『DUO 3.0』を、英語と英語の学習方法を教えている立場から徹底検証することがこのコラムの目的だ。
The English Clubはこの教材を長年使用してきた。その積み重ねてきた経験と知識をもとに、本書の内容、使い方、効果についてできる限り客観的に、そして徹底的に検証したい。皆さまの英語学習の手助けになれば幸いだ。
『DUO 3.0』を含む人気の単語帳7種類・23冊を徹底検証したコラム「【英単語帳】社会人におすすめは?人気の23冊を徹底検証!」も参考にしてほしい。
目次
1. DUO 3.0|おすすめ度 by The English Club
「高い。そして掲載基準や例文に若干の不安はあるが、他を圧倒する単語掲載数を最小限の英文に収めている。中学基本語の次を効率的にマスターしたい方にチャレンジしてほしい単語集」
本書の記載されている「推奨学習法」に沿って学習しようとすると、本書、基礎用CD、復習用CD、ザ・カードを買いそろえなければならない。総額なんと!8,640円(税込)だ。あまりにも高すぎる。英語は単語を覚えるだけではない。他にも教材が必要になる。単語だけにこれだけの金額はかけられない。
The English Clubがお勧めする使い方では、復習用CDとザ・カードは必要ない。その場合は4,320円(税込)と半分に抑えられる(それでもまだ高い!)。
一方で、本書の内容は他の単語集を圧倒している。本書の総掲載語は7,866語であり、そのうち見出し語は2,569語だ。これだけの量を掲載している単語集は他にはないだろう。そして、見出し語の説明欄には日本語の訳語の他、派生語・類義語・反意語や、見出し語に関連する役に立つ情報も多く掲載されている。ただし、中学で習う最重要単語などは掲載されていない。加えて掲載基準が若干曖昧なのが気になる。
本書の「売り」は、2,569の見出し語を560の例文に収めたことだ。その最小限の数の例文により、効率的に単語を習得できるというのが本書の特徴だ。それらの例文には、不自然なものもあり、使う場面がないものも少なくないなどの欠点もある。しかしながら、効率的に単語を覚えるにはよい試みだ。また、本書を使用するのであれば基礎用CDが必須となる。その内容については、若干疑問が残る部分もあるが、まずまずの出来だ。その理由は後ほどご説明する。
細かい部分で改善の余地がある単語集だが、総合すると購入する価値のある単語集だといえるだろう。ビジネスパーソンや学生などの幅広い層に方達にお薦めできる。
なお、DUO3.0の姉妹版であるDUO selectについては「DUO select|英単語教材としての内容・やり方・効果を徹底検証」を参考にしてほしい。
2. DUO 3.0|本書の宣伝コピーと内容
「DUO 3.0」「DUO 3.0 CD基礎用」「DUO 3.0 CD復習用」「DUO 3.0 ザ・カード」の宣伝コピーと内容を、掲載されているまま、重要なところを抜粋してご紹介する。
2.1. 「DUO 3.0」の宣伝コピーと内容
現代英語の重要単語1600+熟語1000を重複なしで560本の基本例文に凝縮
DUOならわずか560英文で標準レベルの単語集1冊分の単語+熟語1冊分の熟語が完全にマスターできます。
DUO3.0の達成可能レベル:
・TOEIC:600~780点
・大学入試:偏差値58~65
・TOEFL:60~90点
・英検:準1級見出し英文 560本
見出し語 2569語
(単語 1572語)
(熟語 997語)
派生語・関連語 2214語
(単語 1515語)
(熟語 699語)
同意語・反意語 3083語
(単語 1938語)
(熟語 1145語)
総掲載語 7866語
(単語 5025語)
(熟語 2841語)掲載語の選定について:「当社独自のコーパス(英語圏で実際に発せられた英文のデータベース)の分析」「米英で出版される英英辞典や語学関連書籍からの情報収集」「米国の複数の大学教授や講師へのヒアリング調査」、そして「インターネット上での事例検証」など、これらの結果すべてを総合的に判断し、時代の変化に左右されない「本当の重要語」を選定しました。
選定の妥当性は、英語学習者向けの英英辞典の二大タイトル、LONGMAN Dictionary of Contemporary EnglishとOxford Advanced Learner’s Dictionaryで使用されている基本語彙とほぼ一致していることからも証明できます。
推奨学習法(本書掲載):
STEP 1:
① 560本の見出し英文を、それぞれの単語・熟語の意味をしっかり理解しながら和訳する
② 基礎用CDを利用して、「日本語↔︎英語」の変換が自然にできるようになるまでリスニングを続ける
③ 日本語での意味をイメージしながら英文の音読を繰り返す
*STEP1で覚えるべき内容をまとめたDUO3.0/ザ・カードを使うと、より効果的に学習できます。
STEP 2:
復習用CDを毎日2回ずつ聞くことを1ヶ月繰り返す
STEP 3:
STEP 2までを一通り終えて余裕が出てきたら、派生語・関連語などを少しづつ覚えていきましょう。
2.2. 「DUO 3.0 CD基礎用」の宣伝コピーと内容
音声副教材 鈴木陽一(著者)[アイシーピー]¥2,800+税
CD5枚
録音パターン:
見出し英文和訳
↓
見出し英文(スロー・スピード)
↓
各見出し語
↓
見出し英文(ナチュラル・スピード)英語が苦手な方でも、楽しく確実にマスターできる音声CDです。「見出し英文和訳→見出し英文→見出し語→最後にもう一度見出し英文」という丁寧な録音パターンを採用。また、ナレーションも、音声教材にありがちな単調なものではなく、文の内容に合わせてネイティヴが感情を込めて読んでいますので、飽きることなく学習が進みます。
語学の習得は、文字を読んで覚えるよりも、聞いて覚える方がはるかに簡単。DUO(テキスト)をセクションごとに学習していくなかで、このCDを何度も繰り返して聞いて、一つ一つのたんどや熟語の「実際の音」をしっかりマスターしていって下さい。
2.3. 「DUO 3.0 CD復習用」の宣伝コピーと内容
音声副教材 鈴木陽一(著者)[アイシーピー]¥1,200+税
CD1枚 + 小冊子
録音パターン: 見出し英文(ナチュラル・スピード)
見出し英文560本だけをナチュラル・スピードでポーズを開けずに読み上げます。トータル時間は約60分ですので、単純計算で1.4秒につき1語がチェックできる効率的なCDです。また、持ち運びに便利な手のひらサイズの見出し英文・和訳一覧小冊子が付録として付いています。
日々のセクションごとの学習に並行して、時間が空いている時は、進捗状況にかかわらずセクション1~45までをBGM気分で聞くように努めてください。通勤・通学時でも、60分あればできます。これを1ヶ月程度継続することによって、皆さんの聴覚が英語のリズムに慣れてきて、その語の学習がかなり楽になります。
2.4. 「DUO 3.0 ザ・カード」の宣伝コピーと内容
カード560枚、目隠しシート1枚、バンド付きカバー1組、リング2個
表面に見出し英文、裏面にその英文和訳と重要語句が機能的にまとまっているので、テンポよく効率的に学習が進みます。また、裏面の語句欄には、英文で使われている意味だけでなく、多義語などの重要な意味も厳選して掲載してありますので、本書を見なくても重要項目を漏らす心配はありません。さらに、親指1本でスライドできる付属の目隠しシートを使えば、見出し語のチェックも簡単です。
3. DUO 3.0|学習効果分析 by The English Club
「DUO 3.0」「DUO 3.0 CD基礎用」「DUO 3.0 CD復習用」「DUO 3.0 ザ・カード」の内容、使い方、効果について検証する。
3.1. 「DUO 3.0」の学習効果分析
単語・慣用句の圧倒的な掲載数や、役に立つ情報の量など、よいところが沢山ある単語集だ。しかし、だからこそ弱点が気になる。ここでは特にその「弱点」にフォーカスを当て、あえて辛めに分析したい。
3.1.1. 560本の見出し英文について
本書には「重複なしで組み合わせても、英文が不自然でぎこちなかったら意味がありません。DUO3.0のすべての見出し英文は、…暗記する価値のある英文です。」との記載があるが、不自然な英文も少なくない。暗記しても実際に使う場面がない英文も数多くある。
一つの例文に、学習する単語を多く詰め込んだ弊害がここにある。単語を効率的に覚えるために最小限の数の英文にまとめた努力は認める。しかし本来は、日常でよく使用されるナチュラルな表現を覚えつつ、英単語を覚えていくことが一番効率的な英単語の覚え方なのではないか。覚えても全く使うことがない英文を覚えることは苦痛だ。全くの無駄でもある。
また、英語学習者には文の構造(文法)を理解することが難しい例文が少なくない。単語を例文で覚える場合は、その文法構造を十分に理解すべきだが、それらについての説明はされていない。理解できないところは自分で調べる必要があるので学習者にとっては負担が増すことになる。
3.1.2. 掲載語について
「中学基本語の1000~1500語+中学基本語の範囲を超える語のうち日本語として定着して誰でも知っている語」は本書には掲載されていない。これらは最重要語なので、不安な方はこれらをおさらいしてから本書を使用した方がいい。
選定語について、「LONGMAN(約2000語)、Oxford(約3000語)の基本語から、中学基本語や文法用語を除いた語彙とほぼ一致しています。」とあるが、DUO selectにも全く同じ文言が記されている。DUO selectはDUO3.0から重要語を抜粋したバージョンだ。どちらかが虚偽の記載となる。
また、掲載単語の選定基準に「『当社独自』のコーパス」や「情報収集」「ヒアリング調査」「事例検証」という言葉が並んでいるが、どれも曖昧さが感じられるので選定語にはやや不安が残る。
なお、単語集を選ぶ際は、単語の掲載基準を確認することを強くお薦めする。英単語学習の効率性は、どの単語を覚えるかによって大きく変わるからだ。英語は、最重要語2,000語で約80%をカバーできる。しかし、2,001語目から8,000語目までの6,000語では10%程度しかカバーできないのだ。間違っても10,000語目の単語を一生懸命覚えるような無駄は避けたい。
なお、覚えるべき単語数についての詳細は「英語の単語数は2000語で80%!数より質で効率的に語彙力アップ」を参考にして欲しい。
3.1.3. 掲載内容について
見出し語は単語だけではなく、いわゆる「熟語」と言われる慣用句が多く含まれている。口語でよく使用されるものも、例文と共に掲載しているので、実際に使われている英語が学べる。
また、それぞれの見出し語の説明文には、同意語や反意語、派生語に加え、同じ意味を表す言い回しも豊富に掲載されている。説明文中の四角で囲まれたところには、見出し語に関連した知識の幅を広げるにはよい情報が提供されている。
発音記号に加えて、カタカナ表記の発音も初心者には役に立つ。
全体的な掲載内容については、他の単語集と比較して、かなり充実していると言っていいだろう。
3.1.4. 本書推奨学習法について
本書は、お薦め使用方法として「和訳」や「日本語↔︎英語の変換」を薦めている。残念ながらこの方法は、日本人の使えない英語の元凶である、中学・高校での「文法訳読方式」という英語学習法を踏襲したものだ。この方法で学習しても使える英語は身に付かないことは、第二言語習得研究で立証済みだ。
詳しくは「英語の勉強方法|社会人初心者向け第二言語習得研究基準の英語学習法」を参考にして頂きたい。
なお、The English Clubが推奨する本書の使い方は後ほどご紹介する。
3.2. 「DUO 3.0 CD基礎用」の学習効果分析
「見出し英文和訳」→「見出し英文(スロー)」→「見出し語」→「見出し英文(ナチュラル)」の順番で収録されているが、下記の点で疑問が残る。
- 最初の見出し英文和訳は必要なのか。
- 見出し語の日本語訳が収録されていない。
英文和訳を収録するのではなく、見出し語の代表的な訳語を一つ収録した方が効率的に覚えられるだろう。電車の中や歩いているときなど、テキストを見られない状況でもCDを聞いているだけで単語の意味が覚えられる。
ナレーターが感情を込めて読んでいるのはよい。本書に記載されているように、確かに飽きないかもしれない。
3.3. 「DUO 3.0 CD復習用」の学習効果分析
このCD復習用は買う必要はない。見出し英文(ナチュラル・スピード)が収録されているが、これはCD基礎用に収録されている。付属の小冊子には、見出し英文と日本語訳が記載されているだけだ。付加価値は全くないと言ってもよい。少なくても、CD基礎用に加えて、1,200円+税金を払ってまで購入する価値はない。
付属の小冊子には、アドバイスとして「進捗状況にかかわらずセクション1~45までをBGM気分で聞くように努めてください。」との記載がある。いわゆる「聞き流し」を推奨しているのだが、知らない単語が多く含まれた英語を、意味も理解せずに聞き流しても全く効果はない。科学的な根拠はないので注意した方がよい。
なお、聞き流しの効果についての詳細は「英語の聞き流し|効果と注意点を第二言語習得研究で明らかにしよう!」を参考にして頂きたい。
3.4. 「DUO 3.0 ザ・カード」の学習効果分析
このザ・カードも買う必要はない。本書に書いてあることのうち、筆者が重要だと思うところを抜粋してカードにしているだけだ。好みにもよるが、カードの方が効率的に学習できるとは思わない。本書に加えて、2,800円+税金を払ってまで購入する価値はない。
復習用CDもそうだが、商業(営利)主義に走りすぎているところが気になる。
4. DUO 3.0|おすすめ使い方 by The English Club
本書と別売りのCD基礎用を最大限に活用した学習方法をご紹介する。「CD復習用」と「ザ・カード」は使用しない。The English Clubで行なっている使い方だ。
上記の図のように、4つのステップからなるトレーニングだ。是非、順番に繰り返し行なってほしい。なお、スペルが覚えられない方は、上記のトレーニングの他に例文の「書き写し」も試してほしい。順番にやり方を説明する。
4.1. アイ・シャドーイング(Eye-shadowing)
本書を目で追いながらCD基礎用を聴く。意味と発音を意識することが重要だ。発音については、見出し語は、母音と子音、アクセントの位置に気をつけて聴くこと。例文は、それらに加えて、音声変化(連結・脱落・同化)、強弱(リズム)、イントネーションに気をつけて聴くこと。
なお、発音についてはそれぞれ下記のコラムも参考にして頂きたい。
母音と子音:「英語の発音記号|日本人が苦手な母音と子音を14のコツで矯正しよう」
アクセント:「英語のアクセント|英単語のアクセントは基礎と応用8のルールで完璧」
音声変化:「英語のリエゾン:ジョブズから学ぼう!単純ルールと簡単発音練習法」
強弱:「英語のリズム|意外に重要!4つの法則と効果的な練習で使える英語に」
イントネーション:「英語のイントネーション|基礎と応用15のルールとおすすめ学習法!」
4.2. 音読(Reading aloud)
例文と見出し語、見出し語の日本語訳(第一義)を大きな声を出して読もう。意味と発音を意識すること。例文は、音読しながら意味(内容)が頭にスーッと入ってくるようになるまで繰り返す。文の構造が理解できない場合は、文法書などで調べてなるべく完璧に理解しておくこと。
なお、音読のやり方と効果の詳細については「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」が参考になるはずだ。
4.3. オーバーラッピング(Overlapping)
CD基礎用を聴きながら、音声とぴったり合わせて音読する。スピードについていけるようになるまで何度も繰り返すこと。スピードに慣れてきたら、意味と発音を意識しながら再度繰り返すこと。
声を出せない場所であれば、「リップ・シンク(Lip sync)」(口パク)でもいい。オーバーラッピングの声を出さないバージョンだ。発音を確認するときにもこのリップ・シンクをやってみるといい。
4.4. (基礎用CD) シャドーイング(Shadowing)
仕上げのシャドーイングだ。本書を見ないで、CD基礎用を聴きながら、音声の1~2語後をまねて発音しながら影(shadow)のように追っかけていく。例文(遅め)、見出し語、例文(ナチュラル・スピード)全てをシャドーイングすること。
うまくできない場合は、一旦音読やオーバーラッピング(リップ・シンク)に戻ってから再度挑戦してみる。必ず、意味と発音を意識しながら行うこと。
なお、シャドーイングのやり方と効果の詳細については「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」も参考にしてほしい。
4.5. 〈おまけ〉書き写し(Transcribing)
どうしても意味が覚えられない場合や、スペルが覚えられない場合は例文の書き写しを試してみる。例文を、意味を意識しながら黙読し、目を離して「一文」を書き写す。途中で英文をチラチラと見ないこと。書き写した後は、スペルが間違っていないか、前置詞などが抜けていないか確認すること。
なお、英単語の覚え方についての詳細は、「英単語の覚え方|みんな実践中!8つの基本トレーニングと25のコツ」も参考にして頂きたい。
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