『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』を、英語と英語の学習方法を教えている立場から徹底検証することがこのコラムの目的だ。
The English Clubはこの教材を長年使用してきた。その積み重ねてきた経験と知識をもとに、本書の内容、使い方、効果についてできる限り客観的に、そして徹底的に検証したい。皆さまの英語学習の手助けになれば幸いだ。
『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』を含む人気の文法書7種類を徹底検証したコラム「英文法の参考書・問題集|おすすめ7種類の文法書を徹底検証!」も参考にしてほしい。
目次
1. 中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。|おすすめ度
「中学3年間で習う英文法を一から丁寧にわかりやすくまとめた良書。練習問題も多く、CDも付属しているので定着させて自分でも使えるようにできる。説明が若干くどい。」
本書は、中学生向けの「中1英語をひとつひとつわかりやすく。」「中2英語をひとつひとつわかりやすく。」「中3英語をひとつひとつわかりやすく。」の3冊を1冊にまとめたものだ。中学英語の学び直し用として、大人の皆さまにもお薦めできる英文法の超入門書だ。
超入門書といっても、あなどってはいけない。本書に書かれていることが全ての土台となる。土台をしっかりと作っておかないと、うわものは頼りないものになってしまう。そして、本書に書かれていることは、理解できるだけではダメだ。自分で自由に使えるようにする必要がある。
仕事で英語が必要な人も多いだろう。そのような皆さまは「自分の言いたいことを自由に表現できる英語表現力」が必要となる。そのための文法は、本書にある中学文法だけで十分なのだ。中学文法を自由に使いこなせることができれば(そして必要な単語を覚えれば)、自分の言いたいことは自由に言えるようになる。
本書はそれを達成するためのものだ。理解するための丁寧な説明と、それを定着させ、自分でも使えるようにするための練習問題と音源(CD)をフルに活用すれば達成できる。
一方で、大人向けとしては若干説明がくどいという欠点もある。中学生にとっては丁寧でわかりやすいかもしれないが、大人にとってはもっと簡潔に説明した方が良いところが少なくない。それは、中学生から大人まで、幅広い層をターゲットとしている弊害の一つだろう。
欠点もあるが、中学英語からやり直したいという方にはお薦めできる一冊だ。The English Clubの本書の総合評価は4.0/5.0だ。
2. 中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。|本書の宣伝コピーと内容
本書に記載されている宣伝コピーと本書の使い方、そして目次の一部をそのまま掲載する。
中学3年分の全文法を1冊で総復習できる|中学生向け参考書3冊の内容を、コンパクトサイズの1冊にまとめました。この1冊で、中学で学習するすべての文法項目を網羅しています。難しい用語を避けた解説で、超基礎からやさしく学べます。
学び直し用の追加情報も充実|高校生や大人の方のために練習問題を増やしました。さらに、この本の終了後に次の学習(高校の参考書など)にスムーズに移行できるよう、一般的な文法用語などを解説するコラムを新たに追加しました。
英文の読み方がわかるCDつき|練習問題のすべての英文が吹き込まれたCD(2枚)がついています。正しい読み方が確認できるだけでなく、音読練習を通じて「聞く・話す」力の基礎を養えます。
英語力の土台をつくる反復練習|書き込み式のやさしい練習問題をたくさん解くことで、英語で文を組み立てる力が自然に身につきます。1回分はたったの2ページなので、無理なく学習を進められます。
本書の使い方(本書掲載のもの):
1回分の学習は1見開き(2ページ)です。
・左ページ … 解説のページです。
・右ページ … 書き込み式の練習問題です。左ページで学習した内容を確認・定着します。単元の区切りのところに「復習テスト」があります。
付属のCD2枚には、「基本練習」と「復習テスト」のすべての英文の音声が収録されています。CDを使った「聞く・読む」練習は、英語の基礎力を伸ばす、非常に大切なトレーニングです。問題を解いて、答え合わせが終わったら、毎回必ずCDを聞くように心がけてください。
本書の付属CDの音声は、英語としてほぼ自然なスピードで読まれています(特別ゆっくりは読んでいません)ので、同時に音読するのは大変難しいことです。うまくできなくても気にせずに、発音や音の強弱(アクセント)、高低(イントネーション)などをできるだけまねて読めるように、何度もよく聞いて練習してみましょう。
CDのあとについて読む練習をしたいときは、再生を一時停止してください。
もくじ:
・主語と動詞(Lesson 1)
・be動詞(Lesson 2〜6)
・一般動詞(Lesson 7〜12)
・代名詞の基礎(Lesson 13〜14)
・修飾の基礎(Lesson 15〜17)
・否定文の基礎(Lesson 18〜21)
・疑問文の基礎(Lesson 22〜26)
・疑問詞(Lesson 27〜31)
・複数形(Lesson 32〜34)
・命令文(Lesson 35〜36)
・代名詞(目的格)(Lesson 37)
・現在進行形(Lesson 38〜41)
・過去形(Lesson 42〜50)
・過去進行形(Lesson 51〜52)
・未来の言い方(Lesson 53〜57)
・助動詞(Lesson 58〜63)
・have to 〜、must(Lesson 64〜66)
・不定詞(基礎)(Lesson 67〜70)
・動名詞(Lesson 71)
・接続詞(Lesson 72〜74)
・There is 〜. (Lesson 75〜77)
・SVC, SVOO, SVOC(Lesson 78〜81)
・比較(Lesson 82〜87)
・受け身(Lesson 88〜91)
・現在完了形(Lesson 92〜98)
・不定詞(発展)(Lesson 99〜103)
・後置修飾(Lesson 104〜107)
・関係代名詞(Lesson 108〜111)
・would like(Lesson 112〜113)
・間接疑問(Lesson 114)
3. 中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。|学習効果分析
The English Clubでは、目安としてTOEIC400点未満の方には、この文法教材を使用している。基礎の基礎から英文法をわかりやすく論理的に説明しているので、特に、理系の方で英語が苦手な方からの評判は良い。
なかには、本書は簡単すぎると指摘する方もいらっしゃるが、そのような方に限って「He don’t like coffee.」などと言ってしまうものなのだ。
3.1. 本書の文法範囲ついて
本書は中学3年間で学ぶ英文法を学び直すことが目的だ。したがって、仮定法や過去完了など、高校で学ぶものは当然含まれていない。しかし、それらを知らなくても自分の言いたいことは表現できる。まずは本書の文法を理解し、自分でも使えるようにすることが重要だ。
一方で、仮定法や過去完了など、より高度な文法を理解できないと、ネイティブの言うことがわからないこともある。それらは、本書の文法を自分でも使えるようにしてから(もしくは、使えるようにしつつ)、徐々に理解できるようにしていけば良い。そのような高度は文法については、自分で使えるようにする必要性は低い。
3.2. 本書の補足・発展説明について
全部で114あるLessonの説明に加えて、文法用語の説明や、より発展的な説明、会話でよく使われる言い方などが左ページの下の欄外に記載されている。そして、より詳しい説明がされている「基礎ができたら、もっとくわしく。」のページが全部で9ページある。全て是非読んで頂きたいものばかりだ。
余裕がある人は最初から読んで頂いても構わないが、かえって混乱する場合もあるので、そのような場合は最初は無視して構わない。一度全体を通してやってみてから、戻って読んでみて欲しい。理解が深まるはずだ。
脳科学(神経科学)を専門とする東京大学大学院神経生理学准教授の池谷氏は、「一般的にものを習得するときは、まずは大局を理解することが大切。始めは細部を気にせず、おおまかに理解する。細かいことは、その後で少しづつ覚えていった方がよい。」と指摘している。その方が結果的に早く学習習得できるのだ。
3.3. 本書に記載されている「本書の使い方」について
本書が薦める使い方をまとめると、説明を理解してから練習問題と復習問題で定着させ、CDを繰り返し聴き、まねることで発音を習得、そして繰り返し読むことで自分でも使えるようにしていくことを薦めている。非常に理にかなった学習方法だ。
3.4. 本書の学習効果について
本書が薦めている使い方を基本に学習すれば必ず高い効果が得られる。しかし、実際その通りに学習している方は少ないのではないだろうか。The English Clubで本書を使用して学習している方でも、特にCDを十分に活用している方はそれほど多くない。多くの方が、本書を読んで理解することで満足してしまうのだ。
本書の文法を理解することは、本書の目的の半分にも満たない。最終的な目的は、それらを自分でも自由に使えるようにすることだ。The English Clubでは、理解できる文法のことを「認識文法」、自分で使える文法を「運用文法」と呼んでいる。是非、本書を活用しながら運用文法に変換することを目標にして頂きたい。
以下では、本書の文法を認識文法にしてから、効率的に運用文法にしていくための本書の使い方をご紹介する。
4. 中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。|おすすめ使い方
本書で説明している英文法を理解することは難しいことではない。しかし、理解してから何をするかで、英語力の伸びが大きく変わってくるのだ。
ここでは、左ページで解説を読み理解し、右ページで確認の問題を解いたあとのトレーニング方法をご紹介する。知識を無意識的、自動的に使えるようにする「自動化トレーニング」だ。
上記のように、本書を活用した「自動化トレーニグ」は、全部で8種類のトレーニング法から構成される。それぞれ単独でも効果はあるが、この順番で行うことでより高い効果が期待できる。順番にやり方をご説明しよう。
4.1. アイ・シャドーイング(Eye shadowing)
CDの音声を聴きながら、本書の英文を目で追う。意味(内容)・文法・発音の3つを意識しながら聴くこと。ただし、人間の脳は3つのことを同時に意識することはできないので、それぞれ別々に意識しながら何度も繰り返しやろう。
英語の発音については色々と注意すべきことがある。しかし最初は難しく考える必要はない。音声とそっくりに発音できるように繰り返し練習して欲しい。慣れてきて、発音について詳細を知りたくなった場合は、下記の5つのコラムを参考にして欲しい。
母音と子音:「英語の発音記号|日本人が苦手な母音と子音を14のコツで矯正しよう」
アクセント:「英語のアクセント|基礎と応用の8つのルールで英単語の発音を極める」
リエゾン(音声変化):「英語のリエゾン|ジョブズから学ぼう!単純ルールと簡単発音練習法」
リズム(強弱):「英語のリズム|重要な理由と4つの法則を理解して使える英語を獲得!」
イントネーション:「英語のイントネーション|基礎と応用15のルールとおすすめ学習法!」
4.2. リピーティング – 開本(Repeating /book-open)
英文を目で追いながら音声を聴き、一旦音源を止めて自力で音読(英文を見ながら声を出して発音)してみる。意味(内容)・文法・発音の3つを意識しながら聴き、発音すること。最低でもそれぞれ1回ずつ、トータルで3回はやってみよう。
4.3. リップ・シンク(Lip sync)
英文を目で追いながら音声を聴き、音声に合わせて唇(lip)を同調(synchronize)させる。口パクだ。口の動かし方に注意しながら、スピードについていく。慣れてきたら、意味と文法も意識して何度か繰り返してみる。
4.4. オーバーラッピング(Overlapping)
英文を目で追いながら音声を聴き、音声にぴったりと合わせて音読する。スピードに遅れないように、音声とそっくりに発音できるように繰り返し練習すること。発音が曖昧なところがある場合や、うまくできない場合は、一旦リップ・シンクに戻ってから、再度オーバーラッピングに挑戦しよう。慣れてきたら、意味と文法も意識して何度か繰り返してみる。
4.5. 音読(Reading aloud)
自力で大きな声で英文を読む。音声は聞かない。英文を読みながら意味(内容)がスーッと頭に入ってくるようになるまで繰り返すこと。意味が入ってきたら、今度は発音を意識して何度か繰り返してみる。
なお、音読のやり方や効果の詳細については「英語の音読|正しいやり方で4技能に効果あり!7つのコツと教材選び」を参考にして欲しい。
4.6. ルックアップ&セイ(Look-up & say)
英文を黙読した(声を出さないで読んだ)後、顔を上げて(look-up)、英文を暗唱(say)する。必ず一文ずつ行うこと。途中でチラチラと英文を見ない。英文を暗記するのではなく、意味(内容)を理解しながら黙読した方が暗唱しやすくなる。暗唱できるようになったら、発音も意識して何度か繰り返そう。
なお、黙読ではなく、音声を流しながら英文を目で追ってから、顔を上げて暗唱しても良い。
4.7. リピーティング – 閉本(Repeating /book-closed)
音声を聞き、一旦音源を止めて暗唱する。一切英文は見ない。ルック・アップ&セイを繰り返し行なっていれば、それほど難しくないはずだ。難しい場合は、一旦ルック・アップ&セイに戻ってから再度挑戦して欲しい。意味・文法・発音を意識することは言うまでもない。
4.8. シャドーイング(Shadowing)
仕上げのシャドーイングだ。音声を聴きながら、1〜2語遅れて自分でも発音しながら追っかけてついていく。英文は見ない。「shadow」とは「後をつける」という意味だ。必ず意味を意識しながら行うことが重要だ。難しい場合は音読を何度か繰り返した後に再度挑戦しよう。意味を意識しながらできるようになったら、発音を意識して何度か繰り返そう。
なお、シャドーイングのやり方や効果の詳細については「英語のシャドーイング|4種類のやり方と効果&6のコツを徹底解説!」を参考にして欲しい。
4.9. 書き写し(Transcribing)
上記でご紹介した8つのトレーニングでは、目・耳・口の3つを使ったが、手は使っていない。手を使うトレーニングを加えることで、より知識が脳に定着しやすくなる。
英文1文を黙読もしくは音読し、目を離して文字に起こす。途中でチラチラと英文を見ないこと。英文を黙読もしくは音読する際は、丸暗記しようとはせずに、意味を理解することに意識を集中した方が文字に起こしやすくなる。また、黙読よりも音読した方が文字に起こしやすいだろう。
「自動化トレーニング」は全部で22種類ある。そのうちの9種類をご紹介したが、それ以外のトレーニングについても知りたい場合は、「英語トレーニング|4技能を独学で習得するための科学的自主トレ22選」を参考にして欲しい。
また、英文法の勉強方法についての詳細は「英文法勉強法|科学的トレーニング法8選と8つの基本的な注意点」も参考にして欲しい。
『英語独学完全マニュアル』
独学で効率的に習得する科学的学習法の全て(全79ページ)
英語は独学が基本です。しかし、「自分の学習方法が正しいかどうか…」不安に思っていませんか?本書は、英語の学習方法についてお悩みの皆さまに、第二言語習得研究と脳科学(神経科学)研究の知見に基づいた真に効率的な英語学習法をご紹介する解説書です。
無料eBookの主な内容
- 単語・文法・発音の効率的な基礎力強化方法
- インプット(読む・聞く)能力向上のための英語脳作りトレーニング法
- アウトプット(話す・書く)能力向上のためのリハーサル・トレーニング法
- 学習計画の立て方と効率性を上げるための学習習慣
そろそろ本気で英語を習得したいとお考えの方におすすめです。また、「英会話スクールに通っているけど思うように上達しない…」「TOEICで高得点を取ったけど話せない…」などでお悩みの皆さまも是非ご一読ください。