして意識的に英語を学習・習得して「バイリンガル脳」を獲得した方がいます。大人になってからでも「バイリンガル脳」を獲得することは決して不可能ではありません。

日本語と英語の「バイリンガル脳」を獲得するということは、「英語脳」「英語の思考回路」「英語回路」を獲得するということと同じです。

英語を流暢に使いこなせるようになり、あなたの目標を達成するために、「英語脳」=「英語の思考回路」=「英語回路」=「バイリンガル脳」の獲得を目指しましょう!

2. 「日本人」が英語を話せるようになるには「英語脳」が必須?

脳

なぜ「英語脳」が必要なのでしょうか?それは、「日本語脳」で英語を使っている限り、英語の流暢性は向上しないからです。

「日本語脳」で英語を使うということは、「日本語回路」の中で英語を使うということです。

「聞く」と「話す」に分けて考えてみると、「日本語回路」で英語を「聞いて」理解するということは、英語を日本語に訳しながら理解するということです。「日本語回路」で英語を「話す」ということは、日本語を英語に訳しながら英語を話すということです。

このように、いちいち「英語 ↔︎ 日本語」と頭の中で訳していたら、スムースにコミュニケーションできるはずがありません。なぜなら、まず、頭の中で「訳す」ための時間がかかってしまいます。そして、「○○は英語/日本語でなんていうんだ?」で必ずつまってしまいます。

それでは、なぜ、訳すのに時間がかかったり、途中でつまったりしてしまうのでしょうか?その理由を説明します。

英語は日本語とは「言語グループ」が全く異なる!

英語と日本語は「言語グループ」が全く異なり、共通する点がほとんどない全く異なる言語です。したがって、頭の中で訳しながら話すことが難しいのです。

英語は「インド・ヨーロッパ語族」という言語グループに属しています。そのグループには、英語のほかにフランス語やドイツ語など、ヨーロッパで話されている言語のほとんどが含まれます。

それらの言語は非常に似ています。全てアルファベット(alphabet)を使用しており、発音は基本的にそのアルファベットに従っています。単語も似たものがたくさんあります。文法についても、「主語(S)+ 動詞(V)」の順番など似ているところがたくさんあります。

一方、日本語はインド・ヨーロッパ語族の英語とは下記の通り「全く」異なります。

文字と単語 アルファベットはそれ自体には意味はありませんが、漢字はそれ自体に意味を持ちます。単語の成り立ちが全く異なり、単語自体も全く異なります。
文法 単語の並べ方や文の作り方が全く異なります。例えば、日本語には「てにをは」などの「助詞」が存在しますが、英語にはなく、そのかわり語順でその意味を表します。
発音 日本語の母音は5つですが、英語の母音は24あります*。日本語の子音は16ですが、英語の子音は24あります*。英語には日本語にはない口の動かし方をしなければならない発音がたくさんあります。

* 諸説あります。

英語と日本語とは、似ているところが皆無といっていい言語なので、頭の中で訳すことに時間がかかったり、つまったりしやすくなるのです。

英語は日本語とは「思考の順番」が全く逆!

日本人が英語を話すときには、「思考の順番」の順番を逆にしなければなりません。頭の中で訳しながら話すことが難しい2つ目の理由です。

私たち日本人は中学生の頃、英文を日本語に訳すために、英文を後ろから「戻り訳す」ことをやらされてきました。なぜ後ろから「戻り訳す」のでしょうか?それは、後ろから「戻り訳す」と、自然な日本語に訳せるからです。

それでは、なぜ、後ろから「戻り訳す」と、自然な日本語になるのでしょうか?それは、日本語と英語では、全く同じことを表現する場合でも、単語の並べ方が全く逆だからです(主語を除く)。単語の並べ方が全く逆なので、英文を後ろから「戻り訳す」と、自然な日本語になるのです。

では、単語の並べ方が逆だということはどういうことかというと、「思考の順番」が逆だということです。

頭の中で日本語から英語に訳しながら話すには、「思考の順番」も逆にしなければならないのです。

英語は日本語とは「論理展開」が全く逆!

日本語と英語の論理展開も全く逆です。頭の中で訳しながら話すことが難しい3つ目の理由です。

例えば、日本語での会社の会議の際、自分の意見をいうときの論理展開は通常「説明 → 結論」です。下記のように、自分が一番言いたいこと(下線部)は最後に言うのが普通です。

アメリカの経済は現状○○です。その中で○○社は○○な状況なので、
我が社は○○すべきだと思います。

しかしながら、もしあなたがこの論理展開のまま英語で話したらどうなるでしょうか?結論を言う前に、必ず英語のネイティブスピーカーが途中で割り込んできます。そして、あなたが一番言いたかったことは言えないままになってしまいます。

なぜこのようなことが起こるのかというと、英語では自分が一番言いたいことは最初に言うことが当たり前だからです。英語は「結論 → 説明」の論理展開で話さないと理解してもらえません。「説明」から話し始めた時点で聞いてもらえないということです。

「結論」が言えない、聞いてもらえないだけならまだ「まし」です。最悪の場合は、頭が悪いと思われ、次回からは発言の機会さえ与えられなくなってしまうでしょう。たとえ英語ができても、英語の論理展開を理解していないと、コミュニケーションも取れなくなるということです。

頭の中で日本語から英語に訳しながら話すには、「論理展開」も逆にしなければならないのです。

「日本語脳」では英語を使いこなせない!

私たち日本人が、「日本語回路」の中で英語を話すには次のことを頭の中で瞬時に行わなければならないということです。

頭に浮かんだ自分が言いたい日本語の文章の一つ一つの単語を瞬時に全て英単語に変換し、
その並べ方を瞬時に逆にして、かつ、論理展開も瞬時に逆にしながら英語を話す。


このようなことができると思いますか?いいえ、「絶対に」できません。「絶対に」不可能です。日本語と英語では、あらゆる面で全く異なる言語です。対極に位置する言語だと言っても過言ではありません。だからこそ、日本語を英語、そして英語を日本語に訳しながら流暢にコミュニケーションすることは不可能なのです。

日本人が英語を流暢に使えるようになるには、日本語を介入させずに英語のみで完結し、英語の思考の順番や論理展開が備わっている「英語脳」=「英語の思考回路」=「英語回路」=「バイリンガル脳」を獲得することが必須なのです。

「英語脳」の獲得が必須なことを証明する最も簡単な方法とは?

日本人が英語を流暢に話せるようになるには「英語脳」の獲得が必須であるということを証明する簡単な方法があります。それは、皆さまの周りにいる英語を流暢に話せる人に下記の質問をしてみることです。

英語を話すときに、頭の中で日本語から英語に訳していますか?

「訳していない」と答えた人は、英語脳で英語を使っている方です。本当に流暢に英語を話せる人は、絶対に訳していません。一方で中途半端に英語を話せる人は、訳している可能性が高いでしょう。訳しているから中途半端なのです。

是非、皆さまの周りの方に聞いてみてください。

3. 「英語脳」を作るには「脳内プロセス」を変える?

推測

「英語脳」を作るためには、英語を使うときの脳内のプロセスを変える必要があります。

英語を流暢に使えるようになるためには、日本人が日本語を「聞く」「話す」ときの脳内のプロセスを英語でもできるようにしなければなりません。日本語を使うときには頭の中には日本語しかありません。英語を使うときにも頭の中には英語しかない状態にします。

英語の習得を目指している全ての方が、最初は英語を使うときにも日本語を介入させた脳内プロセスになっていますが、それを、日本語を介入させない脳内プロセスに変えていくのです。

「聞く」「話す」の「脳内のプロセス」

人間が言語を「聞く」「話す」ときの「脳内プロセス」は以下になります。

聞く(リスニング) ① 単語の発音を聞き取って、その意味を理解する
② (同時に) 聞いた文の構文や文法構造を解析し理解する
話す(スピーキング) ③ 適切な単語を選ぶ
④ 構文・文法に沿って組み立てる
⑤ 適切な発音・イントネーションを選び発話する

当たり前ですが、「聞く」ときと「話す」ときとでは、脳内のプロセスが全く異なることがわかります。

私たち日本人は、日本語を聞くときは①と②、話すときは③〜⑤のことを無意識的・自動的にできています。しかしながら、英語ではできていないので流暢に英語を使うことができないのです。

英語でも①と②、③〜⑤のことを無意識的・自動的にできるようにするためには、まずは単語・文法・発音の言語の基本要素の知識の習得する必要があります。そして、ある程度知識を習得した段階で、日本語を排除していくことが重要になります。

なお、上記の①と②、③〜⑤のことを無意識的・自動的にできるようにすることを、第二言語習得研究で「自動化」と呼んでいます。また、「聞く」ときの脳内のプロセスの「自動化」を「インプットの自動化」、「話す」ときの脳内のプロセスの「自動化」を「アウトプットの自動化」といいます。

「英語脳」を獲得するというのは、英語での「インプット」と「アウトプット」を「自動化」することなのです。

これらの言語を使うときの脳内のプロセスについては「【英会話勉強法完全マニュアル】初心者が独学でビジネスレベル」でも詳しく説明しているのでこちらも読んでみてください。

「インプット」の「自動化」

インプットの自動化、つまり、英語を「聞く」ときの脳内プロセスを「自動化」するというのは、「英語を英語のまま、英語の語順で理解する」ということです。日本語に訳して理解しません。そして、後ろから戻り訳すこともしません。

例えば、TOEICのPart 1〜4はリスニング力を測定するセクションですが、聞いた英語をいちいち日本語に訳して理解していたら絶対に高得点は取れません。また、音声の英語はどんどん消えていくので「後ろから戻り訳す」こともできません。

TOEICのリスニングセクションで高得点を取るにも、聞いた英語を英語のまま、英語の語順で理解できるようにしなければならないということです。つまり、「インプットの自動化」が必要だということです。TOEICに限らず、英語で流暢にコミュニケーションするには日本語を排除が必須なのです。

「アウトプット」の「自動化」

アウトプットの自動化、つまり、英語を「話す」ときの脳内プロセスを「自動化」するというのは、「言いたいことを直接英語にして話す」ということです。頭の中で日本語を英語に訳すことはしません。

日本人が英語を話すときの頭の使い方は下図の①と②の2通りあります。

英語を話すときの頭の使い方

①は、自分が言いたいことを一旦日本語にして、その日本語を英語に訳して英語を話すという頭の使い方です。

②は、自分が言いたいことを直接英語にして、その英語を話すという頭の使い方です。こちらは日本語が介入しません。

英語の習得を目指す全ての方が、最初は①の頭の使い方で英語を話す練習をします。しかし、この頭の使い方をしている限り、英語を流暢に話せるようにはなりません。なぜなら、頭の中で英語に訳すのに時間がかかります。そして、必ず「○○は英語で何ていうんだ?」でつまってしまうからです。

私たち日本人が英語を流暢に話すためには、いつも②の頭の使い方で英語を話せるようになることが究極の目標となります。

どうすれば、①から②の頭の使い方にスムースに移行できるのか?つまり、どうすれは英語を話すときに日本語を排除できるのか?ということが一番の課題となります。

4. 【注意!】「バイリンガル脳」と「通訳の脳」とは異なる!

英語脳を持った人

「バイリンガル脳」と「通訳の脳」とは全く異なります。つまり、英語と日本語の両方の言語で流暢にコミュニケーションが取れるということと、英語と日本語の通訳をできることは全く異なるスキルが必要だということです。

英語と日本語の両方の言語で流暢にコミュニケーションが取れるバイリンガルの方のなかで、通訳が苦手な方が多いというのがその証拠となります。

日本語と英語の「バイリンガル脳」とは、日本語回路(日本語脳)と英語回路(英語脳)の2つの回路を持つ脳のことであると説明しました。日本語を使うときは日本語回路、英語を使うときは英語回路を使い、それぞれ独立しています。それぞれ独立しているからこそ、通訳が苦手なのは当たり前なのです。

一方で、「通訳の脳」というのは特殊な脳だと言っても過言ではありません。通訳の方の頭の使い方は2通り考えられ ます。一つ目は、1つの回路で2つの言語を操る方法。これは、日本語の回路で英語を操ることを極めることです。しかしながら、日本語と英語の違いが非常に大きいことを考えると、通訳ができるまでこのスキルを磨くことは現実的ではないでしょう。

もう一つは、別々の回路で2つの言語を操ってはいますが、2つの回路が独立しておらず、つながっている場合です。通常、2つの回路は独立しているので、頭の中で日本語を英語に訳したり、英語を日本語に訳したりはしません。しかし、特殊な訓練をすることにより、2つの回路をつなげ、2つの言語を瞬時に「変換」する能力をつけるということで す。こちらの方が現実的でしょう。

いずれにしろ、通訳を職業にするには、特殊な能力が必要ということです。そして、英語学習者にとって注意しなければならないことは、通訳になるための英語の学習方法と、英語で流暢にコミュニケーションを取れるようにする学習方法とは異なるということです。

5. 【注意!】「日本の英語教育」では「英語脳」は作れない!

否定

日本の学校教育では、文明開花のときから「文法訳読方式」という学習方法で英語を教えてきました。現在でも全く変わっていません。この学習方法では「英語脳」を作ることはできません。

「文法訳読方式」というのは、「文法を重視してして解する方式」です。この方法は、もともとは太古の古文書などに書かれた古代文明の文字を「解読」する方法です。つまり、私たち日本人は、「英語という異国の文字を正確に解読する方法」で英語を学んでいるのです。

この「文法訳読方式」は、英語の文字を正確に日本語に訳して理解することを重視します。だから私たちは、英文を後ろから戻り訳しながら、正確な日本語にして理解することを散々やらされてきたのです。これはまさに「日本語脳」で英語を理解することであり、「英語を英語のまま英語の語順で理解できる」ようにするための「英語脳」を作ることにはつながりません。

加えて、「文法訳読方式」は言語の基本の3要素の一つである「発音」は全く無視しています。文字言語だけを重視して音声言語を無視しているので、聞いた英語を英語のまま英語の語順で理解する「英語脳」も作ることはできません。

極めつけは、「文法訳読方式」は、そもそも英語を「使う」ことを前提としていないということです。言語を「読む・聞く」ときの脳内プロセスと、「話す・書く」ときの脳内プロセスは全く異なることを説明しましたが、英語を「話す・書く」ための脳内プロセスを鍛えることは全く行ってきていないので、英語を英語のまま表現する「英語脳」も作ることはできません。

「文法訳読方式」では、インプットの自動化にもアウトプットの自動化にもつながらないため、「英語脳」「英語回路」を作ることにはつながらず、結果、残念ながら日本人は英語を使えるようにはなっていないということです。

なお、日本の英語教育の問題点と改善方法については「【日本の英語教育】これが絶望的問題点と絶対的改革案だ!」に詳しく書きましたのでこちらも読んでみてください。

6. 【注意!】「英会話スクール」では「英語脳」は作れない!

落ちる人

残念ながら、英会話スクールでは「英語脳」を作ることはできません。インプットの自動化は全く期待できませんし、アウトプットの自動化については、「変な英語」が身につくというリスクの方が高くなります。「オンライン英会話で英語脳を作ろう!」というような宣伝文句を目にすることがありますが、注意した方が賢明です。

英会話スクールは「インプットの自動化」には全く効果はない!

まず、英会話スクールは英語を話す練習をする場です。読んだり聞いたりしたりした英語を「英語を英語のまま英語の語順で理解する」練習にはなりません。インプットの自動化のトレーニングには全くなりません。したがって「英語脳」の獲得にもつながりません。

英会話スクールでも講師の英語を聞いたり、テキストの英語を読んだりしていると反論するかもしれませんが、その程度の英語を聞いたり読んだりしてもインプットの自動化には全くと言っていいほど効果はありません。

英会話スクールは「アウトプットの自動化」にも全く効果はない!

英会話スクールはアウトプットの自動化には効果があると思われるかもしれませんが、こちらも注意が必要です。確かに、英会話スクールでは、講師から話すように促されますので、あまり考える暇もなく、英語を口から出さなければなりません。したがって、これを繰り返すことで口から英語が出てきやすくなり、英語が話せるようになると思われがちですが、そう甘くはありません。

英会話スクールでは、あまり考える暇もなく英語を口から出さなければならないので、単語も文法もめちゃくちゃな英語を口から出してしまうリスクが高くなります。第二言語習得研究では、これは、英語の学習で最も避けなければならない「化石化」につながると指摘されています。

めちゃくちゃな英語を話すと、講師が正しい表現方法を教えてくれます。しかしながら、人間の脳というのは、人から聞いたことなどはよほどのことをしない限り一晩寝れば忘れてしまいます。一方で、一瞬でも自分で考えて苦労して作っためちゃくちゃな英語の方が頭に定着してしまいます。そして、また同じようなことを言うときに同じ失敗を繰り返すということになります。

これが、特に初心者が絶対に避けなければならない「化石化」という現象です。英会話スクールやオンライン英会話を長くやっている人でめちゃくちゃな英語を話す人が多い理由です。

英語を話すためのアウトプットの自動化を進めるには、オンライン英会話などで実際に英語を話す機会を確保する前に、自分一人で、頭の中で英語の文章を作るトレーニングをする必要があります。重要なことは「化石化」を避け、シンプルで正確な英文を作れるようにすることと、頭の中で英語の文章を作るときには日本語を介入させないことを目指すということです。

なお、英会話スクールの危険性については「英会話教室・スクールの効果|※第二言語習得研究からの警鐘!」に詳しく書きましたのでこちらも読んでみてください。

7. 【注意!】「瞬間英作文」は「英語脳」を作る弊害になる!

通訳

「瞬間英作文」は「英語脳」を作れないばかりか、「英語脳」を作る弊害になります。ちなみに「瞬間英作文」というトレーニング方法は、「日本語を瞬間的に訳して語の作文をする練習」です。書籍が販売されているので知っている人も多いと思いますが、非常に注意が必要なトレーニング方法です。

頭の中で日本語を英語に訳しながら英語を話す練習を続けていると、日本語を英語に訳さないと英語が話せなくなってしまいます。つまり、最初に日本語で言いたいことを思い浮かべないと、英語が話せなくなるということです。これでは、いつまでたっても英語を使うときに日本語を頭から排除することができません。

「瞬間英作文」は、文明開花から続く日本の英語教育法である「文法訳読方式」の延長でしかありません。日本語を正確に訳すスピードを上げることで英語のスピーキング力の向上を目指すトレーニングですが、これはまさに、日本語脳の中で英語を操(あやつ)ることを極めようとすることです。このやり方では、流暢に英語を使える能力は絶対に身につきません。

繰り返しになりますが、英語を習得するということは、日本語に加えて、英語という新しい言語を獲得することです。日本語で英語を遠隔操作できるようにすることではありません。また、日本語のOS(オペレーティング・システム)で、英語というアプリを使えるようにすることではありません。英語のOSをもう一つインストールするということです。

なお、瞬間英作文の弊害については「瞬間英作文の効果|始める前に知るべき科学的見地からの注意点」に詳しく書きましたのでこちらも読んでみてください。

8. 【注意!】「TOEIC」ではアウトプットの「英語脳」は作れない!

悪い点

TOEIC(Listening & Reading)に偏(かたよ)った英語学習では、アウトプットの「英語脳」は作ることができません。

TOEICは、英語を「読む・聞く」能力を測定するテストです。「読む・聞く」ことだけに集中して学習していると、「インプットの自動化」には効果はあるかもしれませんが、「アウトプットの自動化」には全く効果がありません。TOEIC高得点でも話せない人が多い理由です。

英語を聞くとき(インプット)の脳内のプロセスと、英語を話すとき(アウトプット)の脳内のプロセスは全く異なることを既に説明しました。インプットの脳内のプロセスをいくら強化し、自動化したとしても、そのことがアウトプットの脳内プロセスの自動化にはつながらないということです。

ちなみに、TOEICの点数を効率的に上げたいのであれば、インプットのみに集中した勉強よりも、アウトプットを織り交ぜた勉強の方がよいということが脳科学(神経科学)研究で明らかにされています。

TOEICでは話せない理由と対策については「TOEIC高得点でも話せない!第二言語習得研究による理由と対策」に詳しく書きましたのでこちらも読んでみてください。

9. 「英語脳」を効率的に作る「トレーニング」とは?

腹筋する男性

英語をインプット(理解)する際の自動化すべき脳内プロセスと、アウトプット(表現)する際の自動化すべき脳内プロセスは全く異なるので、トレーニング方法も全く異なります。

The English Club では、インプットを自動化するためのトレーニングを「インプットの自動化トレーニング」、アウトプットを自動化するためのトレーニングを「アウトプットの自動化トレーニング」と呼んでいます。

「インプット」を自動化するためのトレーニング

インプットの自動化トレーニングは全部で17種類あります。下図では、それら17種類のトレーニング方法を、使用する体の場所(「目」「耳」「口」(および「手」)で分類してあります。人間の脳はいろいろな方向から情報(刺激)を与えてやると活性化しやすくなります。英語を効率的に習得したければこの4つをフル活用しましょう。

インプットの自動化トレーニング

17種類のインプットの自動化トレーニングの内、インプットの英語脳作りに適したトレーニングが下記の通り8つあります。

これら8つのトレーニングのやり方と効果については、「英語脳の作り方|8つの自動化トレーニングで英語回路を構築する」に詳細を書いているので、ここでは概略のみ説明します。

① スラッシュ・リーディング(Slash Reading)

スラッシュ・リーディングは、英文を前から理解できるようにするために、意味のかたまり毎にスラッシュ(/)を入れながら読む方法です。

② ディクテーション(Dictation)

ディクテーションは聴いた英語を書き取るトレーニングです。本来の目的は、リスニングの弱点を見つけることですが、英語脳を作る効果も高いトレーニングです。

なお、ディクテーションのやり方や効果についての詳細は「英語ディクテーション|リスニング力だけじゃない!4技能に効果あり」も参考にしてください。

③ ディクトグロス(Dicto-gloss)

ディクトグロスは、ディクテーションに似ているトレーニングです。違いは、書き取れた単語から推測して文全体を自分で組み立てるところです。

④ 音読(Reading aloud)

音読は声を出して読むトレーニングです。意味(内容)を理解しながら音読することで、戻り訳す癖から脱却し、英語脳を作っていくトレーニングです。

なお、音読のやり方や効果についての詳細は「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」も参考にしてください。

⑤ リピーティング(Repeating)

リピーティングは、聴いた英文をそのまま繰り返すトレーニングです(英文は見ない)。意味と発音を意識して行えば、英語脳を作り、発音を矯正することができます。

⑥ シャドーイング(Shadowing)

シャドーイングは、英文を聞きながら(英文は見ない)、1語くらい後を追っかけて自分でも発音していくトレーニングです。英語脳を強化するための仕上げのトレーニングです。

なお、シャドーイングのやり方や効果についての詳細は「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」も参考にしてください。

⑦ 多読(Extensive reading)

多読は、やさしい英文を多く読むことで英語脳を強化するトレーニングです。いちいち辞書を引かずに読み続けることで英語の総合力の強化にもつながります。

なお、多読のやり方や効果についての詳細は「英語多読の効果|第二言語習得研究も認めた効果とおすすめ多読法!」も参考にしてください。

⑧ 多聴(Extensive listening)

多聴とは英文を多く聴くことです。ただし、初めて聴いたときに最低でも80%程度以上理解できる素材を使用しないとあまり意味がないと言われています。

「アウトプット」を自動化するためのトレーニング

アウトプットの自動化トレーニングは全部で7種類あります。下図では、英語力別におすすめのトレーニングを分類しています。

ここでは、アウトプットの英語力で分類していますので、例えばTOEICで高得点を取っていても、アウトプットは全くできない場合は初級者レベルから始めることをお勧めします。

アウトプットの自動化トレーニング

これら7つのトレーニングのやり方と効果については、Amazonで販売している eBook『英会話の科学的上達法』に詳細を書いているので、ここでは概略のみ説明します。

ここで紹介するトレーニングは全て、頭の中で英語の文章を作るトレーニングです。英語を話すときは、頭の中で英語の文章を作り続けなければなりません。ですから、頭の中で文章を作れるようにならなければ英語は話せるようにはなりません。

頭の中で、自分の言いたいことを英語の文章にするというのは、英語で考えるということと同じことです。つまり、私たちは英語で考えられない限り、英語は話せないということなのです。話すことを出発点は頭で考えることなのですから。

① ディクトグロス(Dicto-gloss)

英文を聞き、書き取ります。書き取れなかったところは、理解した全体的な意味をもとに自分のことばで埋めながら英文を作り直すトレーニングです。

② コンバーティング(Converting)

日本語を、シンプルな単語と文法で、おおよそ同じ意味のシンプルで正確な英文で表現するトレーニングです。日本語を訳すことからの脱却を目指します。

③ リプロデュース(Reproduce)

英文を聞き、リピートします。リピートできない場合に、理解した全体的な意味をもとに自分のことばで英文を口頭で復元するトレーニングです。

④ リフレーズ(Rephrase)

英文を聞き、おおよそ同じ意味のシンプルで正確な英語に言い換えるトレーニングです。アウトプットの自動化トレーニングの中で一番重要なトレーニングです。

⑤ サマライズ(Summarize)

長めの英文の音源を最後まで通して聞き、自分のことばで要約するトレーニングです。シンプルで正確な英語を目指します。

⑥ リハーサル(Rehearsal)

実際に英語を使う前に、言うことを頭の中でリハーサルするプレ・リハーサルと、実際に英語を使ったあと、うまく言えなかったことを考えるポスト・リハーサルがあります。

⑦ ワンダリング(Wondering)

見たことや感じたことをシンプルで正確な英文で表現してみるトレーニングです。時間があるときにいつでもできるアウトプット・トレーニングです。

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無料eBookの主な内容

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  • インプット(読む・聞く)能力向上のための英語脳作りトレーニング法
  • アウトプット(話す・書く)能力向上のためのリハーサル・トレーニング法
  • 学習計画の立て方と効率性を上げるための学習習慣

そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。

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執筆者プロフィール
小柳 恒一
  • 1999年ロンドン大学大学院ロンドン・ビジネス・スクールにてMBA取得。1997年TOEFL630点取得。2003年TOEIC990点取得。2004年米国公認会計士試験合格。2010年4月中小企業診断士登録。
  • 2000年よりリーマン・ブラザーズ等にて13年以上M&Aのアドバイザリー業務に携わる。
  • 2010年より中堅・中小企業を対象とした事業継承M&Aコンサルティング事業を開始。
  • 2013年よりThe English Clubの前身となるEnglish Tutors Network事業を開始。
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